第2話 都市ビルドハイ
「必ず……救うよ、みんな」
Gランクと書かれたそのカードは、少しだけ輝いて見えた。
〜〜〜
朝になっても、焼け跡から目を離せなかった。
「もう行くんだな」
「ええ…やる事が山積みなので」
村長は奥の箱から貨幣を取り出す。
「少ないが貰ってくれ」
金貨1枚、銀貨40枚と銅貨50枚だ。
「銀貨十枚あれば一日食える」
「ありがとうございます…!」
「まずはここらで一番の都市【ビルドハイ】に向かい資金を整えたほうがいい、そこからの旅は自分で決めなさい」
そう言い地図をもらった、少し古く茶色くなった年季の入っている地図だ。
「何から何まで…」
「いいんだ!その代わり必ず帰ってこい!」
「はい!!」
故郷を離れる。まだ煙の残る村を背に。
必ずあの愛する故郷を取り戻すんだ。
〜〜〜〜〜
ビルドハイ周辺草原
サクチュンから始まり、冷たい深い森を抜け、数時間に渡り歩いている。
「かなり歩いたが、魔物は見かけてないな」
村の中では、戦闘能力は高い方だったがどれほど通用するかは分からない。
常に命を狙われている気がして緊張がフェイを包み込み解けない。
「あれは…!」
知らない人同士、山賊が細身の男に話しかけている。
その姿を見てフェイは、必死に走る。
死に物狂いで走る。
山賊の後ろにある手にナイフが隠されているからだ。
「金を出せ」
「持ってません……!」
ガタイの良き男が痺れを切らし始めている。
「まぁ、いい…」
ガタイの良い男が右手を動かす瞬間。
「早く逃げて!」
フェイが駆けつける。
「え?君は……」
鮮血が飛び散る。
と同時に細身の男がその場で倒れ込む。
「あぁ…!」
殺人鬼がこちらをゆっくり振り向く。
「おーい…おチビちゃん」
「子供が一人歩いているもんだからさ」
「心配で声をかけちゃた」
フェイはその場面に慄いている。
これは殺人現場だ、人が人を殺す、本来ならば大罪として十字架を背負う事となるが、ランカー同士なら模擬戦だと言えば許される。
こんな世界にフェイは足を踏み入れた。
「!!!」
ナイフがフェイを襲う。
「くっ……はっ!」
深々と横腹に刺さる。
(熱い!刺された箇所が燃えるよう熱い)
「ここらは山賊がちらほらいるぞ?親から教えられてないのか?」
どうして、あんな悲劇があってなお、こんな非情なことができるのだろうか?
一つの村が破滅したと言うのに、どうして人を陥れようとしているんだ?
「G級回復魔法【ヒール】!!」
緑色のオーラがフェイをつつむ。
「そのヒール……やけに質が高いな…」
みるみるうちに傷が塞がってゆく。
「何故、助け合えないんだ!」
山賊は不思議そうにフェイを見つめる。
「何を言ってんだ?」
「可哀想に、幻聴か…今すぐ楽にしてやる」
今も尚傷が癒えまでヒールを使っているため派手な動きは出来ない。
だが、山賊の男は油断をしている、子供だからとゆっくり歩いている。
そこで、フェイの治療が間に合い、ゆっくりと立ち上がる。
「お前はここで殺さないといけない人間だ」
いくら罪に問われないとしても道徳という物がある、山賊はここで潰さなければならない。
「G級能力【火属性】」
剣が炎で燃えたぎる。
「能力にしては、弱すぎるな…」
山賊はナイフを握る力を強くする。
次の瞬間二人が斬りかかる。
「………」
フェイの炎が辺りの草を燃やす。
焦げた山賊の首が飛ぶ。
「………僕が」
「僕が殺したのか……」
焦げ臭い匂いが鼻を刺激する。
あいつは山賊だ、僕はよいと行いをした、そう言い聞かせる。
しかし、手についた温かい鮮血は、全ての言い訳を覆すのに十分だった。
突然ランカー証が光り出す。
【F級ランカー撃破、スコアUP】と表示されている。
「これがランカー…か」
どれだけ正当性のある殺人だったとしても、人を殺したことには変わらない。
ランカーとは、想像を遥かに超える修羅の道なのかもしれない、そう思った出来事だった。
〜〜〜
手が震えている。
「まだ殺した時の感触が残っている…」
近くの川で血を必死に洗う。
「これも皆を救うためだ、弱音を吐いてる暇はない」
「先を急ごう」
〜〜〜
「あれか!?見えてきた」
遠目からでもその大都市が見えた。
「でっかい門だ…」
サクチュンでは見たことのないあまりにも規格外の城壁である。
よく見ると門の前に人が立っている。
「あの!ビルドハイに入りたいのですが」
番人は、こちらに近寄り話す。
「何か身分を証明できませんか?」
(身分………そうだ!)
「ランカー証で良いですか?」
そう言いランカー証を見せる。
「これはこれは…ランカーでしたか」
「お通りだ!!!」
掛け声とともに巨大な門が動き出す。
「どうぞお入りください」
門の奥には大勢の人がガヤガヤと騒いでいる。
「これが…ビルドハイ!」
フェイは気ままに歩き出す。
どうやらビルドハイは、中心にお城がありその周りに居住区が広がっている城下町らしい。
「あれは、商店が集まってる!」
より人が集まっているそこは、商店街のようだ、人混みをかき分け中に入る。
「わぁ〜!」
フェイは興奮していた初めて見る光景に気持ちが浮かれていた。
あまりの騒がしさにどこか安心のような心地良い気持ちのようなそんな感情が湧いていた。
この騒がしさがフェイの心の空枠を埋めていく。
ふと気づくと一箇所だけ人が避けて通っているのを見つける。
不自然に一箇所だけ円状にが空いている。
「何かあったのだろうか?」
興味本位で近づいてみる。
「誰か!誰か売ってくれませんか!」
その円の中心にはフェイより遥かに年下そうな少女が涙目で通りかかる人に話しかけている。
「すいません!売ってくれませんか!」
皆が無視する、その少女が存在していないかのように。
フェイにはその少女のことが見えている。
その少女を自分と重ねてしまった、あの悲劇の後、一人心細い中皆を探して回ったあの自分と………。
無意識に身体が勝手に動いていた。
「あの…売ってください…」
親身に話してくれるその少女は手に財布を握りしめていた。
「何を売って欲しいの?」
少女の声だけが、騒がしい商店街の中で妙に鮮明に響いた。
「【奇跡】を売ってください!」




