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突子の部屋

 全国大会が終わり、俺達はまた普通の学校生活に戻っていた。

 朝のホームルームで一番前の席に座ってる三つ編み女子が担任に質問した。

「先生。掲示板に指さし部ベスト8おめでとうと書いてあったんですが、指さし部って何ですか?そんなのうちの高校にあったんですか?」

 俺はドキッとした。

 担任の室田は宙を見つめ少し間をおいて「それは、あの電車とかの指さし確認を競うような部活だろうな」

「そんな部活があるんですか?」

「なんだよそれ?」教室から少し笑い声が聞こえて来る。

 室田は出席簿の下を机にコンコンしながら「まあ、そう聞いている」

 明らかに適当な嘘を言ったな。なんだ指さし部とは?乳首当て部だろ。俺は立ちあがり本当の事を言おうかと一瞬思ったが、部員達に迷惑がかかるかもしれないので止めた。これでいいのかもしれない。先生方も考えてこうした方がいいだろうと結論になったんだ。

 隣の指子を見ると、どうでも良さそうな感じで、欠伸を嚙み殺していた。

 指子は中学の時に散々嫌な目にあったから、そんな事でいちいち腹を立てたりはしないのだろう。

 退屈な午前の授業が終わり昼休みになる。今日は長寿番組、突子の部屋に乳狂治が出るという事で、部室に集まりスマホで一緒に見ようと後輩達と約束していた。

 部室に行くと二人がいた。

「部長。お疲れ様です」

「ついに始まるな突子の部屋。授業に集中できなかった」

「録画をして後から見たらいいだけなんじゃないですか?」

「俺はみんなで見たいんだ。指子は父親が出演してるのは恥ずかしいからパスと言っていた」

 スマホを出す。ワンセグだがしょうがない。

 突子の部屋のテーマ曲が流れ番組が始まる。

「今日のお客様は乳首当て競技という、ちょっと変わった競技のチャンピオンでいらっしゃる乳狂治さんが登場です。どうぞこちらにお入り下さい」

 ブラウンジャケット、チノパンの乳狂治が頭を下げながら颯爽と登場する。

「宜しくお願いいたします。初めまして突子さん」

「あっ、あの手に持ってるのは」

 乳狂治は自分の抱き枕を脇に抱えて、突子の部屋に持ち込んでいた。

「これ。突子さんにプレゼントです」

「まあー素敵、ありがとう。これあなたの写真が入ってる枕なんですか?」

「はい。僕の抱き枕、大好評なんですよ。突子さんもおひとつどうぞ」

 手渡され、興味無さそうに枕を一瞥すると、突子は直ぐに椅子の横に置いた。

 乳狂治のプロフィールを読み「私は長年番組やってますけど、こんなに乳首、乳首と連呼したことはございません」

 急に笑い出す突子。笑い出すと止まらない性質らしい。少し長めに鼻を鳴らせて笑っていた。

 笑顔を浮かべたまま顔が強張り、瞬きが多くなる乳狂治。

「あーおかしいわ。失礼しました」

「いえ」

 鼻をすする突子。涙が出る程おかしかったらしい。

「あなたは遠くからでも乳首を当てれるんですってね」

「はい」

「私の乳首を当ててくれませんか?」

「はい?」

 手のひらを前に出し、全力で嫌だというのを突子に伝える乳狂治。

「それはちょっと突子さん。女性には僕は出来ませんよ」

「乳首に当たったら私は必ず言いますから。私ズルなんか致しません」

 急に真顔になる突子。

「いや、そういうことではなく」

「絶対に言いますから」

 突子は少し怒っていた。

 椅子から立ち上がり「私はこの辺に立てば宜しいかしら」

 手前のカメラに近い広いスペースに立つ突子。

 腹を決めた乳狂治は、手をブルブルと振る。突子と3メートル程空ける。

 これだ。この手のブルブルするのが格好いいんで俺はいつも真似してるんだ。

「わあー。なんか緊張するわ」顔に手を当ててもじもじする突子。

「では。行きますよ突子さん。動かないで下さいね」

 乳首必中の構えをする乳狂治。

「それはなんのポーズなのかしら?」

「乳首必中の構えです」

「必中とは?乳首に必ず当たるってことなの?」

「はい。まあ、そんな感じです」

 また突子が笑い出した。前かがみになり腹を抱えて笑っている。

 俺は画面に文句を言った。

「おい、いい加減にしろよ突子。何がそんなにおかしいんだ?」

「いや。一般の人はこんなリアクションですよ部長」

「そうなのか?」

「あー。おかしい。失礼しました」

「いえ」

 ハンケチをポケットから出し鼻をかむ突子。

 二人は向かい合い、少し静寂の後、乳狂治は軽く必中の突きを出す。

「あらっ。今当たりましたよみなさん。乳首に当たりました。凄いわー」

 すごく興奮している突子。観覧席が少しざわめく。

 また座ってトークする。

「あなた。最近気になってることがあるんですってね」

「はい。僕は、突子さん。高校生の乳首当て大会が今熱いと思ってるんです」

「そうなんですか?」

「高校生乳首当て超人大戦がはじまると思ってワクワクしてるんですよ」

 眉間に皺が寄る突子。

「そうなの?」

「なんだそのネーミング。小学生か」

「部長。昼休み終わるっすよ」

「そうか。じゃあここまでにしよう。また放課後会おう後輩達よ」

「はい」



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