不幸続きの暗殺者
「おい、中間地点の村が見えてきたぞ! 命令通りに馬車を動かしたんだ! 殺さないでくれ!」
はて、俺たちを奴隷商人に売り飛ばそうとした馬車の御者を許すべきか。
チココのバカの援助が受けれない以上、もしもの時の後片付けをしてくれる奴がいないぞ。
道徳的には今すぐ殺してやるべきだが、孤児たちを巻き込むと可哀想だからな。
「俺は殺さない。ただ、然るべき罰を受けさせるだけだ」
「俺は奴隷商人の下で働いてたんだ! 死刑以外の判決がくだるわけないだろ!? 頼むから見逃してくれ!」
「贅沢言うな、お前が招いたことだ。それに、チココのバカの騎士団の法廷でなら助かるかもしれないぞ?」
「本当か!?」
「嘘をついてどうする? 馬車の替えなんていくらでも用意できるんだ。お前にチャンスを与える以外でこんなこと喋る必要あるか?」
後ろで聞いていたパールヴァティーは苦笑いしている。
カラメルに至っては趣味の悪い笑みを浮かべている。
「まあ、騎士団に付くまでに改心することだ。そうすれば、神様とやらが救ってくれるかもしれないぞ?」
崖から突き落とされながら神に祈る羽目になるんだから、今のうちに改心しておけよ?
人による“審判”が死刑でも、神による“神判”で逆転無罪なら助かるのがあそこでのルールだ。
……崖から突き落とされて生き残った奴は見たことないが。
村に近づいてくると、人だかりが出来ているのに気付いた。
それに武装した兵士たちまで混ざってる
俺たちを待ち構えているのか?
……それにしては武器を構えていないな。
「お待ちしておりました。シブースト様」
周りよりかは高そうな鎧を着た騎士が喋りかけてきた。
鎧に刻まれた紋章を見るに、ここを治めている子爵の長男様か。
「何が起きている? “歓迎しろ“なんて頼んだ覚えはないぞ」
「チココ様からおもてなしするように仰せつかっております。
どうか屋敷の方に足を運んでもらえませんか?」
「はぁ、俺が行ってやらないと怒られるんだろ?
まあ、本来泊まる予定の宿よりかはマシな食事が食べれるからいいだろう」
チココの騎士団から追放されたというのに、
なんでケツを拭くのを手伝わないといけないんだ。
あのバカは人に迷惑をかける技術だけはあるんだな。
追加で30分程度馬車で揺られると、立派なお屋敷についた。
子爵のくせに、チココの避暑地と同じぐらいの屋敷を持ってるなんてやけに羽振りがいいんだな。
「子爵の兵士共! 馬車に乗ってる荷物を部屋まで運んでおけ!」
俺が命令を与えてやると、兵士たちは目に見えて嫌そうな顔で荷物を運んでいく。
それなりの家出身の兵士たちが、孤児たちのボロボロの荷物をもたせられるんだ。
嫌な顔するのも当然といえば当然か。
「そんな汚いものは捨てておけ! 俺たちがもてなすのはシブーストだけ、孤児たちは対象外だ! ピュアヒーラーのクズに頭を下げないといけないだけでも悪夢なのに、汚い孤児たちの世話まで出来るか!!」
子爵の長男様が変なことを言い出した。
「荷物を捨ててみろ。同じ場所にお前らの指を切り落としてやる」
子爵の長男様が怒りの表情で剣を抜いた。
「お前みたいなピュアヒーラーのクズに頭を下げないといけない貴族の気持ちを考えたことがあるのか!? 我が物顔で道の中央を歩ける特権階級が、お前みたいな奴隷階級の非戦闘職に媚びへつらわなければならないんだ!! それも、奴隷以下の獣人族であるチココの命令で!」
「くだらないな、貴族の血筋とやらはそこまで絶対的なのか?俺は銃の腕前だけで騎士団ナンバー1にまで上り詰めたぞ?それも、騎士団長であるチココのバカに嫌われた上でな」
「これだから無学な奴隷は嫌いなんだ! 敬語も使えないクズが!」
「そりゃそうだろ? お前みたいな貴族共が非戦闘職に教育を受けさせないんだからな。俺が平民の子供レベルの読み書きができるようになったのは、騎士団に入ってから1年後だぞ? お前のような親の威を借りるだけのクズを敬って欲しいのなら、敬い方を教えるところから始めろ」
怒り狂った子爵の長男様が合図を送ると、周りの兵士たちが怯えながら武器を抜いた。
「お望み通り、たっぷりと教育をしてやる! ピュアヒーラーのクズ!」
なんでいつも変なやつに絡まれるんだ?
そのたびに、チココのバカに怒られる身にもなってくれよ。




