132 ジョーさんの様子
かなえは 砂浜から動物達の小屋へ歩いて来て、クイーンの小屋からリキさんの小屋までウオッシュを掛ける。
次に、牧草地やプロの実畑にウオッシュを掛け、スクーターで山の温泉までを飛んでいると、花畑を横切っている白い猫が見えた。
かなえは下に降りて行き、声をかける。
「こんにちは。白猫さん」
『おや、あんた。どうしたんだい?』
まだまだ元気そうなシニアの雌猫だ。
「今、山の温泉に行く途中であなたを見かけたので、降りて来たんです。何か不便な事はありませんか?」
『いや、特に無いね。それより今、山の温泉に行くって言ったのかい?』
「そうですよ。山の中に2か所と一番上にも温泉がありますよ」
『へぇーそうだたのかい。それは知らなかったね』
「もし、興味があれば1合目の温泉に案内しますけど」
『そうかい? あっちの温泉はいつも混んでいるし、子供達がうるさいだろう? あたしは静かにのんびりしたいんだよ』
「山の温泉には今の所、グレさんしか見かけていませんけど」
『えっ? グレのやつがいるのかい……』
「そこの温泉は小動物用にお湯の深さを変えましたので、入りやすいと思いますよ」
『うーん、そうかい。それならとりえず、連れて行ってもらおうかね』
かなえはスクーターをしまい、白猫を連れて1合目の温泉に移動して来る。
「こんにちは、グレさん」
かなえは温泉の休憩場で横になっているグレさんに声を掛ける。
『なんだ、シシーばあさんも一緒かー』
『なんだは余計だよ。グレ、あんたこんな良いところを独占してたのかい?』
『いいじゃないか。おれは偶然知ったし、シシーばあさんだって、見つけただろう』
『相変わらずいけ好かないね』
あらら……あんまり仲が良く無さそうね。
「シシーさんって、言うんですね。ここは静かですからのんびり出来ると思いますよ。わからない事はグレさんに聞いて下さい。外にプロに実もトイレも設置してありますからー」
かなえは全体にウオッシュ掛けると、さっさと上に移動して行く。
頂上まで移動した所でシロンに「かなえ、もうお昼を過ぎましたから、先に済ませたらいかがでしょう?」と、言われる。
あーあ、午前中に掃除を終わらせられなかった。
かなえはジャンプでジミーさんの庭に移動して行く。
「あっ、メラニーさん達も一緒だったんですか?」
ジミーさんの家の庭のテラスに、スミス夫妻とジミーさんが3人で座っていた。
「かなえ、あなたが来るのを待っていたのよ。今日は私が昨日の野菜でシチューを作ったから一緒に食べようと思って」
「わぁー、そうですかー! 嬉しいです」
メラニーさんの料理はどれも美味しいので、素直に嬉しい。
シチューの他にもデザートも持って来てくれたようだ。
かなえは他に4人分のサラダやパン、それに飲み物を出して、みんなで食べる事になった。
「美味しそうなシチューですねー。何が入っているんですか?」
「この黄色はかぼちゃのなのよ。その他に色々根野菜を入れたわー」
「それでは、いただきまーす」
みんなで食事を始める。
メラニーさんのシチューはトロトロで野菜が柔らかく、自然なカボチャの甘みとスパイスが絶妙で、とても美味しい。
始めはみんなで無口になって、料理に集中する。
「おいしいです。このシチュー売ったら人気が出そうですね」
「まぁー、そうかしら。始めはお菓子だけで行くけど、余裕が出て来たらそれも良いわね」
メラニーさんはやはり、お菓子だけでなく料理の腕前も凄いようだ。
その後はメラニーさん達の引っ越しの片づけが完全に終わった事や、ジミーさんの作っているカップの話。
そしてかなえが子牛に泳ぎを教えた話をする。
「はは、そうかい。子牛に泳ぎを教えるなんて、かなえさんにしかできないなぁー」と、ジョンさん。
そもそも、そんな事を誰もやろうとは思わないだろう……。
「それで、相談なんだけど」と、メラニーさん。
メラニーさんによると……来週から少しづつお菓子等を作ってドームシティーの温泉の売店で売る事にしたそうだが、リリちゃんに午後からだけでも手伝ってもらいたいそうだ。
「リリちゃんとララちゃんは、かなえの動物ギルドに所属しているんでしょ? だから迷ったんだけど、あの子は料理に興味があるようだし、一度かなえに聞いて見ようと思ったの」
食事が終わったので、メラニーさんが持って来てくれた、キャロットケーキでお茶にする。
「そうですか。私の方は問題ありません。リリちゃんの好きにして欲しいと思います」
でも、そうなると、午後からララちゃんをどうするか考えないとな……。
まだ、一人で温泉に働きには行かせられないし。
まぁー、それは後で考えよう。
「そう、それは良かったわ。明日にでもオクタゴンに行って、詳しい話を聞いて来ようと思うの」
メラニーさんは、どんどん話を勧めて行くんだな。
「あのー、材料の運搬や力仕事など、私に出来る事はいつでも言ってくださいね」
「ええ、ありがとう。いつもお世話になりっぱなしだけど、助かるわ」
リリちゃんの返事次第では、かなえもオクタゴンに一緒に行って、リリちゃんの仕事の変更届を出した方がいいのかもしれない……。
メラニーさんは、午後から温泉にいるリリちゃんの所へ行き、話をするそうだ。
もしダメなら、代わりの人を探さなければいけないので、早めに聞きたいらしい。
デザートも食べ終わると、ジョンさんはジミーさんの仕事場に寄って行くそうなので、メラニーさんだけ戻って行った。
かなえは、ジャンプで山の上の温泉に向かう。
マリー達は今は、森のドームに行っているのか誰も居ない。
かなえは丁寧にウオッシュを掛けて、シャワードームへ移動して行く。
えーっ!
シャワードームでは珍しく、4か所全部がフル回転している。
マリー達もここに居たんだ……。
足の治ったリキさんと、楽しそうに跳んでいる。
ジジさん達も久しぶりのシャワードームを満喫しているようだ。
キングス達はみんな揃ったので、嬉しそう。
ルークス達は全く気にして無さそうだが……。
かなえは休憩場を中心にウオッシュを掛け、砂浜に移動して行く。
かなえは砂浜の椅子に坐ると、
「シロン、今日やった方がいい事は何かある?」
「そろそろ食料を購入して来た方が良いでしょう。人数が増えましたから、多めに必要になります」
そうね……メラニーさんもお店の事で忙しくなるから、食事を準備した方がいいのかな。
なんだか眠くなって来た。
「シロン、30分だけ寝かせて」
「はい、わかりました」
かなえは砂浜に横になるとウトウトし始める。
何だかここに来ると、安心するのか眠くなるのよね……。
「かなえ、時間ですよ」
「うーん……リトくん? あっ! 違った」
かなえは起こされたので、リトくんかと思ってしまった。
でも、シロンの起こし方はリトくんと全く違って優しいけど……。
かなえは自分にウオッシュを掛けると、レストランにテイクアウトの注文に向かう。
何処もランチのピークが終わったからか、問題無く注文出来た。
総菜屋ではパエリア用フライパンを2つ返して、もう2つ頼むことにする。
まだジャングルフードなどの食事はポーチに入っているが、メラニーさん達にも食べてもらいたいし、リリララ姉妹が気に入っているので、多めに注文する。
イタ飯屋はジミーさんの好きそうなパスタや、リリララ姉妹向けの物、かなえの好きなバジル風味のパスタも注文する。
ラウンドカフェでは飲茶を中心に、硬焼きそば等も注文する。
まかない亭も、外せない。今日のランチを12人分注文しておく。
あとは、動物ギルドの前のテラスカフェのアボカドバーガーやチーズバーガーのセット、ピザに美
味しそうな惣菜にパンも数種類注文する。
そうだ、スープ屋にも行こう。
かなえはお店の前にジャンプすると、中に入って行く。
「こんにちはー」
「いらっしゃい」と、ダンさん。相変わらず威勢の良い声だ。
「やあ、かなえさんか」
「お久しぶりです。スープの注文に来ました」
かなえは前に注文した時の容器を出して、その中に入れてもらう。容器をリサイクルすると、割引になるそうだ。
かなえは順番にスープを注文して行く。人数が増えたので、いつもより多くなった。
「こんなに、沢山持って帰れるのか?」と、ダンさんが心配する。
「はい、大丈夫です。私、こう見えても力持ちなんですよ」と、いつものセリフを言っておく。
でも、今日は流石に多すぎるかな。
あんまり大量に買わない様に気を付けなきゃ。
かなえは支払いを先に済ませると、他の店へ出来上がった料理を受け取りに行く。
再び、スープ屋に戻って来て、出来上がった物をカバンからポーチのフォルダに移動させて行く。
「ダンさん、バニーちゃんは、元気に暮らしていますからね」
「そうか、ありがとう」と、ダンさん。
もう、バニーちゃんの事は興味が無いようなので、かなえはそのままお店を出る。
人によって動物に対する思いは違うのよねー。
かなえは気持ちを切り替え、次に出来る事を考える。
「そうだ、シロン。ジョーさんはどうしてる? お腹を空かせてない?」
「今は奥の作業場で家具を作っています。食事もお昼はまだですし疲労が溜まっているようです」
えーっ、もう、何やってんのかしら!
かなえは、ジャンプでジョーさんの店の前にやって来ると、先に今日購入したばかりのまかない亭のランチに、夜用にジャングルフードやパンなど、2食分を用意してお店の中に入って行く。
「こんにちはー、ジョーさん、かなえです!」
もう居ると分かっていると、より大きな声になってしまう。
「おお、待ってくれー」
奥からジョーさんの声がして来る。
しばらくすると、ゆっくりジョーさんが姿を現した。
あらー……ジョーさんは最初に会った時よりはずっとましだが、なかなかのやつれっぷりだ。
「ジョーさん、どうしてそんなにボロボロになっているんですか?」
「えっ? そうか?」
ジョーさんは、自覚が無いようで驚いている。
かなえはこっそりウオッシュを掛け、持って来た食事を渡す。
「はい、差し入れです。どっちも出来立てですけど、まかない亭の方から食べた方がいいですよ」
ジャングルフードの方は、バナナの皮に包まれていて、小分けになっているので、時間を置いても食べやすい。
「ああ、そうだ……昼を食っていなかったな」
「食事を忘れる程大事な仕事があるんですか?」
「いや、そうじゃないんだが、気が付くと夜になっているんだ」
凄い集中力なんだな。
「誰か、見習いの人を雇う話しはどうなりました?」
「ああ、そう言えばそんな事言っていたな……」
ジョーさんは家具作り以外、自分から積極的に動かないんだな。
何かいい方法は無いかな……。
「そうだ! ジョーさん。私の知り合いでもう引退した人ですけど、ジョーさんに家具作りを教わりたいみたいなんです。凄くいい人なんですよ」
「えっ? うーん、でも面倒だなー」
「それなら、その人が来る時に食事を持って来てもらうのはどうでしょう? 奥さんがとっても料理上手なんです」
「えっ、食事かー……」
ジョーさん、ちょっと食事には惹かれたみたいだ。
本当は若者に、ジョーさんの技術を継承してもらうのが一番いいんだろうけど、その前にジョンさんの様な経験を積んだ大人に、ジョーさんを見守って欲しい。
……でもジョーさんもいい歳だから、見守られるって言うのも変かな。
「それなら、週2日ならいいぞ」
えっ? ジョーさんいいって言ったよね?
「会う前に決めていいんですか?」
「ああ、あんたの言う事だから大丈夫だろう」
「わかりました。ありがとうございます!」
かなえは嬉しくなり大きな声でお礼を言う。
シロンに用意してもらった疲労回復、神経痛緩和飴の包みを渡すと、ジャンプで砂浜に戻って来る。
「シロン、ジョンさんはどうしているかしら?」
「今は、家の隣の作業場にいます」
それなら今、報告に行こう。
かなえは、ジャンプでジョンさんに会いに行く事にした。




