113 牧場の温泉
かなえは、ジミーさんの家の庭に移動して来るが、まだお昼には時間があるのでジミーさんは居なかった。
ジミーさんの仕事場まで歩いて行くと、マリーが小屋の前で丸くなって眠っているのが見えた。
「ねぇー、マリーどうしたの? 今日はシャワードームには行かないの?」
マリーは顔を上げて、
『あ、かなえ……うーん、何かわかんないんだけどちょっと胸の辺りが苦しくって落ち着かないの』
えっ? それは大変。
「シロン、お願い」と、いつもの様にポーチを開けてみると、中にピンク色のハート形のグミが入っていた。
注意書きには「心のモヤモヤをスッキリさせるグミ。恋煩いの大型犬用」と、表示されている。
「エーッ!」と、かなえは思わず大きな声を上げてしまう。
『かなえ何よ。急に大声を出して驚くじゃない!』と、マリー。
「あっ、ごめん……何でもない」
ここで、思いつくまま話したらマリーは傷つくかも。
マリー自体はどうして胸の辺りが苦しいのか原因がわからないらしいから、慎重に話さないと……。
かなえは、ピンクのハート形のグミをマリーに食べさせると、
『あー、何だかスッキリして来たわー。ありがとう』と、マリーは調子が戻ったようで、空中階段で走って行った。
うーん、でも今のグミは一時的な物だからなー。
マリーがリキさんに会いたいのなら、何とかしてあげなきゃな。
かなえが考えていると、ジミーさんが仕事場から出て来て、
「声がしていたが誰かと話して居たのかい?」と、聞かれる。
「はい、実は……」と、かなえはジミーさんと一緒に庭に戻り、ランチの支度をしながらマリーの事を話す。
「取りあえず食べましょう」と、言ってテーブルに並べたのは、
プロの実とチーズたっぷりのトマトソースのかかったラザニアと、外がカリッとして中がしっとりしたバケット、5色の野菜スティックに、ひよこ豆のコロッケ。
それと、少し甘いものが欲しかったので、小さなチョコレートスフレ。
飲み物はかなえはマンゴアイスティー、ジミーさんはアイスモカだ。
「そうか、マリーも恋をする年になったんだな」と、ジミーさん。
マリーは恋をしたのが初めてで、自分の状態に戸惑っているのかも。
リキさんはマリーの事をどう思っているんだろう。
「出来ればリキさんと一緒に居させてあげたいですけどね……」
「そうだな。もしマリーが森のドームで暮らしたいと言うなら私は賛成するよ。それでマリーが幸せならな。だがリキはマリーの相手にはちょっと年を取り過ぎていないかね?」
そうよね。リキさんは足も良くなりまだ数年は元気だと思うが、このまま行けばマリーより数年先に光に帰って行くだろう……。
「しばらく様子をみて、マリーにどうしたいか聞いて見ます」
「そうだな、よろしく頼むよ」
ジミーさんはマリーの事を本当に大切に思っているんだな。
食事を終えると、かなえは牧場に行く前にもう一度、猫達の様子を見に行く。
まだみんな猫の温泉に居るのかな……?
かなえは側まで歩いて行くと、温泉に入っている猫は居ないようだが、休憩場に3匹と外に出て来た所のキャットタワーにも4匹よく眠っていた。
「シロン、猫達の体調はどう?」
「猫達は温泉に入る前よりも格段に良くなっています。もう一度温泉に入れば通常の状態に戻れるでしょう」
そうなんだ。良かった!
残りの3匹も小屋の中で寝ているのを確認すると、かなえは牧場に移動して来る。
さぁー、いよいよ牛達の温泉だ。
ジジさんババさんや、他の牛達が喜んでくれる温泉を造りたいな……。
かなえはスクーターに乗ると、牧場の奥の目星を付けていた場所の上空に移動して来る。
うーん、やっぱりこの辺が良さそうだな。
まず、もう少し空間を開けるため木や石を取り除く。
あっ、あそこに牛が……。
かなえは何頭か温泉予定地にいた牛を、ジャンプで少し離れた場所まで移動させる。
突然移動された牛達は辺りを見回している。
牛さんごめんなさい……説明して移動してもらうのは長くなりそうなので許して。
かなえは心の中で謝りながら作業を続ける。
温泉のフォルダを開けてと……かなえは温泉のリストを見ていると、昨日は無かったはずの「温泉牛用」を見つけた。
は? また女神さまね……ありがたいけどそんなに準備してくれなくても大丈夫なのに。
まぁーせっかく用意してもらったんだから、使わせてもらおう。
かなえは「温泉牛用、大」を選択すると地上に設置してみる。
へー、これは良いなぁー。
出て来た温泉は、ドームシティーの温泉の様に真っ白で床と壁、湯船が一体型になっている。
湯船の大きさも体の大きな牛達が、ゆったり入れそうなのが幾つも並んでいる。
かなえはそこから、トンネルシャワーを増やしたり、床に滑り止めを付けたりと、幾つか細かいところを付け加えて行く。
泡風呂と、美容効果のあるお風呂の数を増やし、灯りの具合も確認する。
温風シャワーから出てきたところにも、広く休憩場を作り汚れが一瞬で吸収されるトイレも設置する。
温泉内も自動浄化装置が付けてあるので、いつも清潔に保つことが出来る。
温泉はこんな感じでいいな。
次は温泉の周りに木を設置し、景観を壊さない様にする。
最後に温泉にインビジブルのドームで覆い温度を調節しておく。
あー、出来たー!
かなえは思いつく限りの事をして温泉を準備した。
でもどうだろう……。
ジジさんババさんに、見てもらおう。
かなえは雲の上の温泉にジジさん達を呼びに行くと、
あら? 誰もいない。
「シロン、ジジさん達は何処に行ったの?」
「シャワードームの方にいます」
え? さっきは眠くなるから行かないって言っていたけど……。
かなえはジャンプでシャワードームへ移動すると、ジジさん達とキングスが休憩場にいた。
「あら? キングス達も一緒にどうしたの?」
『ハハッ、ジジから温泉を見に行くと聞いてな』
『あたし達も連れて行ってくれない?』
エーッ、キングスとクイーンも牧場の温泉に興味があるんだ……。
『わしが、嬉しくてつい、キングスに話したんだよ。みんなで行ってもかまわないだろう?』と、ジジさん。
「はい……いいですよ」と話して居ると、いつもと違う様子に、モモちゃんとルークスがシャワードームから出て来た。
『どこ行くのー? モモちゃんも行きたい』
『ボクも行くー』と、また温泉見学の希望者が増えてしまった。
うーん、まぁーいいか。
「わかりました。それならみんなで行きましょう」
そうだ、それならマリーにも声を掛けてみよう。
かなえはシャワードームの中に居たマリーに聞くと、
『うーん、そうね。あたしも行ってみようかしら』と、マリー。
良かった……マリーも少しは気がまぎれるだろう。
「それでは出発しまーす」と、みんなを連れて牧場の温泉の入口にジャンプして行く。
「はい、お待たせしました。それではこの温泉を試したら、後で感想を聞かせてください」
かなえは入口まで誘導し、順番に入って行ってもらう。
かなえも水着に着替えると、自分にウオッシュを掛けジャンプで中に入って行く。
動物達はそれぞれに自分の気に入った所を見つけ、お湯に浸かり始める。
マリーはトンネルシャワーが相変わらず好きだし、ババさんは美容効果のあるお湯の真ん中を陣取っている。
モモちゃんとルークスは、キングスやジジさんと一緒に最初から泡風呂の中だ。
『わぁー、ボコボコ―』
『キャー。アワアワだあ―』と、普段温泉にはほとんど興味を示さないルークス達も知らない所だと、面白い様だ。
「ジジさん、この温泉はどう思いますか?」と、かなえは気になったので聞いて見ると、
『良いと思うぞ。これだけ広ければ、他の牛達もゆっくり温泉を楽しめるだろう』
やったー、ジジさんは気に入ったみたい。
ババさんも『そうそう、このお湯よー。これならみんなも満足してくれるわー』と、嬉しそうだ。
「では、私がこれから牛達を連れて来ますので、みんなで温泉の説明をしてあげて下さいね」
かなえはそう頼むと、ジャンプで外に出て、スクーターで、牛達を呼びに行く。
せっかくだから、温泉に詳しいみんながいる今、牛達に来てもらった方が良い。
かなえは、上空から牛を見つけると下に降りて行き、温泉が出来た事と大体の場所を教え、ジジさんババさんが待っている事を伝える。
かなえの説明で興味を持つ牛もいるが、全く受け付けない牛達もいた。
まぁー、最初はしょうがない。
でも、毛並みや体調が良くなると言うと、温泉に向かう牛が増えて行った。
あまりいっぺんに来られると大変だから、これくらいでいいな。
あとは口コミで広がって行けばいい。
かなえは温泉の入口にジャンプし、興味を持った牛達がやって来るのを待っていた。
一番最初に来たのは、近い距離の所にいた茶色い牝牛。
『こんなところに、あんたが言った物があるのかい?』と、牝牛。
「はい、周りは木を植えて良くわかりませんが、中に動物達が先に入って待っていますので、わからない事は教えてくれます。ここかが入口ですよー」
牝牛は、入口のトンネルシャワーに戸惑う事無く中に入って行く。
かなえは後から近づいて来る牛達に、同じように説明する。
たまに中の様子を見に行くと、みんなはちゃんと牛達に温泉の入り方を教えているようだ。
モモちゃんとルークスは牛に何か話している。
マリーは積極的に歩いて回り説明しているようだ。
やはり、牝牛はババさんと同じ美容効果のある湯に集まっている。
そして、牡牛達にはジジさん達のいる泡風呂が人気の様だ。
まだ広さに余裕があるので、次の牛を呼びに行き入口で説明し中に入って行ってもらう。
それを繰り返し、ジジさん達が疲れて来たようなのでこれでお終いにする。
かなえはジジさんの所へ行き話しかける。
「そろそろキングス達はアニマルドームに連れて帰りますが、ジジさん達はどうしますか?」
『そうだな。わしもそろそろ出るが、自分で帰れるから送ってもらう必要は無いな』と、ジジさん。
かなえはアニマルドームの動物達に、外に出て来てもらうと一緒に砂浜にジャンプして行く。
「今日はありがとうございます。みんなに来てもらって助かりました」
実際あの数の牛達の説明を、ジジさんババさんだけに頼むのは大変だっただろう。
『ハハッ、いいさ。わし達も最初の頃はああやって驚いていたんだな』
『そうね、今では当然になってるけど』
『みんな喜んでたから良かったんじゃない?』
『ぼく、一緒に泡風呂で遊んだよー』
『モモちゃんも遊んだー』と、みんなも楽しんだようだ。
みんなはこの砂浜で解散で良いそうなので、かなえは猫達の様子を見に行く。
猫達は温泉の休憩場や外のキャットタワーで、休んでいた。
「シロン、猫達は大丈夫?」
「はい、何も問題ありません」
そう、良かった。
かなえは暫らく温泉の中の様子を眺めていると、小屋の方から黒猫のクーちゃんが歩いて来た。
「クーちゃん。調子はどう?」
『ああ、調子はいいいよ。ここ最近で今日が一番いいみたいだ』
「そう、良かった。多分他の猫達も明日には、もっと回復するはずよ」
『そうかい、それは助かるよ』
かなえは次に子猫達とバニーちゃんのところへやって来ると、ここでもみんなキャットタワーの上で良く眠っている。
みんなの寝顔を眺めていると、幸せそうな表情をしている。
きょうも1日タップリ遊んだんだろう。
かなえは歩いてジミーさんの庭まで来ると、みんな揃ってテラスの椅子に坐っていた。
「あー、お待たせしましたー」
「ご苦労様、温泉は出来たのかい?」と、ジミーさん。
かなえは夕食の準備をしながら、牧場の温泉の話をする。
今日の夕食は、ジャングルフードのセットだ。ここの料理はリリララ姉妹のお気に入りだ。
中にはココナッツカレー、ピーナッツカレー、ライスにナン。グリル野菜などがキレイにバナナの皮に包まれている。
小さなゼリーも付いているが、それに加えて良く熟れたメロンもデザートにする。
飲物はミルクオレンジアイスティー、ジミーさんにはミルクアイスコーヒーだ。
「……というわけで、ここに住んで居るマリーや他の動物達も連れて行き、牛達に温泉の説明をしてもらったんです」
「そうかい、マリーは役に立っているようで良かったよ」
「動物達が説明してくれたら、初めてでも安心して温泉に入れますね」と、リリちゃん。
その後はララちゃんのお絵描き教室の話や、リリちゃんの料理教室での話が話題に出て、ジミーさんも今日はどんなものを作ったか話してくれる。
食べ終わると、みんなと別れてかなえは家に戻って来る。
お風呂にも入り、寝る支度をすませると、ベットに入る。
はー、今日も無事に終わったなー。
猫達も体調が良くなって来たようだし、牧場の温泉も牛達に受け入れてもらえそうだ。
子猫達も、バニーちゃんも元気だし。
マリーの事は気になるけど……もう少し様子を見よう。
かなえは灯りを消して目を閉じた。
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ポイント
プラス 2万 牧場の温泉設置
1000マリーの恋煩い用グミ
マイナス
残り 219万7400
パワー 498
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予定 ミルクドーム、温泉設置 完了
動物達を連れてお出掛け
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給料30日目 牧場の従業員見習い 15万
動物ギルド長 20万ー6万(リリララ姉妹の残業代)=14万
アニマルドーム管理人 30万




