112 猫達の様子
『カナ、カナ、パンですよー。おきて―』
「うーん……」
『カナ、カナ、パンちょーだい、おはよー!』
「ああー……もう朝か。おはようリトくん」
かなえはゆっくり起き上がると、ベットから出て居間まで歩いて行く。
かなえはリトくんが選んだ、ブルーベリーが練り込まれた紫色のパンをちぎってあげると、
『おいしいな! ムラサキパン。パン、パン、パン』と、リトくんは羽を広げて踊りながらきれいな声で歌う。
「そう、良かったね」
かなえは、飛んで行くリトくんを見送ると、出る支度をして牧場に移動して行く。
「おはようございます!」と、いつもの様に丘の上でかなえを待っていたジジさんとババさんに挨拶をする。
『ああ、おはよう……』
『おはよう……』
2頭の牛は今日も何かを言いたそうにかなえを見ている。
フフッ、もう報告しよう。
「ジジさん、ババさん、牧場に温泉を造る許可が出ましたよ!」と、かなえが言うと、
『おお! そうか、良かった、良かった』
『まぁー! やっとね。これで他の牛達の質問攻撃から逃れられるわ』
ジジさんとババさんはすごく嬉しそうだ。
かなえは2頭を連れて、アニマルドームの砂浜に移動して来る。
「あのー、牧場に温泉を造る時に何か希望はありますか?」
『うーん、そうだなぁー。わし達は身体がデカいから、なるべく広くしてもらえると助かるな』
『そうねー、特に毛並みの良くなる湯を増やして欲しいわ』
「牧場に温泉を設置したら呼びに行きますから、他の牛達に知らせる前に見てもらえますか?」
『ああ、もちろんだ』
『ええ、是非見せて欲しいわ』
良かった……ジジさんとババさんはもう温泉に詳しいから、他の牛達に説明してくれるだろう。
出来上がったら、メラニーさん達にも知らせなきゃな。
かなえはどんな温泉にしようかと考えながら、ジミーさんの家へ歩いて行く。
かなえが歩いて行くと、ちょうどリリララ姉妹が家から出て来た。
「かなえさん、おはようございます」
「おはようございますー」と、ララちゃんもちゃんと挨拶する。
3人でジミーさんの庭に行き、テラスに座っていたジミーさんに挨拶し、朝食の準備をする。
今朝のメニューは、16種類の雑穀入りベーグルのオープンサンド。中にレタス、トマト、プロの実ハム、チーズが乗っている。
それに野菜のたっぷりのコーンチャウダーにミックスフルーツヨーグルト。クランベリーアップルジュースと、ピーチティー、ジミーさんにはコーヒーだ。
かなえは食べながらみんなに今日の予定を尋ねると、ジミーさんは仕事場で色々作ってみるそう。
昨日の職人さん達とのミ―ティーングや、温泉の売店で売られている商品を見て来て、いいアイディアが浮かんだそうだ。
リリララ姉妹はいつもと同じで午前中はオクタゴンの教室に行き、午後からは温泉に行くそうだ。
ララちゃんはもう少ししたら上のクラスに行けるそう。
かなえはみんなに、今日牧場に温泉を設置する事を伝え、何か良いアイディアがないか聞いて見る。
「そうなんですかー、ドームシティーの温泉の動物達は最近では慣れて来て、問題無さそうですよ」とリリちゃん。
アイディアなんてそう簡単には浮かばないよね……と考えていると、
「ララねー、あの大きいジャンプするのが良いと思うよー」と、ララちゃん。
ああ、シャワードームの事か……でもさすがにあれを牧場に設置するのはどうだろう。
「それも考えてみるね。今日は取りあえず温泉を造ってみるよ」と、返答する。
こうやって相談に乗ってくれる人達がいるのはありがたいな……。
朝食を食べ終わると、かなえは子猫達とバニーちゃんの様子を見に行く。
フフ、今日も元気だなぁー。
子猫達はバニーちゃんを追いかけながら庭を走り回っている。
バニーちゃんの体形は見違えるようにスッキリして体力も出て来たようだ。
ここに来たばかりの頃のポッチャリした感じは無くなり、庭を飛び跳ねている。
毎日子猫達に鍛えられているからなぁー。
でも来週にはダンさんの所へ帰さなきゃいけないな。
運動不足にならないよう、たまにここに来れるように頼んでみよう。
かなえはドームの周辺や小屋にウオッシュを掛けると、猫達の様子を見に行く。
小屋の前まで来たが、今朝もクーちゃんはいない様だ。
中に入って行くと……えっ? 猫達がいない!
「シロン、みんなはどこに行ったの?」
「はい、猫の温泉にいますよ。何も問題のある猫はいません」
……へーっ、そうなんだ。
かなえは急いで猫の温泉に行くと、昨日まで小屋で眠ってばかりいた猫達が、温泉の中でくつろいでいるのが見えた。
クーちゃんは、周りの猫達の世話をしているようだ。
かなえは自分にウオッシュを掛け、タンクトップとショートパンツの水着に着替えると、温泉の休憩場にジャンプする。
「クーちゃん! どうしたの? 猫さん達が急に温泉に来てるから驚いたよー」
『あー、カナカナ。そうなんだよ。小屋の前で寝て居たら、あたしからいい匂いがするって騒ぎだしたから、ここに連れて来たんだよ』と、クーちゃん。
なるほどー、クーちゃんがみんなを、温泉まで連れて来てくれたんだ。
「そう、良かった。みんな気持ち良さそうね」
『最初は水に濡れるのを嫌がってギャーギャーうるさかったんだけど、今じゃこの通りさ』
シャワードームの前で不思議そうに見ている、あの若そうな茶トラの猫がいたのでかなえは話しかける。
「それはね、シャワードームって言うの。中でジャンプ出来て楽しいのよー」
『ふーん、ぼく入ってみる―』と、茶トラの猫が中に入って行く。
すると、一気にシャワードームの内側に全面からお湯が飛び出して来る。
『うわぁー、ギャー、アハッ、アハッ!』と、始めはお湯の勢いに驚いていたが、下の面が柔らかく、体が弾んで浮くのがわかると、面白くなって来たようだ。
近くに居た猫達が、シャワードームの側まで様子を見に来た。
『なんだい、これは。あんなに跳ねてるよ』
『ふーん、楽しそうだな』と、中々好評なようだ。
「これはシャワードームと言って、飛んだり跳ねたりしながら、体力筋力を付ける装置です。皆さんも回復して来たら試して見て下さい」
『へー、俺には無理って言うのか?』と、グレーの大柄な猫。
「いえ、そんな事は無いですが、今は温泉に入って体を休ませた方が良いと思ったんです」
『なんだ、あの若造に出来て俺に出来ないはずないじゃないか!』と、グレーの猫はシャワードームの中に入って行った。
『あーあ、グレが入っちゃたよ。あいつ負けず嫌いだから』と、黒猫のクーちゃんも様子を見ていたようだ。
あのグレーの猫はグレって言うのね……。
中に入って行ったグレは、シャワードームの中で跳んでいた茶トラの猫に負けじと跳び始める。
『ははー、どうだ。オレの方が高く跳んでいるだろ?』と、グレ。
『そんな事無いよー。僕だって凄いよー』と、茶トラの猫。
「あのー、このシャワードームは、飛ぶ高さを競う為のものでは無いので、自分のペースで跳んでくださいねー。疲れて来たら休む事も大切ですよー」と、伝える。
見物していた猫達は、シャワードームを見るのに飽きたのか、温泉に入ったり休憩場で横になったりし始めた。
茶トラとグレ以外はシニア猫が多いので、まだシャワードームに入る元気は無さそうだ。
かなえは温泉に入っている猫に近づき、それぞれの温泉の特徴を説明して行く。
泡風呂に入っている3匹の猫達には、
「皆さん、このお湯には疲労回復効果があるので、暫らく入っていると、体調が良くなると思いますよ」
『まぁー、そうなの。道理で少し体が楽になったような気がするわ』と、きれいな白黒の猫。
「シロン、マタタビの成分はまだ入っているの?」
「いいえ、もう猫達がお湯の気持ち良さを理解したようですので、取り除きました」
そう、良かった……。
猫達がお湯の中で、気持ち良さそうにしているのを見て安心したかなえは、元の服装に着替えてアニマルドームの小屋の掃除に行く。
クイーンの小屋からリキさんの小屋まで順番にウオッシュを掛ける。
リキさんの小屋は使用していないのでキレイだが、ついでなので掃除しておく。
次に牧草地にウオッシュをかけ、プロの実の木が多い場所にも念入りにウオッシュを掛ける。
それから山へ移動して行くと、1合目から頂上まできれいにして行く。
雲の上の温泉まで来ると、ジジさんとババさんが湯船に浸かっていた。
『おや、もう温泉が出来たのかい?』と、かなえを見てすぐに声を掛けるジジさん。
『まぁ! そうなの? 早かったわねー』と、ババさん。
「いいえ、違うんです。まだ牧場には行ってないんです。こことシャワードームの掃除を済ませてから、行きますから、もう暫らくお待ちください」
『おお、そうか。いいんだ。わしは年甲斐もなく焦ってしまった様だ』
『そうね。ちょっと待ち遠しくって』
「もう少しお待ちくださいねー、シャワードームにいてもらっても構いませんし」
『そう思ったんだけど、あそこで跳んでいたらすぐ眠くなっちゃうじゃない?』
『そうなんだ。それでは他の牛達より先に見れないからな』
フフッ、なんだか積極的だなぁー。
「わかりました。おそらく午後になると思いますが、温泉が出来たらすぐにお知らせに来ますね」
かなえはウオッシュを雲の上の温泉にも掛けるとシャワードームへ向かう。
シャワードームではルークス達と、キングス達が今日も元気に楽しそうに跳んでいた。
「あれ? マリーが居ないな」
山の温泉にも居なかったけど……。
「シロン、マリーは何処にいるの?」
「今はジミーさんの仕事場の横で眠っています」
ふーん……珍しいな。リキさんがいなくなって寂しいのかな。
後で、様子を見に行ってみよう。
かなえは牧場に移動すると、牛舎の中にウオッシュを掛けて行く。
牛舎が終わるとスクーターを取り出して牧場を回る。
牧場にウオッシュを掛けながら、かなえは再びどのような温泉にしようかと考える。
確かメラニーさんが、この牧場には68頭の牛達が暮らしているって言ってたな。
それに、これから増える可能性だってある。
やはり大きめに作っておいた方が良いな。
「かなえ、そろそろお昼になりますので先にランチにしたらいかがですか?」とシロン。
「そうね。ありがとう」
ジミーさんを待たせたら悪いから、先に食事を済ませよう。
かなえはジミーさんの庭に移動して行く。




