追跡14 安息
とりあえず、黒服帽子の男、黒井とかいうやつの脅威は去った。林こそ被害は多少あるが・・・一応みんなは無事である。屋敷に入ってやっと落ち着いたところだった。
「なんなのあいつら・・・いきなりすぎ・・・」
ジャージ姿の満月は言う。髪をおろしていた。風呂上がりといったところだ。
「あれほどの強さ、今まで戦ってきた人たちとはわけが違いますね。」
相変わらずスーツ姿の井手口さんは言う。
「・・・はあ・・・」
俺は頬杖をついて嘆息する。ちなみに普段着ですよ?黒と黒。
しばらくの沈黙・・・。の間にいろいろ考えていた。剣の特性ってなんなのさ・・・。
「・・・ねぇ・・・ねえったら・・・・・む・・・たっ!!!」
「痛っっった!?」
満月さんにチョップされました。そういや、チッ〇チョップってお菓子あった気がするんだけど、あれどこ行ったの?
「あ、あんたが私のこと無視するから・・・」
「わるい、で、なんだ?」
「武器のことなんだけど・・・変態くんの・・・」
「まだ根に持ってたのか・・・っていいや、俺も考えてたところ。」
「異一型剣・・・の特性ですか・・・私の見たところ、あなたの剣が軽くなったこと、防御が上がったといったところですが、まあ、あくまで憶測ですが。」
「そうそう・・・軽くなったからあんなに動けたし・・・黒井ってやつの蹴りを食らった時もすぐに体制立て直せたし・・・」
そこまでは明白だった・・・。だが、もうひとつの気になっていることがある。やつの背後に回った時に感じた力はなんだったのだろう・・・。それが、たった一つの型だったらシャレになんねえ・・・。いや、良いと思うけど・・・うん・・・いいや。
剣について、なんとなくわかることのできた一日だった。
そして翌日を迎える。
やっと、しっかり布団で寝ることができた気がする。なぜだろう・・・。そんなことはどうでもいいか。
気だるけに屋敷内を歩いていると、前のほうから井手口さんが歩いてくる。あれ・・・荷物?
「おはようございます、疲れは取れました?」
「んいや、筋肉痛・・・」
「情けないねー。」
「ぅお・・・」
寝起きの俺にそんなこと言いますか・・・。それもいきなり後ろから・・・。つか、満月も荷物持ってるんだけど・・・。
「え・・・なに、おまえら・・・どっか行くのか?」
「はい、任務でちょっと・・・、あと、黒井という男について、ガンズの居場所なども調べに行ってきますね。」
「お留守番よろしく~と言いたいけど、あんたにはいったん家に帰ってもらうから。」
「まてまて、行くんなら俺も連れてってくれ。道知らんし・・・」
「大丈夫ですよ。清吉さんが来てくれるそうですから。」
「そう・・・なら安心。寝よ。」
「「・・・」」
なぜ黙るんだ・・・いいでしょ。二度寝するとなぜか夢の見る確率上がるんだよな。そろそろ、良い夢の一つや二つ・・・。
布団に寝そべって楽な体勢をとる。
ここはどこだ・・・よくわからん。
「おにいちゃあ~ん、おにいちゃあ~ん。」
は!?あれ!?ひ、姫乃!? なんでここに・・・つか今日はやたらと甘えん坊だな・・・
「ねえおにいちゃん、姫乃ね、おにいちゃんのこと、その・・・だいすきだよ?」
うぐ・・・なんだこの衝動は・・・おさえろ、おさえるのだ、俺よ~
そうだ、こういうときは自分のことについて考えよう。名前がない。以上。終わってんじゃねえか。
「変態くん、私の、見たんでしょ・・・だったら」
うん、なんで満月さんがここにいるのかな?あと変態くんじゃないです。結果的にあれは事故で。
「この気持ち、もう抑えられない!」
「おにいちゃあん!!!」
なんか意味わからんうちに話が進んで・・・
二人の顔がだんだん近づき、触れたらとろけてしまいそうな薄いピンクの唇が――――
「ぼくや!!いい加減、起きんか!」
「・・・・あ・・・・ああ・・・あれ・・・・・おじさんか、久しぶりな顔だぁ。」
「とぼけとらんで、ほら、行くぞ。」
「おう~」
なんか、惜しいものを見損ねた気がする。夕方だったが、当然、井手口さんたちの姿がなかった。
寝起きはつらいね・・・体が重いっつーか。
このあと、おじさんの車に乗せられて、揺さぶられて、また寝てしまったことは言うまでもない。




