七機のメカ
見返した日記には、一ページだけ意味のわからない箇所がある。
__彼らがわしらの敵になる日がいずれ来る。その時は、"彼"を目覚めさせてほしい。
0.6.2.3
わしの家の地下に、"彼"は居る。__
「ルミナス?」
ルミナスと呼ばれた青いメカがいた部屋の明かりがつく。部屋のドアの方には白衣を着た眼鏡の女性が立っていた。
「ここで何をしているの?」
「おはようございます。アニー博士。アニー博士が研究所内を自由に散策していいと言うので驚異がいないか捜索をしていたところ、この紙束を発見しました。」
そう言ってルミナスは書物をアニーに差し出す。アニーはため息をついた。
「それは日記。その人のその日の日常を書き留める本よ。そして人の日記は読んじゃだめ。」
アニーは日記について話した。
「日記。情報をインプットしました。」
インストールしたような音を発するルミナスに、アニーは頭を抱える。彼女がカーネルの家から研究所に連れて来る道中も言わなかったら車の屋根に乗ろうとするし、休憩で寄ったコンビニでは店員メカを敵機と言って撃ちそうになるなど、世間に対して情弱な部分が目立っていた。
内心アニーはどこか不安を感じていると、ルミナスはじっと日記の裏側を見ていた。
「アニー博士。こちらのカーネルとはどなたなのでしょうか?」
ルミナスの質問に、アニーは少し複雑そうな顔になった。
「その日記の持ち主よ。そして、あなたを開発した科学者でもあるわ。」
「アニー博士。私の武装は今後の戦闘続行にあたり、不完全な部分があります。そのカーネル博士にお会いし、武装の追加を求めます。」
「・・・・それは叶わないわ。」
アニーはより気まずい顔になりながら話した
「カーネル博士は三年前に肺がんで亡くなったの。」
「亡くなったというのは?」
「もう、会えないって事よ。そして、彼がいないと解決できない事態になってるのも現状。」
「事態、というと?」
「移動しながら、話すわ。」
そう言ってアニーは部屋を出て歩き出す。ルミナスもその後をついていった。
「カーネル博士はメカに関する知識のスペシャリストだったの。だけどただメカを作るんじゃなくて、人間の思考を持ったメカを作り続けてたの。」
カーネルのプロフィールをルミナスに見せながらアニーは話していた。
「メカが人間の気持ちを理解して初めて世界平和に繋がるというのが、博士の理想としたメカの概念だった。」
「プロフィールデータによればAIが操縦していたバスの事故で二十歳の息子と十八歳の娘を亡くされていると記載されています。カーネル博士の理想の要因である可能性が高いかと。」 「合ってるわ。でも・・・」
研究所のメインフロアに来たアニーはリモコンのボタンを押す。すると正面側にあったスクリーンに映像が映し出された。映像の内容は町の各地で暴走行為をするメカ達の様子だった。
「博士が作り出したメカ達が、博士の理想とはかけ離れた存在に、突然変わり果てるなんて・・・」
メカ達の映像を見ながらアニーは暗い顔をする。隣でルミナスはモニターのメカ達をじっと見ていた。
「フリクションマン。ヘブンマン。フロスト。ウィッチ。ティラノマン。ヘドロマン。ムソウ。いずれもカーネル博士が開発したメカ達でしょうか?」
「ええ。皆この間までは人間と共に生きる、優しいメカ達だったのに、クーデターを起こすだなんて・・・」
モニターを下ろして、アニーはメカの画像をタッチする。場所の項目を押すも「Error」と表示された。
「場所さえ分かれば止めに行けるけど、何かの障害電波で不透明になっているのよ。行けたとしても、武力行使されたら・・・」
「特定しました。」
「え?」
アニーが諦めかけた声を出した時、ルミナスが機械的な言葉を発した。
「特定って、もしかして?」
「七機のメカ達の現在地を特定しました。透明化された情報を照らし合わせた結果、現在地を拠点に活動しています。」
「そこまで、分かったの?」
「アナライズ機能を正常化しました。被害件数は現在デルタハイウェイで増加中。危険度の高い敵機を優先し、フリクションマンの破壊任務を遂行します。」
その言葉と共にルミナスはレールガンで壁を木っ端微塵に破壊した。
「ルミナス!?」
ルミナスの突拍子な行動にアニーは驚いた声を上げてしまった。
「待ってルミナス!」
アニーが呼び止めるも、驚いているうちにルミナスは既に遠くへと飛び去っていた。
「博士・・・・本当に彼で大丈夫なのでしょうか?」




