1話 迷子?
紅葉が靡く今日この頃。僕は何もすることが無かった。
水浴びは嫌いだしご飯を食べる必要も無い。どうしてこんなにも暇なのか。
どれもあのクソヤロウのせいだ。この体の構造はおかしい。
食事は必要なし。寿命もない。アイツは馬鹿なのか?俺を元に今のヒトや類似した生き物を創造したらしいが…
仕方ない。で済まされては困る。そのせいで毎日が退屈だ。
いつもの景色。流石に飽きる。寒いとも感じない。僕は生きているのだろうか?
そんな疑問もクソヤロウを馬鹿にするように毎日のようにある。
そう考えながらあくびをすると遠くから音がした。
(ゴブリンは最近退治したはず)
足音が小さいためゴブリンかと思ったがそれにしては音が少なすぎる。
退屈凌ぎで足音のする方へ向かうと川の向こう岸に小さなヒトがいた。
〔**!******!?〕
目の前の小さなヒトは僕に向かって何かを叫んだ。
咄嗟に出た言葉だったのかヒトは即座に口を手で塞いだ。
(翻訳魔法使うの忘れてた)
ゴブリンだと思っていたこともありその言葉の意味を知ることが出来なくなった。
いないゴブリンに腹が立つ。
それにしてもこの森に小さなヒトとは珍しい。冒険者がたまに来ることはあるが一般人ましてや子供が来ることは無いのだ。
しかもこんな奥地に。よくゴブリンやオークに出会わなかったな。と関心しているとヒトが泣き出した。
ウワンウワンと泣き叫び顔が水でビシャビシャになっていた。普通のヒトの反応だ。
逆に言えば冷静になれる方がおかしい。子供一人、オオカミを目の前にして泣かない者はいるだろうか?
きっと大の大人でも自分より大きなオオカミをみて腰を抜かすはずだ。
(それにしてもよく泣くなこのヒト)
ヒトをジロジロ見ていると泣き声で聞こえにくいがまた足音がした。今度はゴブリンだろうか。足音が心なしか多い。
ヒト側だな。深緑の体、汚らしい口、気味の悪い声。見たくも聞きたくも嗅ぎたくも無いやつがヒトの真後ろにいる。
僕のことは見向きもせずヒトを狩ろうとしいた。
ムカつく。何故だかハッキリとはわからないが非常にムカつく。
そう感じたら話は早い。ゴブリン殺そう。
音もなく空中に緑の魔法陣が浮かび上がる。
(静かに死ねよ)
その瞬間ゴブリンたちの首が飛ぶ。緑の血液をヒトにかけながら死体が倒れた。
ヒトは何があったのかと後ろをそっと振り向く。そして泣かなくなり次は自分なのかと怯え始めた。
(ヒトを殺す必要性を感じないけどどうしたら良いんだろう)
ゴブリンとは違いヒトは何もしない。するとしてもテリトリーの外だから関係ない。
「ニゲナイデ」
思っていた以上に片言なってしまった。この頃はヒトと関わらなくなったからなのかもしれない。
少々恥ずかしいがオオカミが話しているという点では誇っても良いのかもしれない。
〔私をこ…殺さないの?〕と怯えながらにヒトは答えた。
子供の良いところは大人と違い摩訶不思議な現状を理解できるところだ。
このヒトだけかもしれないが…
「殺さない。何でここにいるの?」
最初からの疑問を投げかける。最初とは違い流暢に話合うことが出来た。
〔迷子なの。ヒグッ家に帰れなくなっちゃった。〕
殺されないことに安心したのかまた泣き始める。
迷子か。服装からしてどこかの良いところの家だろう。連れて行っても良い。が厄介なことに巻き込まれたくはない。
と葛藤していると〔ワンちゃんは良い子なの?〕と話しかけてきた。
ワンちゃん?こんな大きな犬がいてたまるか。俺は孤高のオオカミだぞ。まあ詳しくいうなら人狼だが。
「そう。良い子。」と返答をしておいた。
子供に詳しく言っても理解してくれないからな。
〔ワンちゃん何歳?〕
自分が迷子なのを忘れたのか楽しそうに質問をする。
これでは僕がこのヒトを助けようとしているように見えるではないか。
「…数えていない。でも君よりかはずっと上だよ。」
こんな質問に答えている場合ではない。現状をどうするか早く考えなくては。
〔ワンちゃんの家はどこにあるの?〕
!?。もしかして俺の住処に行かせろと言っているのか?
このヒト幼いながらにしっかりいている…。オオカミの住処に招けとは。
そんなヒトこの世にいるのかと驚いているとヒトが空を見上げた。
夕暮れ。空が真っ赤になっていた。早くしろということなのか。川を渡ろうとしている。
(仕方ない。退屈凌ぎ。退屈凌ぎ。)
そう言い訳しながら川を飛び越えヒトの前に座る。
「乗れ。行くぞ。」
ヒトは驚いた表情をしていたが先に言ったのはそっちだからな。
〔家を紹介してくれるの!?ありがとう!〕
初めの出来事は何だったのか問いたいくらいヒトは笑顔で抱きついてきた。
「揺れるからな。」
そう言っていつもの五倍くらい遅く歩く。
ヒトは脆いから丁寧に扱わなければならない。生き物界の常識だ。当然、丁寧に扱わないがな。ゴブリンやオーク以外は食うためにヒトを襲うのだから。
少し歩くと住処が見えてきた。住処は崖の洞穴。お気に入りの場所だ。中には何もない。必要ないからな。
ヒトを下ろし、良さそうな草を運ぶ。ヒトには申し訳ないが僕の唾液付きの布団だ。
まあ、無いよりはマシだろう。
〔ベタベタ!〕と言いながら笑う。
そこまで面白いか?と冷静な目で見ていると抱きついてきた。
〔フカフカ!〕と言いまた笑いだす。
そうだろう。凄いだろう。最高の毛だろう。と僕も自慢げになる。
仕様がない。今回は僕の毛を使い寝ることを許そう。
そう言いかけたが、言うまでもなくヒトは僕の毛を布団に寝始めた。
(このヒト、この森でも生き残れるような根性してるな…)
ヒトってこんなのだっけ?と感じながらいつもより遅めに寝始める。
あと数日は一緒に暮らすことも知らずに……
この世界について少し補足します。
まず、魔法の原理が違っていたりします。
詳細はこれからの話で少しづつ載せますが、おそらく他異世界と独立した新しい異世界と思っていただけたら幸いです。
そのため所々で矛盾が発生する可能性があります。できる限りないように努めますがその点についてはご理解のほどよろしくお願いします。




