第12話 中途半端に優秀な奴は、総じて性格がクソだ
2章ラストです!
「……何だよ……」
ヘリックが震える声で言う。
「何なんだよ、その態度は……!!」
怒鳴り声がギルドの一角に響き渡る。
「助けたの、どこの誰だよ!!あの状況から助けたの誰だよ!!僕だろ!!命懸けで!!お前ら2人のこと……助けたのは僕なんだ!!!それなのに…」
「それなのに!!なんだよ、その言い方は!!!」
その叫びに、周囲の冒険者が振り返る。だが、誰も口を挟もうとはしなかった。
だが、アロンは一切の表情を崩さなかった。
「頼んでないが?」
「……は?」
「俺は君に“助けて”って言ったか?言ってないよな……それにそもそもだ、あの状況を招いたのは、お前の不注意が原因だったよな」
ヘリックの顔が青ざめていく。
「言ったろ、最初に……“リンカの護衛”が君の役目だって…言ってなかったか?それ以外に何か頼んだ覚えないんだが?」
言葉は、平坦だった。
だが、その一つひとつがナイフのように突き刺さった。
ヘリックの拳が、震える。
言い返したい…でも言葉が見つからない。
ギルドの空気が静かになっていた。
正確には、喧噪はそのままなのに、自分たちの周囲だけが隔離されたような────そんな奇妙な静けさが、そこにあった。
『頼んでないけど。助けてくれなんて、一度も』
アロンのその言葉が、ヘリックの内側にあった何かを確実に壊した。
歯を噛み、拳を握り――抑えきれなかった。
「てめぇ……!」
叫ぶより先に、体が動いた。
ヘリックはアロンの肩を両手で掴み、そのまま力任せに揺さぶった。
「何なんだよ、お前……っ!!」
怒鳴りながらも、目には涙が滲んでいた。
────それでも、アロンの表情は変わらなかった。
まるで“ヘリックという存在”が、もう視界にはないかのような無関心。
それを見た瞬間、何かがぶつりと切れた。
「……もういい」
振りほどくように手を離し、一歩、距離を取る。
そして、声を震わせながら叫んだ。
「もう、いい!! お前みたいなクソ野郎が……“良い人かも”なんて思った俺が……バカだった!!!」
喉が潰れそうになるほどの声だった。
「モンスターにでも襲われて、勝手に死ねっ!!」
そのままヘリックは背を向け、ギルドを飛び出した。
後ろ姿は怒りと涙に揺れていたが────誰も追わなかった。
しばらくして、アロンが口を開く。
「見ろ、リンカ……中途半端に優秀な奴は、総じて性格がクソだ」
「そうだな。お前が言うと説得力が違う」
「おい」
アロンが眉をひくつかせて振り向くが、リンカはさらりと無視していた。
「まぁいい……骨折り損のくたびれもうけとはこのことだ。優秀な仲間など要らないと言うのに、つい、期待してしまった……」
ギルドの喧騒がまた、少しずつ戻ってくる。
「……すまんな、リンカ。こんなに目立っては、また2人での冒険になりそうだ」
「はあ……」
リンカはため息をひとつだけ吐き、心の中でぽつりと呟いた。
「(コイツを解雇したい)」
第13話は、明日24日の【 12時40分 】に投稿いたします。
次章は『第3章:自己解釈型天啓妄想症候群女が爆破されるまで』です!
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それでは、明日の更新でお会いしましょう。




