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自分が優秀すぎて怖い─── 有能な仲間は俺の輝きを霞ませる不純物なので、活躍したら、即解雇します  作者: 燕尾
第4章:暗い過去と強さは必ずしも比例しないと知るまで ~真相編~
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第100話 嫉妬の炎

ついに100話です!!




 自称SSSランクと名乗る男が、相棒の内に秘められた激しい独占欲に気づくことなく、完全に困惑している。


 そんな二人の、凄惨な戦場にはあまりにも不釣り合いな、お熱い痴話喧嘩を────



「…………」



 ミカは、完全にジト目────細く、冷ややかな眼差しで見つめていた。


 先ほどまで自らの中で涙ながらに組み立て、深く胸を打たれていたはずの「過酷な運命に抗い、お互いの傷を隠しながら背中を預け合って生きる孤高のバディー」という、あの壮大で切ないダークファンタジーの脳内補完はよりも、アロンに対するもどかしい思いが募っていく。


 これほど露骨に拗ねている女を目の前にして、なぜこの男はここまで何もアクションを起こさずに鈍感を貫いていられるのかと、そのあまりの気づかなさにドロリとした焦れったい苛立ちがフツフツと湧き上がっていた。


 眼前の男は隣の相棒がなぜ突然絶対零度の気配を放ち始めたのか、その地雷のあり処を理解していない。

 巨大な地雷を、何一つの悪びれもないトーンのまま、全力で真っ正面から何度も踏み抜いているのだ。



 だが、そのどこまでも徹底的なまでの無自覚さと、頑ななまでに自分のブレない日常の空気を崩さないマイペースな振る舞いを凝視しているうちに、ミカの胸の奥底にある感情のグラデーションは、奇妙な変転を見せ始めていた。



 ああ、そうか……これもまた、このアロンという男の、底知れない魅力の、大きな一つなのだろう。



 どんな過酷な絶望を背負っていようとも、決して他人に余計な邪念や気遣いを感じさせず、ただそこに自然体で佇んでいるだけで周囲の空気を自分たちの領域へと塗り替えてしまう、圧倒的なまでの強者の器。


 そんな二人のあまりにも噛み合わない理不尽な温度差のやり取りを見つめる彼女の冷ややかなジト目は、いつしか、まるで二人の甘やかな関係性を特等席で見守るかのような、どこか生温かく、そして優しく微笑ましい眼差しへと変わっていくのだった。



「お前もお前で、早く触れて発動させろ」



 リンカの放つその不機嫌な無言の圧力を、これ以上浴び続けたくはないアロンは、逃げるようにして、ミカに向かって右手を突き出した。



「え? いいんですか……リンカさん、めっちゃ睨んでくるんですけど」



 ミカは引きつった笑みをその顔に浮かべ、差し出されたアロンの右手と、その右手をいまにも細切れに斬り捨てそうな勢いで睨みつけている、リンカのその冷徹な視線を交互に見た。


 その光景を目の当たりにしたミカの本音としては、これ以上ないほどに、アロンの手には触れたくはないと思っていた。


 大義名分がどれほど眼前に揃っていようとも、今この瞬間、その無防備な右手にそっと触れてしまえば、その刹那、隣の女から容赦のない罵倒が嵐のように自分へ向かって飛んでくるのは、火を見るよりも明らかに決まりきっていた。


 底知れない女の独占欲を、他の誰でもない自分が土足で逆撫でするのだ。


 その一瞬の肌の接触がもたらすであろう、おぞましい嫉妬の事後処理の重圧を思えば、その指先をアロンの肌へと伸ばせるような代物では断じてなかった。



「構わないから早くしてよ、こいつのは発作……無視してもいいよ」

 


 どこかで聞いたことのある、あまりにも強烈なデジャヴのようなセリフ。


 その言葉は、これまで旅の途中でアロンが突拍子のない言動をするたびに、リンカが周囲に向かって『ため息混じりに流していた』、彼女にとってのお約束の決め台詞であった。



 二人のこれまでの関係性を象徴するようなその使い古されたはずの言葉の手順を、今度は全く逆の立場で、何一つ内容を変えずにアロンの側から叩きつけられたのだ。


 自らの大切な決め台詞をそのままそっくり横取りされたその瞬間、リンカはバっとアロンのほうへと真っ直ぐに向き直り、猛烈な抗議の視線を剥き出しにして送った。


 いつもは冷徹に澄み渡っているはずのその白い肌を、自らの十八番であるセリフを横取りされた恥ずかしさと憤りによってみるみる真っ赤に染め上げ、語気を荒らげる。



「それは私のセリフだ…勝手に奪うな」



 しかしアロンは、その相棒からの刺すような反論をまるで意に介した様子もなく真っ正面から完全に無視して、ただ面倒そうに、早くこの不条理な手順を終わらせろと促すだけだった。


 男のそのどこまでも徹底的なまでの危機感の欠如、臨戦態勢の処刑場であっても隣の絶対零度のオーラを『いつもの気まぐれ』として投げやりに流してしまうその不遜なマイペースぶり。



「は、はぁ……」



 ミカは、リンカの全身から放たれる刺すような視線から必死に目を逸らしながら、胃の底で意を決して、アロンのその無防備に差し出された右手に、そっと自らの掌を重ねた。


 生肌と生肌が直接触れ合う、ほんの僅かな肉体の境界線の接触。



 ────接触。



 刹那、ミカの瞳が怪しい魔力の色に染まり────


 アロンの魂の深淵へと、世界のすべてを拒絶するような濁流の真ん中へ、一気に深く引きずり込まれるようにして発動した。





第話は、【 17時10分 】に投稿いたします。


もしよろしければ、ページ下部より【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】をいただけますと、大変励みになります。


それでは、次の更新でお会いしましょう。

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