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自分が優秀すぎて怖い─── 有能な仲間は俺の輝きを霞ませる不純物なので、活躍したら、即解雇します  作者: 燕尾
第1章:有能な元仲間のテロリストが数秒で細切れにされるまで
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第1話 こんな街を救う必要があるのかい?

自称SSSランク冒険者アロンと、その相棒リンカ。

歪で、傲慢で、どこか決定的に欠落した二人の旅路。


まずはその「第一歩」をご覧ください。





 王都近郊の商業都市『ゼレウス』・冒険者ギルド ギルド長室



「────反ギルド派テロ組織共……『解放のアンチェイン』に襲撃に遭った。王国に献金予定だった『500億』が強奪され、局員も冒険者も皆殺し。さらにご丁寧に現場には、ギルド滅亡を謳う血文字も」



 そう言って提示した映像には銀行の石床に、デカデカと…




『ギルド滅亡へ!!冒険者に真の自由を…!!!』




 その横には、不遜に咲き誇る反ギルド組織『解放の枷』の紋章があった。



「……お前たちも虫唾が走らないか? こういう輩が」



 ルドベキアは不敵に笑いながら──しかしその瞳の奥に、この街の治安を預かる者としての絶対的な正義を宿らせて二人に問いかけた。



 ……が、その重苦しい問いかけに対する返答は、あまりに場違いな乾いた音だった。



「スリーカード」


「残念、私はフルハウスだ」



 二人はルドベキアのデスクのすぐ側で、呑気にポーカーに興じていた。

 街の存亡を揺るがす大事件の話など、最初から全く耳に入っていない様子だった。



 しかし、そんな二人の不遜極まる行動など、すでに骨の髄まで慣れているかの如く、ルドベキアは表情一つ変えずに話を続けた。



「────この組織は現在、4つの小規模の都市で犯行を行っていた……そして今回は自分たちの力を過信し、うちのギルドへと手を伸ばしたのだろうな……」


「おい……」



 ここで初めて──男の方、アロンが面倒そうに口を開いた。

 指先で弄んでいたカードをトントンと机に叩きつけながら、アロンはルドベキアを真っ直ぐに見据える。



「なぜ俺たちにそんな話をする……俺たちは冒険者だ。殺し屋ではない、冒険者だ。始末屋でもない、冒険者だ。依頼をこなし、ダンジョンを攻略する冒険者なんだ」


「そうだ……今週はフリーなんだぞ? 邪魔をするな……そしてお前、さりげなく置こうとしているがバレバレだ……ダウト」



 女の方──リンカもまた、アロンの手元の不審な動きを冷徹に見抜きながら、乗る気が全くないことを態度で示した。

 だが、ここで二人が素直にうなずくことなど万に一つもないだろうということは、ルドベキアには最初から分かっていたみたいだった。



「……まぁ、お前たちならそういうだろうとは思っていた。……しかしだ、これはただの強盗ではない。ギルドに対しての宣戦布告と言ってもよいものだ。それはつまり、お前たち冒険者にも喧嘩を売っているのと同義に近いと考えて差し支えない」


「じゃあ大々的にギルドから緊急依頼を出せばいいじゃないか?」


「話を聞くに奴らはかなりの手練れと聞く……冒険者の余計な被害はこちら側としてもだしたくない」



 アロンの至極真っ当(に見える)言い分は、ことごとくルドベキアの冷徹な正論によって跳ねのけられる。



「……どうだ? やる気になったか?」



 ルドベキアは腕を組み、探るような視線をアロンへと向けた。

 だが、アロンはトランプの山を整えながら、鼻で笑うように言葉を返す。



「……この都市の市民がやればいいじゃないか。なんだ? 自ら戦おうという意思の住民はいないのか?」



 アロンのその言葉に、ルドベキアは苦々しく口をつぐむしかなかった。


 このゼレウスは商業都市───

 その基盤のすべてを、数多くの商いによって賄っている街だ。集う冒険者たちに手練れは多いが、この街に生まれ育った住民は、冒険者を目指す者よりも商いを目指す者の方が圧倒的に多い。


 ゆえに、街のために自ら武器を取って戦おうなどという人は、極めて少なかった。なにせ、戦いは彼らにとって専門外の領域だからだ。



「冷たい市民達だな……こんな街を救う必要があるのかい? いっそのこと壊滅してしまえば? ……市長はSSSランク冒険者の俺が務めるぞ??」



 アロンは声を上げて笑いながら、大袈裟な身振り手振りで『市長』の真似事をし始めた。

 自分がこの街の頂点に君臨し、民衆を見下ろしているかのような、滑稽で傲慢なポーズ。

 そんなアロンの姿を、リンカはまたいつもの発作が始まった、という冷え切った目で見つめていた。



「そう固いこと言うな……金なら弾むぞ?」



 ルドベキアは話を戻すように、低い声で新たな条件を提示した。

 だが、アロンはその言葉を聞いた瞬間、真顔になってルドベキアを睨みつけた。



「お前はふざけているのか? 俺が金で動くタイプの冒険者だと思っているのか? あいにく、俺が優秀なおかげで金には困っていないのだ……なぁ、副リーダー」


「まぁ、そうだな。今日の夕食もフルコースだった」



 アロンの不機嫌そうな言葉に、リンカは淡々と同意の言葉を添える。

 二人の財力、そしてアロンの『優秀さ』の前には、ルドベキアが提示できる額の金など何の価値も持たないのは明白だった。



「そうか……なら仕方ないな」



 ルドベキアが諦めたように息を吐く。



「そうだ、仕方ないのだ……帰るぞ、副リーダー……明日は何をする?」


「スイーツ巡りでも悪くないぞ」



 アロンは椅子から立ち上がり、すでに背を向けてドアへと歩き始めていた。

 リンカもまた、何事もなかったかのようにトランプを仕舞い、明日の予定について平然と言葉を交わす。


 その、まさに背中を向けた瞬間だった。









































「このテロリスト共を一掃した奴は、大きな『名声』があるというのに────」



 ルドベキアがわざとらしく、しかし確実な狙い澄ました重みを持って、その言葉を呟いた。



「やろう」



「は?」



 ある特定の単語を聞いた瞬間、アロンは劇的な速度でピタリと立ち止まり、鋭く振り返ってルドベキアを見据えた。

 あまりの早業に、隣のリンカから一瞬だけ素の困惑が漏れる。



「俺の名声が上がるなら話は別だ……引き受けよう」



 その、あまりにも潔いまでの承諾の言葉に、ルドベキアは喉の奥で不敵に笑った。

 最初からこうなることは、すべて彼の計算通りだったみたいだった。



「そう言うと思ったぞ……ほら、ここが現在奴らのいる場所だ」



 ルドベキアはデスクの上に、1枚の書状を滑らせた。



「行くぞ、副リーダー……迷える住民たちが……今、この瞬間にも、震えて眠れていない……ふざけたテロリスト共を一掃せねば」



 アロンは、さっきまでこの街を見捨てようとしていたことなど完全に記憶から抹消したかのような、熱い正義の眼差しを浮かべて拳を握りしめた。

 その瞳は、己の名前が世界中に轟く未来の栄光だけを綺麗に映し出している。



「お前ほんとに現金な奴だな」





次回更新は本日18:10です!


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