地下遺跡の光る森
同日にもう1話投稿していますので、ご注意ください。
明日は2話連続投稿します。
18時更新予定ので、よければご確認ください。
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「グルォッ!」
シュウの鎌が影蝙蝠を切り裂く。
「キィィイ……」
影蝙蝠は断末魔の鳴き声をあげ息絶えた。
シュウ達は無事水晶の洞窟を抜け、別の鍾乳洞に辿り着いていた。
鍾乳洞に入ろうとしたシュウ達を再び影蝙蝠が襲って来たのだった。
今の影蝙蝠が最後の一匹である。
(ふぃー終わったかぁ)
今回はクムトに防御を任せた事と飛行出来た事、そして新たに使用した超音波で相手の出所を察知出来たせいか、容易く影蝙蝠を退ける事に成功していた。
(このスキル何気に使えんなぁ……)
何気に役に立ったのは超音波だった。何故か影に隠れていた影蝙蝠の存在も見つける事が出来たのだ。
何故出来たのかは最早ファンタジーだからとしか言いようがないだろう。詳しい説明をシュウに求めても本人も理解出来てはいまい。
そのまま一行は闇に包まれた鍾乳洞へと足を踏み込んだ。
灯りは水晶の塊と水晶のナイフだ。
(やっぱ取っといて正解だったな……)
先見の明があったとシュウは自画自賛していた。
鍾乳洞内に踏み込んだ一行を待ってあたのは広大な空間だった。
(ま…じかよ……)
シュウは思わず内心でため息をついた。と言うのも、水晶の洞窟から出た先は背後の壁しか見えない大広間の様な所だったからだ。
丁度少し前の鍾乳洞で見た竪穴を上がって来た様な感じだ。
シュウの五感でもハッキリと分からない程このエリアは広い。
(取り敢えずさっき覚えたスキル使ってみるか?)
「コォォォ……」
シュウは口から息を吐き出す。正確には息に混じった超音波を出しているのだ。
エコーロケーション――音の反響を利用して周囲の状況を知る方法である。
シュウは聴覚に集中する。そのまま少し待ってみるが何も変化は無かった。
(マジかよ……どんだけ広いんだよ)
エコーが返って来なかったのだからその広さは容易に推察が出来るだろう。
(なら次の策だ!)
シュウは徐に飛び上がると天井目指して飛んでいく。つららの様に鍾乳石が連なっている。
(天井は結構高いな。ん? あの辺りから鍾乳石が途切れはじめてないか?)
そのまま境目まで天井近くを飛び続ける。今までは岩っぽかった天井が徐々に土の天井に変わっていく。
(土? という事は地表が近いか? それとも単に地層が変化しただけか?)
推測は出来るも確信は得られない。
仮に地表に近づいても行動の指針が取れないのは痛い。
(いっそ天井に風咆哮でもぶちかますか?)
一瞬本当に放とうかと思った。流石に崩落の危険がある為取り止めたが、そう言った気持ちが沸き上がって来る位は本気で迷った。
取り敢えずこのまま空にいても仕方がない。下で待っているクムト達も心配だとシュウは地面へ向かって下降していく。
「どうでしたか?シュウさん?」
地面に降り立ったシュウにすかさずクムトが問いかけてくる。
シュウはゆっくりと狼頭を左右に振る。
「そうですか…」
少々残念そうにするも想定内だったのだろう。クムトが励ますように言う。
「まだ着いたばかりですし、その内何か見つかりますよ」
一行はゆっくりと進行を開始する。
だがここで新たな問題が発生した。
それは――
「兄ちゃん、腹へった」
――だった。
確かに地下で行動を始めてから早数時間経っているだろう。その間に取ったのは小川での水分補給だけだ。
その後戦闘もこなしたパルの腹は限界を迎えかけていたのだ。
とは言うものの食べる物は何も無い。
(あの時の鮪擬きが有れば……)
シュウが今更ながら嘆いたのも仕方あるまい。
取り敢えずの対処法として、少しでも体力の消耗を減らす為にも幼児達にはシュウの背に乗って貰った。
せめてもの救いは歩いている内に地面に勾配が出て来た事だろう。
今シュウに出来るのは、なるべく地表に近づくために高い所へと向かう事だけだった。
どのくらい歩いたのだろう。
シュウの背に乗るパルは既に喋る元気すら失っていた。アーチェも何も言わないが、顔には疲労が伺える。唯一シュウと共に歩いているクムトだけが表情を変えていない。
(クムト、お前どれだけ体力有るんだよ?)
何度そう問い掛けようと思った事か。
勿論問い質しても明確な答えが得られるとはシュウも思っていない。
ただそんな事を考える位、シュウも現状に耐えきれなくなっていた。歩く事以外に何か関係ない事でも考えてなければ耐えられない程、精神的に追い詰められていた。
(マジで何とかならんものかね?)
そう思ったのが切っ掛けだったのか、何かをシュウの感覚が捉えた。一瞬だったが水の匂いを嗅ぎ取ったのだ。
(マジで!? 思ってみるもんだな……)
シュウは一度止まると、目を閉じて全神経を嗅覚に集中させる。微かに一瞬だけ感じた水の匂いを明確なものにしたかったのだ。
「シュウさん?」
やはりクムトにも口には出さないがきついものがあったのだろう。その顔は何らかの変化を期待しての顔付きだった。
シュウの鼻がスンスンと動く。
(これだ!)
感じ取れたのは間違いなく水の甘い香り。
徐に目を開くとやったぞとばかりに優しくクムトの頭に手をのせる。
「オン!」
「……間違いないんですね?」
「オン!」
クムトの顔に満面の笑顔が浮かぶ。
「行きましょう! シュウさんっ!!」
突然のクムトの大声に幼児二人が何事かと顔を上げる。
「何だよ…クムトの兄ちゃん」
「……何かあったんですか?」
「うん。シュウさんが何か見つけたみたいなんだよ!」
喜びを顔だけで表現出来るくらいの笑みを浮かべるクムト。
「「……やったーーーっ!」」
言われた言葉を漸く脳が理解したのか幼児二人が歓声を上げる。
シュウは即座に歩脚を折り畳むとクムトに背中に乗るよう促す。
頷いて背に跨がるクムト。それを確認したシュウは歩脚を使いさっき迄とは桁違いの速度で移動を始めた。
その足取りは非常に軽いものだった。
少しして駆け足で進むシュウの進路の先には行く手を阻む様に天井まで届く壁が立ちはだかった。
壁はどうやら土で出来ている様で、何かの周りをクルリと覆う様に軽く湾曲している。
(フムフム。匂いはあっちか……)
どうやら水はこの土壁の向こうに在るらしい。
シュウは土壁に沿って移動していく。
突如シュウの視覚が遠くに微かな光を見てとった。
(明かり…だと?)
その光源に向かって駆け足で進むと、壁と壁の間に人工的に作られたと思われる門の様な穴が空いており、光はそこから漏れ出ている。
遠目から見るとまるで城を守る城壁の様にも見てとれる。
(何だこれは? どっかに城でも在るんかね?)
シュウは慎重に土壁に空いた門の様な穴に近づいていく。
門と思われる穴は三メートルはあり、近づくにつれその巨大さが分かってきた。
「うおーでけー」
「ふわぁ~」
幼児達が近づいて来る大きな建造物に驚嘆の声を上げる。
そのまま門の側に辿り着いたシュウはその視覚で門の中を伺う。
「何でしょうね此処は…」
クムトが不思議そうな感じで問いかける。
そこには通常ではあり得ない光景が広がっていた。
光に満ち溢れていたのだ。
太陽の光りも届かない闇の中にあって、その地域だけは異彩を放っていた。
土壁が周囲と完全に遮断しているのだろう。ある一方から見なければ光を見つける事すら出来ないだろう。
この隔離された空間はこの闇の中に存在するはずのない自然に溢れていた。
流れる小川は清涼の音色を奏で、大地からは青々とした木々が生え繁っている。
地面は赤っぽい土に変わり、そこはかとなく草が生え空間の中央にあたる森に向かって藪を作り出していた。
この空間に光が満ちているのはその森を彩る新緑の葉が光を放っているからだった。
(……光る森か)
それは絵画の一枚の様に幻想的な光景だった。
「スッゲースッゲー!」
「うわぁ~」
幼児達も興奮げにしている。
どうやら土壁はこの森を守るように周囲を囲っているのだろう。
元々人が住んでいたのかは定かではないが、人工的に土壁が作られている以上は何らかの人為的な役割があの森には有るのだろう。
(まるで未知の遺跡に迷い込んだような気になるな……)
そう考えるもシュウはこの風景に違和感を感じてもいた。
光があり、水があり、恐らく何らかの食物もあるだろう。
まるで此処で休んで行きなさいと言わんがばかりに、こちらにとってあまりにも都合がよすぎる風景にシュウは警戒を強める。
「シュウさん…」
クムトも何か感じていたのだろう。
シュウはそれに答えるように頷く。
(覚悟を決めるか……)
そしてゆっくりと門の中へと歩を進めた。
罠かもしれないという思いはあれど、既に行かないと言う選択肢は選べない。それだけ一行は肉体的にも精神的にもかなりの疲労困憊状態にあったのだ。
今出来ることは注意しつつ進むくらいしかなかった。焦って飛び込んでやはり罠でしたとなれば笑うに笑えない。
一先ず少し離れて周囲から森と言えるような木々の様子を伺う。
見た感じだと光っている以外は何の問題も見てとれない。ごく一般的な木々だ。中には見たことの無い果物が実っている木もある。
周囲の土や草も特に問題無さそうに見える。
シュウの五感も直感すら大丈夫だと告げている。
そこまで確認してシュウはゆっくりと草の中に踏み込み、そのまま水辺へと向かって歩いていくのだった。
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