空を飛んでみよう
第一話を加筆修正しました。よろしければご覧ください。
明日は2話連続投稿します。
18時更新予定ので、よければご確認ください。
もっと沢山の読者様に読んで頂きたいので、宜しければ★を押して評価をお願いします。
シュウは背からクムト達三人が地面に降り立ったのを確認するとゆっくりと立ち上がった。
周囲を用心するようにとクムトに視線を投げ掛けると、分かっていると言う様にコクリと頷き返してくる。すでに光の障壁は展開済みだ。
さて、今からやる事は何かと言うとシュウが飛べるかどうかの検証である。
羽が生えているので飛べるだろうとは思うのだが、いかんせんその羽は自身の体格に比べて明らかに小さいのだ。
現代の航空力学から考えれば絶対に飛べないサイズである。なにせ幼児の頭より少し大きい位なのだから。
だがここは魔導……スキルとやらが存在する異世界である。
今までだって化学では説明出来ない事が多々あったのだ。今更羽が小さいから飛べないとは全く考えられない。
兎にも角にもまずは挑戦あるのみとばかりに、シュウは背に付いている小さな羽に精神を集中させる。
羽根が小さくパタパタと動く。それを幼児が楽しそうに見ているのは別にいいだろう。
だが、当然のように身体は宙に浮かない。
(だよなぁ。やっぱ羽で飛ぶというより何らかの力で……ん? これってスキルなんじゃね? と言うか、今まで使って来た能力全部……)
ふと思い付く。
(でも……スキルは人間が神の恩恵でとかスムが言ってなかったっけ? まぁそれについては今はいいか……。今はスキルで飛ぶ方法を考えた方がよさげだな。今までの経験上、スキルはイメージ次第で何とか成りそうだし……)
そう考えたシュウは羽というより身体自体が浮くイメージを思い描いていく。
「おおっ!兄ちゃん浮いたぜ!」
パルが驚きの声を上げる。
(どうやら方法は間違ってないようだな……となると後はイメージを固めるのみ!)
シュウは背中の羽が空を飛べるほど大きな翼であるようにイメージする。そして徐にイメージの翼を羽ばたかせた。
「おおっ!兄ちゃんが飛んだ!!」
パルの声が下から聞こえてくる。
集中していた為か思わず閉じていた瞼を開けると、目に飛び込んできたのは今までとは違う景色。
(おぉーいい景色だなぁ……)
まるで飛行機の離陸時に窓の外を眺めているような感じだ。
地面から八メートル位は上昇している。シュウは翼を傾けるようにイメージし旋回してみる。思ったより感覚的に難しくない事を確認する。
(うん。これなら問題ないな。ちょっと小回りするイメージは上手く出来ないが旋回自体は問題ない)
漸く納得がいったのだろう。ゆっくりと三人の前に着地する。
「大丈夫そうですね」
どこか安堵したような顔でクムトが告げてくる。やはり心配だったのだろう。
もし飛ぶ事が出来ないなら上流の洞窟へはどう考えても行く事が出来なかったのだから。
安心しろと伝える様に優しくクムトの頭に手を乗せる。
幼児が楽しそうに笑い、クムトも嬉しそうに微笑んだ。
「グォッ!」
軽く吠えて注目を集めると、狼の腕を使って背に乗る様にアピールする。
ある者は楽し気に、ある者は心配そうに、ある者は慎重に、三者三様の反応を示す三人を背に乗せたシュウは、軽やかに空に舞い上がった。
「すっげえすげえぇ!」
「うわあ…」
幼児達が歓声を上げる。
シュウは一度ホバリングするようにその場に留まって、飛行状態を確認。不安定さも感じない為、徐々にその高度を上げていく。
(よし。問題無さそうだな)
高度を保ったままなるべく湖には近づかない様に慎重に滝の上の洞窟を目指して飛行する。
(やっぱそうなるよなぁ)
案の定というか湖から水の塊が飛んで来るのが視認出来た。
シュウが目を凝らして湖面を確認すると手の生えた魚の様な野獣が三匹おり、個々の口々から水弾を飛ばしている。
(たぶん湖に近付いていたら狙い打ちされてたんだろうなぁ)
そんな事を考えつつも、空中を旋回する事で水弾を器用にヒラリヒラリと躱わしながら更に上昇していく。
滝の半分の高さ……十メートル位に達すると水弾も届かなくなった。野獣もそれに気付いたのか水弾の打ち出しを止めたようだ。
そのまま洞窟へと向かって進んでいると、シュウは視界に滝の中を動いている影を捕らえた。影はかなりの早さで滝を登っていく。
(そう簡単には見逃してくれないか……)
このままの速度で進めば恐らく滝の上…洞窟の入り口辺りで接敵する事になりそうだと思ったシュウは、高度を上げながらも滝から更に距離をとる。
加速して振り切ろうとも思ったが、飛行に慣れていない現状では、背中に乗っている三人が上手く体勢をとり損ね落下する可能性があるだろう。
それに結局のところ影は滝を登って来ているので、もし洞窟内から敵が現れた場合、野獣の挟撃となる可能性もあるだろう。
色々と考慮した結果、洞窟とほぼ同程度の高度に達するとそのままホバリング状態に移行し滝の様子を伺う。
(来るか?)
予想通りに滝を登りきった三つの影が滝の中から姿を表した。
それは身体から子供の様な腕を生やした一メートル位の鮪の様な魚型の野獣で、背鰭は刃状で鋭く、胸鰭の代わりに一対の腕が生えている。
先程まで湖面から水弾を飛ばしていた野獣であった。
(ちょっと心配だが……飛び道具はこれしかないしなぁ)
空中で脚を踏ん張れるかは分からなかったが、シュウは洞窟近くにいる鮪擬きの野獣に向けて風咆哮を放った。
(よし!)
予想に反して踏ん張りは要らず、地面の上で放ったそれと同程度の風の砲弾が目標目掛けて飛んでいく。
収束して放たれた風咆哮は真空現象を起こし、狙い違わず三匹の鮪擬きをあっさりと斬り裂いた。赤い血糊を撒き散らせながら辺りに残骸が飛び散る。
(あっ、しまった!)
鮪擬きの死骸はそのまま滝の流れに乗って滝つぼへと落ちていった。
(折角の食料がぁー!)
どうやらシュウにとって、鮪擬きは食用と考えていたみたいだ。
野獣とは獣らしいので食べられる可能性があると思ったのだが、既にそれらは滝つぼの中へと姿を消して後だ。
鮪擬きとシュウに呼ばれた野獣は様々な意味でつくづく残念な野獣だった。
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