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カラーコート  作者: 真紗
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練習×気づき=とある子の才能

何とか、、、出せた、文字の乱れはご容赦ください。

「それじゃ、早速だけど、みんなでアップをしていこうか。まだ5月とはいえ暑くなるからね、体調が悪くなったらすぐに言ってね」

山本監督の声が体育館に響く。監督が「みんなもすぐに言うように」と言うと、全員が大きな声で「はいっ!」と答えた。小学6年生のキャプテンが「ランニング!」と力強く号令をかけ、アップが始まった。

アップが終わる頃には、僕と美桜はもう息も絶え絶えだった。保護者席のお母さんたちも心配そうにこっちを見ている。

「大丈夫かい?」

アップ前に自己紹介をしてくれた木村コーチが、優しげに声をかけてくれた。僕たちは「大丈夫です」と答えたものの、正直驚いていた。まさかアップで腕立て伏せや体幹トレーニング(プランクっていうらしい)をするとは思ってもいなかった。ドッジボール、なめてたぜ…。

まだボールにすら触っていないのに満身創痍の僕と美桜を見て、健太が「悪い、気づくのが遅れた」と心配そうな顔で近寄ってくる。健太は、僕たちだけでなく周りの人の小さな変化にもすぐに気づく、優しいやつだ。

「僕たちなら平気だよ、ありがとう」

僕がそう言うと、後ろで美桜も頷いた。そのタイミングで、キャプテンが「水分補給!」と大きな声で叫ぶ。みんな「はいっ!」と元気よく返事をして、それぞれの水筒に向かっていった。

僕たちも水筒のところへ行くと、ステージの上で様子を見ていたお母さんたちが「大丈夫?」と声をかけてくれる。水分をとり、「大丈夫だよ」と返した。

その直後、山本監督が「集合!」と全員を呼ぶ。僕たちも他の選手に負けないように大きな声で「はいっ!」と返事をして集まった。やっぱり健太の声はよく通るな。みんなも健太に注目している。健太は全く気にしていないけれど、監督やコーチたちは少し驚いているようだ。

すぐに集まった選手や僕たちを見て、監督は元の表情に戻り、「ボールを使ってのアップを始めよう」と声をかけた。

その声と同時に、ボールが入ったカゴから次々とボールが取られていき、みんなが2人1組になっていく。僕たちを含めて22人だから、ちょうどいい人数なんだな、なんて思っていると、僕と美桜は木村コーチと3人でやることになった。健太は「琉惺くんとやってみてほしい」と山本監督に言われている。

ボールを使ったアップが始まった。木村コーチに教えてもらいながら、両手投げや手だけでキャッチする練習などを次々とこなしていく。僕や美桜が投げるボールは時々あらぬ方向へ飛んでいくが、木村コーチが上手くキャッチしてくれるので、練習はスムーズに進んでいく。

その時、木村コーチがポツリと「健太くん、ノーミスか…」と呟いた。どうやら健太はここまでノーミスらしい。

ボールを使ったアップを終え、再び水分補給の時間になった。「ノーミスってすごいじゃん、健太!」と僕と美桜で声を揃えて言うと、健太は「いや、琉惺が上手いからミスしなかっただけだから」と謙遜する。

本当にそうかな?僕は疑問に思ったが、山本監督の「集合!」という号令に、その疑問を心の片隅に追いやり、再び皆と集合するのだった。


〜side木村〜

昨日の夜、携帯が鳴った。山本さんからだった。

「木村コーチ、朗報です!明日、仮入部の子が3人来ます!」

「まじっすか!?」

思わず大きな声が出た。しかも、みんな4年生だという。琉惺ひとりだった4年生に、仮入部とはいえ3人も仲間が増えるなんて、夢かと思うほどうれしかった。気合いが入らないわけがない。

今日来た3人のうち、1人は見たことがない子だったが、きっと山本さんが熱く語っていた、例のキャッチの子なのだろう。残りの二人は、昨日見学に来てくれていた健太君と美桜さんだった。

簡単な自己紹介を済ませ、さっそく始まった3人のアップを見守っていると、隣にいた山本さんが声をかけてきた。

「あの3人、どう見える?」

「そうですね…。晴翔君と美桜さんは、体力がないように見えますね。健太君は…ちょっと分からないです」

私は正直に答えた。健太君はアップ自体は問題なくこなしているのだが、選手同士が並んだり、近づいたりする種目になると、途端にリズムが合わなくなるのだ。決してできていないわけではないのが、かえって私の疑問を深めていた。

「だよね」

山本さんは私の言葉に頷きながら、「おそらく彼は…」と続けた。その話を聞いて、私は「なるほど」と膝を打った。確かにそれなら、みんなとリズムが合わなくなるはずだ。

山本さんの予想が正しければ、次のキャッチボールでは問題なくこなすだろう。

そう思いながら、私は晴翔君と美桜さんに、ゆっくりとしたペースでキャッチボールや基礎的な練習を教えていた。そして、時折健太君の様子を窺う。

「健太君、ノーミスか…」

思わず、そんな言葉が漏れた。彼は「ドッジボールは苦手」と言っていたはずなのに、結果はノーミスだ。晴翔君達に褒められても、「琉惺が上手かったから」と謙遜している。

そんな彼らを見ていた私に、山本さんが再び話しかけてきた。

「細かいところに目が行く子だとは思っていたけど、想像以上だね。 “彼も”」

山本さんは本当にうれしそうだ。そして、私も心からそう思った。

願わくば、この3人が仮入部から正式入部になって、もっと一緒にドッジボールができたらいいな。僕は本気でそう願っていた。


夜勤明けは甘いパンを欲するので今日はカステラにしました、コーヒーと合わせると幸せです。異論は認める。

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