虚々実々
「おれは学長が別に言ってもいいんじゃないか、と言うから言いますが、普段より新しい生徒が多く入るんじゃないかと聞きました」
「魔術ギルドはいつも大人気じゃないか」
わたしはその話はちょっと疑問でまた聞いた。この西ヨーロッパのいちばんイケてる国の都市国家フィレンツェの中心に本部がある魔術ギルド。その前は知らない。あまりアストラさんは言ってない。ともかく、ここに西から東のちょっと聖堂と仲がわるい人たちの辺りまでのあいだ、「非凡狩り」にされたくない、贅沢したいマギアたちはいったん魔術師を狙うのだ。それは、ほかの国にも結構ギルドの支部があるというから、そういうところから固有魔力の検証を簡易にして、「あらあアクアですね!」みたいに仮判定したままここで正式にギルド員としての試験みたいなものを貰うとか。
「それはそうです。いつも生徒が多いのです。辞める人もそんなにないしわちゃわちゃ。でも今回はそれがあるのです。『大魔術』というのを解決して、そうなのにどうやったのかはちょっとわからない!……ということで、それを調べにあえて生徒として来る子がいるんじゃないかな、という話です」
「密偵か!?そういうのはたいへんじゃないかな。ファンタジアの人が過労死しちゃうぞ」
「まあ、そうかも知れませんが、基本誰でどこでなにをするかわからない幻想魔術師の人を気にするより……そんな人がめちゃくちゃ入ったとしてフラマの子たちが『あ~それはねあれこれして』と言っちゃうのがいちばん心配じゃないかなとおれは思いましたが」
「それもそうだ。フラマの子たちはどうぜんのことしか言わないから、別に機密とかないじゃないか」
「ミカエル学長は、入るフラマの子もそれは同じだから大丈夫だって」
「うん?頭いいな」
「……と、ギルド長が仰ったと言いました」
「聞いてない」
「ステラさんは似たようなこと聞いてないですか」
「なぁい。大魔術から戻ってそのレポートを書いたあともなんか調子が狂ったギルド長が『時は満ちた!』とか叫びながら雑談中のわたしたちを襲って『盗み聞き以外はなんなのかな』とちょっと思ってたけど、まあそんな秘密があったのか。直接にはぜんぜん聞いてません」
「そうでしたか」
「フラマの人たちと違って、アリアの人たちの言葉って、ぜんたいの雰囲気自体は隠せないけど、言葉を流して飛ばして隠すことは上手いからね」
「そうですね。だから空気が作れますよ」
「そうだね。
で、わたしは天才だから超速理解した。だからギルド長は、その『情報集めのために送った子たち』を逆の逆にギルドのチカラにするつもりだな?」
「お見事です!だからフラマの場合ぜんぜん心配いらなくて、他の堂もそれぞれ上手くできると言いました」
「そうだね」
水の堂はいちばん嘘が上手い人で、土の堂はいちばん秘密が守れる感じだ。そして風はその適当な話の中でなにが本当でどっちが計画であり気まぐれかを区分する事が非常に難しい。結局フラマがいちばんものの隠しなどは下手だが(それはわたしへのドルイドのくだりを見ると、この「白花語」の読者さんもみんなわかると思うんだ)そのポンコツさは入ってくる子も同じだから心配する必要がないという事だった。
そんな感じで話していたら、わたしたちの列もそろそろ前になって、適切にぱんと肉の干しと葡萄汁を貰った。
「ありがとうございます」
「みんなお疲れ様です。薬師さんは今日見ませんでしたが、よく合わせて来れましたね」
「ははい、今夜はアストラ・ネロさまとの面談がある日ではなかったんですが、なんか風が躍ってるように感じて城に戻ってみたら馬車がめちゃくちゃ来るから『あ、終わったんだ』とギルドに来れたんです」
「不思議な人」
使用人さんは笑って、わたしにも食事をくれた。
「ありがとうございます!」
わたし2人はそのまま、ギルドの門を通って……家に戻る。
「そう言えばドルイドさん、」
「その切り替え流石だな」
「え……」
「話斬ってごめん。なぁに」
「ベッドは使いましたか?」
「それが先に気になるのか、エロい子だな。ずっと使ってたよ。本当に寝れなくなると『香水』を応用すると香りが抜くんだろう、と思って一昨日くらいからは適当になった」
「そんな惜しいことを」
「やはりその反応はちょっときもいと思うぞ……」
「仕方ありません。けっこうそれしか考えてなかったんです。読めるものもなかったし」
「あ、そうだったな。そのかばんはだいたい魔力素材だったのか」
「はい、それらはいっぱい使っちゃって、その代わりに珍しそうな平凡の草木の標本をいっぱい入れてるんです」
「そうだったね。嬉しいぞ。ならその苦労に免じて許そう」
「はは」
そんなくだらない会話をしながら、狭い(流石にすみごこちをよくするには引っ越した方がいいね)我が屋に入った。
「ただいまにおかえりなさい」
「ただいま戻りました」
机に食事を置いて、エンブリオ少年もだいたいの荷物を置くのを見ながら、頭をポンポンして、ヘアをいつものように戻した。
うん、やはりこれがいちばん心が安定になる気がする。




