杖を強くすること
まあ、「焔流累颯」という謎の言葉はどうでもよくて、わたしはあれを考えてる最中だった。「木のエーテルの扱いは虫みたいな形であってはならない」
なら、「木みたいに。」
考え方だけをちょっと参考しよう。
「もともと、おまえの考え方は非凡らしいところがあるあれだったから、ためになると思ったよ」
ブイオさまはそう言った。
「あれってなんです」
「「そんな言葉は汎用的に」「持ってる意味がなんとか」「言われると思う」みたいなややこしいあれのことだ」
「それ普通の女の子みんなそう言いますよ。人の子はみんなそうです。非凡の狼に現代社会のなにがわかるということですか」
「嘘をつけ」
まあ、最小、わたしの母はそんな言葉言わなくて
「自分の感情とか判断に、疑問符を付けるな!」「なんであんたはいつもややこしい言い方で言うの」とかよく言われた。弟とは普通に通じたけどね。
正直一時期は母に自分の性格を、行動原理と思考パターンを否定されたのがショックすぎて、「こんな弱い体」で生まれたから、その影響でそんな性格になったのではないかと、わたしは疑っていたのだが、父も弟も大体通じたので、3対1でわたしは普通の話し方だったと勝手に結論付けて思ってたね。
うむ。楽しい思い出だ。
「ともかく、「草木のやり方」ですね。それを自分の杖で再現すると、より素晴らしい効率でエーテルを吸ったり、成長することができる。できるようになる」
「そうだ」
成長がない、成長できない、成長済みだ。そんなステラ・ロサちゃんのわたしは「成長」という単語が無縁ではある。わたしは狼の「星化」の恩寵を貰ったとしても、ただ崩れる寸前のじぶんの存在を固定している、雨降った後の花みたいなものなのだ。それがなんか倒されずずっと粘ってる。不安定な体と心。
でも、持ってるマントや、杖、服はふつうの魔道具の類なので、ブイオ様が言う「累」の理によって、杖を成長させることはできる。
杖の品が上がって、自分が考えるに適切な魔力の使いを施したら、球からエーテルの糸みたいなもんを出したり、杖の棒の部分の形を変えて木の根みたいな形にしたり、色んなことができるだろう。
「うん、より違和感がないですね。そんなのありそう」
「それはいいことだ。その、「そんなのありそう」が、大体の非凡の生まれ方で、呼吸で、自立みたいなもんだと思え」
「確かにそんな感じあります。」
でも、そのように杖としてできるであろう境界を伸ばす事や、杖の器そのものの形を変えて使用目的にあうようにすることは、相当の凄い呪術だ。今の自分は、自分の体を動くのに精一杯なのだ。そんなわたしが、杖が強くなったとして、自分の「木のエーテルの操作」が増幅できるとしても、思う通りにうまく行くかな、という問題。
「魔力変形、そして境界拡張。うん。これらは「元素魔術」の領域を侵さない、ちゃんと呪術も共有する方法です。でも、今の自分にはむずかしいと思える。」
境界拡張は呪術に良く使われて、「畑に大量の触媒がある時」に使うものだ。畑全体の範囲で、小麦の病気を治したり、活気を与えることを一括処理できる。それは知ってる。そんな環境だったら、まあ、いけると思うけど、もともと「そんな恵まれた環境ではない状態でエーテルを吸うための」境界拡張だ。本末転倒という言葉通りだ。より効率よくしなきゃ意味がない。
そして魔力変形に関してはやったことも、見た記憶もないけれど、あれだ。
「杖が木になったと言われる伝説」だ。
それは、なあ、御伽噺の専門家として腐るほど聞きましたわ。どこの川辺に杖を刺したとか、旅人はいなくなって彼の杖だけが残ってデカい木になったとか。そして、木に形を変えた杖で、エーテルを随分と吸うと、また形を戻せるのだ。そこまでが要求される一セットである。
「なんか「白神女」さんが実際に植えた木、世界中にめちゃくちゃ残っているかも知れないですね。そんなに影響された伝説が多いと」
また白神女の話になっちゃったけど。半分独り言だったのに、ブイオ様が反応した。
「その「白神女」も杖を使ったのか?」
「そうですね。だいたい使ってたと言われます。ドルイドと魔術師の師匠みたいな方ですもの。」
そういうのを考えると、また、わたしの「古代魔術」の記憶ともだいぶ違った。「賢者」は、魔道具は扱えるけど、普段は素手。手動きだけで、大体の術が使えたので。




