そして桜のドルイドはクールに去るのであった
漁師のお兄ちゃんは別に「深紅の悪魔」によって大変になってない。そのあとすっきりお別れした。わたしはやっと、(少年の家でパンを食ったけど)悪魔から助けた人からちゃんとしたお礼を貰ったのである。彼は「心の言葉」にやられたわけでもなくて、「灰色の呪い」が感染したわけでもない。健康体だ。
うん。やはり健康が一番なのだ。
わたしは10年ちょっと足りないくらいずっと痛かったから、まあ、不健康の専門家とも言える少女、クララちゃんだったのだ。ぜんぜん「人が大変になるまで待つ」とか「むしろ今回は放置しよう」など考えない。「それでは僕はここで」になっちゃっても、なんの返しも無くても、ぜんぜん良い。
それを一端「森の姫様」の流儀としたのである。
ドルイドらしい「こういう方法を使うと奴らに会う事がなくなる」とかも無くて、本当にただ倒して、吸収しただけ。あいつらの対策など、特にないのだ。本当にただ近い、狩れそうな人を頭良く狙うだけだ。また襲われないことを願うしかないね。
ブイオ様とちょっと歩いている。
まだ夜は遅く、朝は遠い。そしてわたしはこの土地がフィレンツェであってるだけを知っていて、ただ「欠片の気配」を目指して走る狼から落ちない様に頑張って粘っただけだ。ここがどこであるか全然わからなかった。
いつも水を飲んで筋トレをする川辺はどこに行けばいいのかはもちろん、フィレンツェの市町がどこにあるかもだ。(考えてみれば、やはり地図とかが必要かもしれない)この近くでゆっくり休める場所を一端探して、寝て、朝になってから移動した方がいいと思った。
わたしはこの辺りの人気が少なさそうなところ、林を探した。もちろん自然を吸って、山を歩くドルイドなので、石とか枝とかもちゃんと注意して、しかもクッソデカい狼と一緒だから、あまり他のどうぶつの心配もしないけど。今まで無事だったけど。でも、この狼は影が薄くて、攻撃という概念がぜんぜんないから、もしかすると、逆にそれが悪く働いて、「あいつ狙うか」になるかも知れなかった。慢心する事は良くないね。
道からちょっとだけ入る。
すこし休むだけだから、深いところには行かない。もともとここは初めて。道から離れすぎていると、ぜんぜんわからなくなるのだ。そして、他の隠れ里に行くのも、賊に会うのもごめんだね。適切に隠すのが大事。
時間がちょっとすぎて、海からは結構離れて、塩の気配とか、肌がピリピリする感覚はぜんぜん無くなった。まあ、いつもの森という。
「他の国ではなかったけど、けっこう遠くまで来たな」
「そうですね」
狼さまがそう言った。
「さすがに夜は難しいかも知れないけど、この旅を続く以上、ちゃんと「欠片の気配以外にも」道の印とかが必要かも知れない」
「うん。その通りです」
わたしは適切なデカい木下、ブイオ様を座らせて、もふもふを纏って斜めになった。横になった。(どっちだよ)
林はわりといい感じで、これはゆっくり休められる。どっかでフクロウの鳴き声がしたり。静かだ。
自分の腰を触る。
得たばかりだから、革製のカバンはまだちょっと違和感。
でも、こいつの中にこれから、薬や触媒、果実などを入れることになるだろうから、慣れるしかないな。
狼はもふもふで、あったかいけれど、やはり冬は寒いと感じた。




