森の寝床
初めての寝床は、まあ、寝床というか、森の野宿。野外はいつもの事だ。
そして自分のマントとドデカい狼のモフモフ。まったく同じ環境であった。
(今日は新しい経験が多かったな)
くっそデカい音。羽ばたく音。氷が割れる音かも、雪が落ちる音かも知れない。
今日は…「深紅の悪魔」を無傷で倒して、仕事の報酬を得た。
魚と、パンと、カバン。なんのどうぶつの革かは、わからない。聞くのは礼儀ではないと思った。派手な、贅沢すぎるカバン。腰があるね。腰の重さが、感触が、カバンがあるという感覚があるね。偉かったと思った。母に自慢できる…
むにゃむにゃ。
初めて海を見て、「欠片」と星のエーテルを回収して、より「操作」が上手くなった「花びら」を踊らせた。白のダンスを夜景に浮かして、新しい技のきっかけを得た。
(海は本当にデカくて)
(本当にあの海水で塩を…塩…そんな貴重品を魚に…)
(お金と立場ができたら、いつかお魚料理か。貴族みたいに)
夜は続いて、雑な考え、雑想は続く。
(お金…「花びら」の手品で稼ぐのはできない。見ものにするのは方向性に合わない)
(白神女みたいに偉くなりたいけど)
(わたしは「灰色の呪い」の怪物との混ざりなんだよな)
黒
おねむ。
そして、時間が死んだ。
その灰色の霧の、そのものであるわたしは、
人の子の子の人生か、と、人殺しとしてあまり慣れてないけれど
まあ、菌だし
失敗したくないと思った。
むにゃむにゃ。
ダークグリンに白を混ぜて
青が開けたら、そこは朝の光が斜めに走る
夜は短くて、ふと瞼を開いたら、そこは見知らぬ森の朝だった。
「確かに近所に水もなくて筋トレの場所もないな」
「おはようございます」
狼のブイオ様がいつもの通り朝を告げる。
わたしは華やかな桜のドルイドのステラ・ロサ。妖精のマントを纏って目を覚ました。
「おはよー」
「む、そうですね。川も無くて空き地もねぇ。ぜんぜん違うところだ」
そこは、白黒に染まる普通の冬だから。
「森の姫様」なら、起きたら、リスやうさぎが周りに遊んで花が咲いてるかも知れないけれど、わたしとは無縁の空想だ。
多分、寝る前に考えた雑な考えが今も頭のそこに残って、廻を漂っている。
そして、そのわたしは、狩り人の娘で、生きたどうぶつにはどうも慣れる気がしないけどね。
「まあ、ブイオ様でどうぶつ枠は大丈夫だ」
「どういう意味だ」
「あれです。御伽噺の定番だ。主人公の子供はともたちのどうぶつが付くものです」
まあ、そうなんだ。「カラス」とか「犬」とか「馬」とか。色んな動物がこどもの冒険を共にして、物語の中で喋ったり、人にはできない、「飛ぶ」とか「嗅ぐ」とか「早い」能力で、苦難を翻す。
その分主人公は頭が切れる奴だけど、逆にこいつらに人に無い知恵もがあったりもするね。
はは、バカみたいな。どうぶつが喋るわけがないけどね。
と、思いながら、星の狼を眺めた。
「いや、厳密に言うと、わたくしは生物でもこの世界のものでもないぞ」
「そうですが」
星の狼の星はつまり、大地みたいなものだ。神様に崇め奉るには適切だと思うけど。




