表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/36

死の淵にて


「起きなさい! いつまで寝ているつもりなの! 」


 ()()()()()()()()()がイリーナを起こそうとしている。

 だが、その声はイリーナの()()()()()()()()だった。


 イリーナがゆっくりと目を開ける。


 目の前にいるのは、黒いレースと宝石で装飾のされた(きら)びやかな深紅のドレスを身に纏った少女。


 輝くブロンドの髪に、ルビーの瞳、真珠を砕いたかのような白くきめ細やかな肌。

 もう見慣れてしまった美しい顔。

 その表情は気品と自信に満ち溢れているものの、眉をひそめて怒りをあらわにしている。


「本物の、イリーナ……?」


 本物と言われた『イリーナ』は、

 見下したような目でイリーナを見つめる。


「本物という言い方は、少し違いますわね」


(わたくし)はずっとあなたの中におりました、

 あなたはまったく気づいていない様子でしたけれど」


 イリーナは自分の記憶を辿る。

 毒の入ったワインを飲んで、意識が途切れた。

 つまりここは死後の世界なのだろうか。


「まずは一言お礼を言わせてください。

 (わたくし)の世界で一番大切な弟、ルイを助けてくれたこと、心から感謝いたします……」


 『イリーナ』は続ける。


「感謝の意を示すために、まずはあなたの持たれている誤解を解かせていただきます。


 あなたは(わたくし)の身体を奪ってしまったことを申し訳ない、と思われていたようですが、それは違います」



(わたくし)はあなたがイリーナとして目を覚ます前日の夜に、自ら命を絶ちました」



 イリーナの瞳はまっすぐこちらを見て、意志の強さを感じ取れるが、その表情は硬く強張っているようにも見えた。


「警備兵に扮した私の協力者に毒入りのワインを用意させて……」


『昨晩のイリーナ様は珍しくお酒をお飲みになって、その後すぐにご体調を崩されてお休みなられたんですよ』

 自分がイリーナとして転生した最初の日に、ティアが説明をしていたことを思い出す。


 あれは、『イリーナ』の自殺だったのか。


(わたくし)は確かに死んだはずでした」


「だけど、どういうことだか、

 (わたくし)の身体にあなたが入ってきて、

 生き返ってしまいました」


 そう語る『イリーナ』は、悲しむでも怒るわけでもなく、どこか呆れたような様子だった。


(わたくし)はお父様の意志を継いで、この国を守りたかった」


「でも全て裏目に出てしまった。

 国民は(わたくし)を極悪皇女と罵り、

 残りの人生をあの塔で過ごすことになった……」


「だから、死を選んだの?」


 イリーナは問いかける。

 その問いかけに、『イリーナ』は(うつむ)き、小さな声で呟いた。


「ジルカント……」


 『イリーナ』の口から漏れ出た名前に、イリーナは目を丸くする。


読了ありがとうございました。

よろしければブックマーク・いいね、☆☆☆☆☆から評価いただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ