表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仕事なので勇者探します  作者: 新町新
4/23

4話

 



 人を罠にかけてウルフに食べられたゴブリン



▲△▲△▲△▲△▲


 あれから森の中でゴブリンに数回襲われたが全て倒して、全部で20匹分の耳が集まった。


「図鑑によると5匹分で1P(ポイント)で、Eランクになるには10P必要かぁ」


 あと6Pも足りない。ゴブリン以外を狩っても後で依頼を受けることは出来るのか?


「ん?おわっ!」


 突然目の前を何かが通った。ライトの魔法で明るくなっているのに全く気付けなかった。


 その何かは唸りながら俺の周りを歩き始めた。キラーウルフ……森の殺し屋とも呼ばれるCランクのモンスターだったな。毛は黒く、体長は2m以上ありそうだな。ウルフの二倍近くある。


「えっと、部位は牙か。右の牙に特殊な模様が入ってるらしいから右の牙は折らないようにしないとな、っと」


 呑気に図鑑を読んでいたら攻撃された。だがキラーウルフの攻撃は障壁に阻まれて俺には届いてない。不思議そうに唸る。


「次は俺の番だな。泥沼に沈め(ボッグダウン)


 キラーウルフの足元を泥沼に変える。反射的に移動しようとして足を滑らせた。次で終わらせる。


大地公の槍(アーススピア)


 2m程の土で出来た槍がキラーウルフを貫く。土と言えども魔力で固めてあるので皮鎧程度なら余裕で貫通できる。


 キラーウルフは抜け出そうともがいていたが、横倒しの状態で苦しそうにこちらを見上げている。生命力が強い分長く苦しんでしまうだろう。


「……今楽にしてやる」


 道中で錬金したナイフを取り出して心臓に突き刺す。これで即死じゃなくとも比較的早く死ねる筈だが……目から生気が感じなくなったので、どうやら即死出来たようだ。


 キラーウルフの口を開けて牙を剥ぎ取り、残りはアイテムボックスに収納する。見ると牙には一定の間隔でギザギザの模様があるが左の牙には無かった。これが討伐部位の判断材料か。


「にしてもキラーウルフが自分から襲ってくるなんて珍しいな。こいつは待ち伏せ型だった筈」


 森の殺し屋なんて呼ばれているが実際はテリトリーに入らなければ襲われることはない比較的温厚なモンスターだ。


 妙に気になったのでキラーウルフが飛び出して来た森に入っていく。ライトを使っていても木々のせいで十分に照らせない。


「くそ、明るくなってから出直すか」


 戻ろうと立ち止まると何か見えた。光点が2つある。近付くとライトが横たわっていたそれを照らした。キラーウルフだ。どうやらお腹が膨らんでいるのを見るとメスのようだな。繁殖期だったのか。


「にしても痩せすぎだ。あのキラーウルフはこいつに何か食わせようと俺を襲ったのか?」


 同情するが食われてやるわけにはいかない。メスのキラーウルフに近付くが威嚇もしない、いや出来ないのかもな。体に手を触れると一瞬ビクッとしたがそれ以上は抵抗しない。左前足の付け根から後ろ足までゆっくり手を滑らせる。


「見た目通り筋肉が無いな。何かの病気か?」


 俺も毒は使うがこんな症状見たことない。


「ふむ、顎を動かす力も無いか。だが体からは毒を確認できない。やはり病気か」


 口を開いて口内を見たが炎症なども無く特に異臭もしない。衰弱や病気なら俺には何もできない。


「病気なら子供に遺伝しているかもな」


 病気なら子供に遺伝する可能性がある。と、セレスが言っていた。さすがエルフ。


 だんだんキラーウルフの呼吸が浅くなってきた。どうやら限界らしい。キラーウルフは懇願するようにその瞳を俺に向けた。


「何となく言いたいことは分かるけど……」


 おそらく自分の子供のことだろう。別に立ち去っても良かったが、何故かここに居なければならないと思ってしまった。


 キラーウルフは暫くすると完全に呼吸を止めた。死んでいるのを確認して子供を取り出すために腹を開く。手を入れ引っ張り出す。血に濡れているがキラーウルフの子供だろう。呼吸をし始めたので無事生きているようだ。


 もう一度手を入れて確認したがこの1匹だけのようだ。


「ミルクとかどうしよう。人が飲めるのでも大丈夫かな?」


 犬を飼っているラナが仔犬の時は結構な頻度でミルクをやる必要があると言っていた。タオルを濡らして子供を拭いてやるとタオルがすぐに血で染まった。


「そうだ、へその緒を切らないとな」


 ナイフでサクッとへその緒を切る。改めて抱き上げると結構重いな、5kg以上はありそうだ。どうやらメスみたいだ。


「それに大きいな。前に見たウルフの幼体に比べたら倍近くある」


 大きさに驚きつつ何度かタオルを変えながら拭いてやると、綺麗な毛色になってきた。親とは違い雪の様な産毛だ。成長すると黒くなるのかな?


「一応目も拭いた方が良いのかな……」


 口を軽く押さえてから擦らないように優しく拭いていく。


「よし、綺麗になったな」


 さすがにまだ目は開かないが血は完全に拭き取れた。地面に下ろしてやるがペタンと尻で座ってしまう。あざとい可愛さだ。


「そうだ」


 キラーウルフの母親の牙を剥ぎ取る。いつか父親の分と合わせてこいつ用の首輪を作ろう。


 魔法で穴を開けてキラーウルフの親達の死体を並べる。何かを感じたのか子供がキューキュー鳴く。穴を埋めて目を閉じ祈る。偽善とかじゃなくて何となく心にクルものがあったからだ。


 子供の背中と尻を手で支えて抱き上げる。


「早く街に行って育て方を調べよう」


 ギルドに行けば何かしら分かるだろうか。最近はテイムモンスターも多いしそういう店があるかもしれない。とりあえず街に急ごう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ