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仕事なので勇者探します  作者: 新町新
20/23

20話

これで20話ですね。最初の構想と見比べると恐ろしく進みが遅いですね。北海道から出発した日本一周旅行なら、今石川県にいます。本当なら鹿児島に行っててもおかしくないくらいです。もしかしたら、いなくても大差ないミノル君みたいなキャラが登場する事も無く消えるかもしれませんね。さらばジーク、さらばアゾースト。ちょい役で出してやるかもしれないから許してくれ。

 



 クライスはなぜ人と関わることを避けていたのか



▲△▲△▲△▲△▲


 ホープの街を出発して5日目。俺が知る素材ではどうやっても完全な魔道具なんて作ることは出来ない。


「焦るな……道はあるはず」


 既に親のキラーウルフ並みに大きくなったヒメの背中に跨って思考に耽る。あーフワフワじゃないか。もう堕落してしまおう……


「はぅ、ちょっと寝てたな」


 レイラントの街まで1日もかからずに着いてしまう。道中なにも無さ過ぎてちょっと寂しい気もする。


 ヒメに巻き付いたクルウの頭を左手で撫でる。分かってたが無表情過ぎて面白い。


「ヒメは凄いな。クルウは5mで500kg近い筈なのに平然と歩いているじゃないか」


 跨るヒメの首を右手で撫でる。ブラッシングをしていないごわついた毛の感触を楽しむ。


(次の街ではあまり人と関わらないように情報を集めよう)


 情報屋がいてくれれば良いんだがな。駆け出しの冒険者や商人が集まるホープの街とは違い、レイラントの街は入り組んだ道と荒れたスラムが特徴だ、それ故か後ろ暗い者や素行の悪い冒険者が良く集まる。


「良くも悪くも、人が集まるところには情報も集まる」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 あの後ヒメが疲れ始めたので歩いてレイラントの街に向かう。


「またか」


 疲れたふりをしていたのか、ふらっといなくなったかと思うと獲物を咥えて帰ってくる。変なものを食べないように竜肉で餌付けしていたのに効果は無かったようだ。


『ガツガツガツ』


『……』


 今はオークに齧り付くヒメをクルウはジッと見つめている。


「またおこぼれ狙ってるのか」


 ゴブリン程度なら歩きながら食べるが、オークくらい大きい獲物だとその場で食べ始めるので中々先に進まない。


 ヒメの食べこぼしをクルウが呑み込み始めるがクルウの食事はすぐ終わるから良い、ヒメと違って咀嚼しないからな……骨とか刺さらないのか?


 ヒメが眠そうにフラフラしていた顔をフッと空を見上げる。どうしたんだ?


「あー、あれかぁ」


 ヒメの視線を追うと、大小2体の竜が飛んでいた。大きい方はここから見ても造形がよく分かる、尾の先は槌の様にT字で体の表面はゴツゴツとしている。小さい方はよく分からないがスラリとしているのは分かる。


「親子では無いし……番だとしたら大きい方はロリコ——」


 ンと言おうとした時、大きい方の竜がこちらを見た?


「おいおい冗談だろ。地獄耳すぎ」


 竜達が急降下してくる。見ると、小さい竜は困惑した顔をしているからとりあえず大きい方に着いて行っている感じか。


「おっとっと」


『グルルル』


『シャーー』


 ズズウゥン……と凄まじい風圧と地響きが襲ってくる。四肢をついていても見上げるようにデカイ。従魔達も警戒しているようだ。


『貴様か、ワシのことをロリコンなどと呼んだのは……』


 唸っているようにしか聞こえないが、音に魔力を乗せて話しているので理解出来る。


「だってその小さい竜……仔竜じゃないのか?」


 白い竜を指差す。遠目で見た通りスラっとしていて、白い鱗が艶やかに光を反射している。それに比べて……


『何だ人間その目は。確かにレイラは仔竜だが普通の仔竜とは訳が違う』


『グルゥ?(どうしたの?)』


 仔竜がつぶらな瞳で巨竜を見上げる。産まれたばかりのヒメに通ずる可愛さがある。今のヒメは賢くなってクルウに意地悪したり俺を騙したりするからな。


「いった!本気で噛まなかったか!?」


 だらんとしていた左腕を噛まれた。俺の体に歯型をつけるなんてどんな咬合力してるんだ。甘噛み癖は無くなったが一回一回が痛すぎる。


『その雪の様な白銀の狼……フェンリルか』


「白銀の狼ってヒメのことか?」


 自分が噛んだところを舐めているヒメを指差す。噛むけどすぐに擦り寄って来るんだよな、あざと可愛い。


『フェンリルがどうやって進化するか知っているのか?』


「あ?進化?」


 ヒメとイチャついてる時に邪魔すんなよ。


『そうだ。フェンリルは幼体のころから周囲の魔力を取り込み、力を得ることで本当の姿を見せる』


 そうらしい。


「だから?」


『貴様もいずれ吸い尽くされ死ぬだろう。親同様にな』


「っ!!地母神の落とし子(メテオフォール)!」


 思わず攻撃してしまった。俺が無詠唱で出せる最強の中で魔法メテオフォールは、中空に巨大な岩を生み出して押し潰す。


『ぬぅ!』


 巨竜と巨岩がせめぎ合う。巨竜は必死に耐えているが俺は既にフリーだぞ。


『グルルル(おじちゃんをいじめないで)!』


 お話しようと近付く俺に仔竜が立ち塞がる。目に怯えを孕ませているが両足で立ち、唸って威嚇している。


 踏み込むと少し尻尾を巻きながら後ずさる。首も竦み始めて保護欲を刺激されるが、小さくとも竜は竜。


「アースハグ」


 顔以外を固める、この子に思うところは無いからな。


 仔竜の横を通って潰されないよう必死な巨竜に近付く。姿勢を低くして四肢を踏ん張っている。


「お前何を知ってる。ヒメの力は何だ」


 メテオフォールを解除する。巨竜はドスンと地に伏せる。


『ヒュー、ヒュー』


 歳のせいか喉から音を鳴らしている。


「竜のくせにだらし無いな」


『人間……貴様何者だ』


「ヒメと同じ力を持つ人間だよ」


『力を持つ者が他者と共に在ることはあり得ん!』


 既にその理論は破綻していることに気付かないのか。


「俺は魔道具で力を抑えている」


 服の下から魔道具を出して見せる。


『それは……誓約によって効果を高めているのか」


「誓約じゃない!お前はこれの何を知ってる?封印の魔道具を知っているのか!?」


 声を荒げてまくし立てる。不意に舞い込んだ、俺とヒメの力について知っている存在に平静が保てない。


『鑑定しただけだ。ワシら竜は宝物(ほうもつ)を集めるだけで使いはせん。だがワシの集めた中に貴様が求める物があるやもしれんな』


 ゆっくりと起き上がりながら貴重な情報を話す。


「どこだ、お前の宝物はどこだ」


『場所は忘れた。もう何百年も戻っていない』


 そんな……上げて落とすようなことしやがって。


「全く覚えていないのか」


『……近くに平原があった、広い広い平原だ』


 平原、ネファリス平原か?竜が広いと言えるほど広くは無かったはずだが……


「ネファリス平原か?」


『知らぬ』


 さっきまで苦しそうにしていたのに、もうピンピンして『人と魔族がよく争っていてなぁ』と懐かしむように話している。


「もし俺がその宝物らを見つけたら貰い受けるぞ」


『よいよい、別に人の事が嫌いなわけじゃないしの。グウゥゥ(そのくらい抜けださんか)』


 巨竜が仔竜を包む土を器用に摘んで剥がしていく。


「ヒメ、クルウこっちに来い」


 いつの間にか遠くに逃げていた従魔達を呼び寄せる。マスター置いて逃げるか普通?ヒメは駆け寄ってきて、撫でれ。と頭を押し付けてくる。俺の弱点をよく分かってるじゃないか。


「だがまずはクルウだ」


 クルウに魔力を込めた魔石を投げる。たまに食べさせないとヒメが魔力を吸い尽くしてしまうからな。


『パクっ』


 魔石を食べさせる度に鱗の艶が良くなっている気がする。


『なるほどのぉ、吸い尽くされないように工夫しておるのか』


 落ち着いてみれば、この巨竜はただの好々爺にしか見えないな。あの言葉も悪気があったわけじゃないだろう。


「その、すまなかった。いきなり攻撃して……」


『ワシも配慮が足りんかったな。永く生きるとどうもな』


 ガハハハと笑うがうるさすぎる。笑いというより咆哮にしか聞こえないんだよ。ほら、仔竜も嫌そうな顔してるぞ。


『グルゥ(うるさい)』


 仔竜が一鳴きすると尻尾で巨竜の顔をペシペシ叩く。このジジイ嬉しそうにしてやがる。確かに可愛いが叩かれるのが人だったら死んでるぞ。


「仲直りしよう。俺の名前は……アービィだ。こっちがヒメでこっちがクルウ。良かったら名前を聞かせてくれ」


 偽名では無く本名を教える。人が相手だとどこからバレるか分からないが竜なら大丈夫だろう、左右に控える従魔達を紹介する。


『ふむ、ワシの名はグラント、見ての通り地竜じゃ。そしてこっちの……』


 地竜は火竜・水竜・風竜に並ぶ竜種の頂点種だ。四種の中でも温和で尋常じゃない硬さの鱗を持つ。


『こっちの子が最古の竜のレイラじゃ』


 最古の?明らかに幼いというか若いだろ。


『不思議か?何故最古の竜と呼ばれるのかが』


「あぁ」


『この子はな、いわば先祖返りじゃ。最古の竜……全ての竜の起源となる竜じゃ』

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