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憧れの地


ガヤガヤと周りが騒がしい。


待機室で風切と綾人を待っている間あちこちにいる小隊の会話に聞き耳をたてる。


これから始まる演習について他の小隊と意見交換をする隊、内輪で作戦をたてる隊などどこもかしこも演習の話題で持ちきりだ。


「どうしてこれ発煙筒こんな多いんだろうな」


「さぁー?遭難したときようじゃないの?」


発煙筒の多さに疑問を感じている隊もあるようだが最初の俺と風切が考えたように遭難用ということで意見が落ち着いてるみたいだった。


(どうする…?俺たちの考えを話しておくか?)


この演習は他の小隊とスコアを競う形にはなるが、他の小隊の生存は自分達の隊の生存にも関わってくる可能性がある。


「ミナト」


「ごめーん、お待たせ」


風切と綾人だ。



「聞いてくれ、ミナト。一応部屋に向かう旨は伝えていたのに燕ちゃん忘れてたんだ。酷いよね。」


「わ、忘れてなんかないわよ!ただちょっと今日に限って部屋の時計が壊れてて針が止まってたのに気づかなかったのよ…」


「え、燕ちゃん今日バッドラック?うわー……」まるで感染るから止めてと言いたげな仕草で少し距離を取る綾人に対し「あんたねぇ…」と青筋を浮かべる風切。


「2人ともあまり緊張してないみたいだな。」


「まぁね。俺は何回か規模は小さいけどシミュレーターでクリーチャーは見てるから。俺からしたらミナトと燕ちゃんが緊張してないか心配だったけど。」


「んー、確かに少し緊張はしているけれどもあまり実感ないのよね。シミュレーターを使うってことにも、クリーチャーと遭遇するっていうことについても。」


「俺も綾人と一緒で、風切のこと心配してたんだが…これなら大丈夫そうだな。」


「そうだね」と綾人が相槌を返す。


「なんか私だけ子供扱いされてない…?」


少し不満そうな風切を2人で笑う。……これなら大丈夫そうだ。


いつもの空気に浸っているとオープンチャンネルが開かれる。


『全員聞こえているな?軍から派遣された藤原だ。毎年恒例のイベントなので周知の事実だろう。』


(軍の人か…)


『今日は学生諸君の実力を測らせてもらう為にここに来た。一つ忠告をさせてもらうとシミュレーターでダイブする際、一種の暗示をかけさせてもらう。これは学生諸君が演習だからといって緊張感を無くすのを防ぐ為に恐怖を始めとした精神的影響を受けやすくするというものだ。』


ざわざわと周りが騒ぎ始める。いまの発言は先生からも学園のメールからも知らされていない事だったからだ。


『率直にいえば死を感じると思う。心を折られる学生も出てくるだろう。だが敢えて言わせてもらう。奮戦を期待する、生き残れ。以上だ。』


プツっとマイクの切れる音がする。それを合図に周りが騒ぎ始める。


「……なんだか凄い一方的な内容のチャンネルだったね」


綾人が苦笑する。


「実際にあったら怖そうな人だよな。なんか威圧的な雰囲気がありそうな感じが。…そういえば結局最後まで軍の支給だか支援だかって話については触れなかったな。」


「あー、確かに。てか私、その話すっかり忘れてた」


「燕ちゃんは他の事で夢中だからねー」


ニヤついた顔で風切をみる綾人。


「あ、あんたねぇ〜!怒るわよ!ホントに!」


「なんだ風切、体調でも悪かったのか?」


「違うよ〜ミナト〜、ジンクスだよ、ジンクス。聞いた事ない?これで最後まで生き残ったカップルはーって話し。」


「あ、あやヒト!!」


声が裏返る風切をみて可笑しくなる


「なんだ、そんな一緒になりたい奴がいたのか。残念だなー。一緒にならなかったからといって拗ねないでくれよ?」


笑いながら面白可笑しくからかってやる。


「…………」


「うっわ…大惨事だよこれ。喋んなきゃ良かった。」


言って冷静に現状を分析する綾人。完全に拗ねてそっぽ向いてしまった風切。


「?」


『それでは学生はシミュレーターに接続して下さい。』


再びオープンチャンネルが繋げられ全員にナビゲーションが入る。


「じゃ、また中でな。」


「りょーかい」


「………」


苦笑しつつ自分も担当の医務員とシミュレーターが待つ部屋に足を運ぶ。


部屋からでて廊下を歩いてる学生の姿が徐々に消えていく。どうやら自分の部屋は結構奥らしい。


「ここか。」


131番と書かれたその扉の番号はメールで送られて来た自分の番号と一致している。


「よし!」


扉を開ける。


「失礼します。」


「お待ちしておりました。そして、こんにちは。加賀ミナトさんですね?」


「はい、よろしくお願いします」


「それではこちらに横になってリラックスして下さい。シミュレーターを装着します。」


シミュレーターを使った演習では、シミュレーター内で受けた精神的な影響が肉体で反映された時にすぐ対応できるようにとそれぞれ1人ずつ医務員がつく。


「はい、装着完了しました。すぐにダイブになりますが準備はよろしいですか?」


「はい、お願いします。」


「御武運を。それではダイブスタート。」


意識が暗闇に落ちる中、医務員さんが笑顔で手を振ってくれているのが見えた。


(綺麗な人だな………………)



◽︎◼︎◽︎◼︎◽︎◼︎◽︎◼︎◽︎◼︎◽︎◼︎◽︎◼︎◽︎◼︎◽︎◼︎◽︎◼︎◽︎◼︎






暗い。なにも見えない。ゆっくりとどこかへ進んでいるのか、はたまた沈んでいるのか。抵抗をまったく感じない水の中で流されているようなそんな感覚を覚える。


指先の感覚が戻る。次第に歯車が回り様々な部品が動きだす様に体の感覚が戻ってくる。


もう目覚めるのかと覚えた心地よさに名残惜しさを感じ瞼が動くのを確認する。


「ん………」


言葉がなかった。なんて言ったらいいのか分からない。

ただ、ここが地球でないことは分かる。生命が溢れていると、この場所に立っているだけで感じられらた。


「すげぇな。」


身の丈以上もある草、倒れることなど考えられない様な大木、昆虫だか爬虫類だか見分けが付かない生き物の姿。


「………」


あらゆる生命の姿があった。それがどれも自分の住んでいる星では見られない姿で新鮮さを感じていた。





(……そうだ、はやく綾人と風切と合流しないと……)


自分の目的を思い出す。2人とはそう遠くないところに転送されているはずなのですぐ合流出来るはずだ。


「《マップ》」


まずは現在地の確認をする。


(近くに人の反応はないな…俺が最初に転送されたのか。とりあえず現在位置をスタート地点としてマッピングを開始しよう。)


目の前に映し出された地図に青い点が表示される。


マッピングは自分で歩いた半径20メートルぐらいのエリアをマッピングできるがそれでは効率が悪いので主に探索機器を積んだ強化装甲に任せてそれをデータリンクして共有するという役割になっている。そしてマッピングだけでなく、セカンドプラネットでの活動は俺と風切のような歩兵ができる活動は強化装甲と比べかなり少なく、データ採取から戦闘までの多くの役割を強化装甲に任せる形になる。



「ミナト?」


とりあえず今できることをやってしまおうと行動に移そうしていると女の声がかけられる


「風切か。いま来たところか?」


「うん。目開けたらミナトが目の前に見えたから声かけたの。この様子だと綾人はまだ?」


「まぁな。俺が最初で次がお前だ、言わなくても分かるだろうが。」


「そっか……、なんか全然違うね。びっくりしてる」


「俺も同じ気持ちだよ。」


「自然があふれ「お前結構着痩せするタイプなんだな。」」


普段と違いスーツを着てるので服装に余分な遊びがないのだ。所々機器で凸凹しているとはいえピッチピチな部分もありスタイルが分かりやすいのである。


「……?………っ!」


言われてることに気づいたようで下を向く風切。気にしていたのなら悪いが恐らく世間一般ではスタイルが良いと言われる分類なので気にすることはないと思うが。


「…変な目でみたら殺すから」


「そんな気にしてたのか……安心しろ、笑ったりしない。むしろ綺麗な体つきしてると思うぞ。」


「そうじゃなくてさ!!?」


「オーーーッス、俺が最後かな?」


拡声器で少し声が変わってはいるが聞き慣れた声には違いないので声の主がすぐ分かる。


「お待たせー。待った?」


「いや、全然。こっちもそんなに時間立ってないよ。」


声の方に顔を向けると綾人の姿が見える。姿が見えると言っても強化装甲を装着した綾人は生身の姿は一切見えないのだが。


「教科書とかでみたことあるが間近でみるとこんなにでかいんだな。」


目の前に立つ綾人を見上げる。綾人が装着しているのはスピードを重視したモデルで他のモデルより幾らか小さいのだがそれでも人より一回り大きいどころではない。


「んー、大体高さが3メートル無いぐらいかな?Z系列は速いけど体躯は小さい方だよ。」


言いながら右肩の部分から3つ程何かを打ち上げる。上空15メートル程に打ち上げられたそれはそれぞれ綾人を中心に違う方角へ飛んでいきある程度飛んだところで待機する。あれが周囲の気温や湿度、空気衛生、地形など様々な情報を綾人に共有してくれるビットと呼ばれるものだ。


「ビットとのリンク完了…データの異常値確認なし……2人へのデータリンクも完了……おけ。いつでも行けるよ。」



「了解。それじゃ、風切も綾人も聞いてくれ。まず今後の目標は3つだ。」


「「うん」」


2人が話を聞いているのを確認し続ける


「重要度の高いと思われるものから話していくよ。まず1つセーフティーエリアの発見、次に周囲の情報収集、最後に別小隊との情報交換だと考えているんだが…どう?」


「アタシはそれで問題ないと思うわよ。綾人はどうなの?何回かシミュレーターでこうゆうの経験してるんでしょ?」


「いや、僕も1からの探索は初めてだよ。だからそう言ったことに関してはあまり僕から提供できる情報はないかな。僕もとりあえずはこの線でいいんじゃないかと思うよ。」


2人の同意を得られた事に安堵を覚える


「ありがとう。俺もリーダーなんて初めてだし他人を引っ張るなんて不慣れだから疑問に感じたりしたら遠慮なく言ってくれ。」


「うん」「分かった」と首肯する2人


「ふーーー。それではセーフティエリアを探しつつ周囲の情報収集を開始する。綾人はクリーチャーの発見や環境情報に変化があったら逐一報告してくれ。クリーチャーとは極力戦闘は避けていき弾薬を温存する。発砲は各々の判断で、それでは行動を開始する。」


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