学校生活‐1
地球にあった資源はほぼ喰い潰してしまった。
だから、新しい星が....資源に満ち溢れた第二の地球とも言える星が必要だった。
□■□■□■□■□■□■
ふと目が覚める。
外では白い粉が降り注いでいる。雪だ。冷えきった気温は雪を溶かすことなく淡々と雪を積もらせていく。昔は違ったらしいが今ではさほど珍しくの無い光景に好奇心を抱く事はない。
日本から四季はなくなった。かつては、桜が咲き乱れ、蝉が鳴き、紅葉が舞い、雪が降った。季節は順番に巡り時間の経過を体感させてくれ、厳しいこともあるが心地よかったらしい。しかし、地球は追い詰められている。過度な地球の衰退。これはまず自然環境という形で表れた。結果、日本からは四季が姿を消し、冬しか訪れなくなっていった。
「................であるからにしてー、強化装甲は一部の思念力の強い人間にしかあつかえない。まぁ、《サイキック》ってのが一般的な知られ方だな。....強化装甲の操縦方法は特殊で............」
雪について少しだけ考えていたら人の声が耳に入ってくる。そして、それは徐々に意識を覚醒させていく。
黒板では眼鏡をつけたいかにも堅苦しい感じの教師がモニターを使って説明している。どうやら、強化装甲なるものの動かし方を説明しているらしい。
(........)
眠そうな顔を直す気はなくこのまま寝てしまおうかと考えるが、周囲にチラリと目を配れば何人かの生徒はソワソワしていたり既に教科書を片付けている者もいる。そろそろ休み時間に入るらしい。
「元々、強化装甲は鉱山での発掘や人類が生身での活動が難しいと思われる場所で活躍するはずだったが、諸君らも知っている通り....っと、チャイムがなってしまったな。では本日はここまで。続きは次回にする。」
チャイムに授業を遮られた(止められた?)教師は教卓の上の資料をまとめ教室をそそくさと出ていく。
「ミーナト!」
(........?....なっ!?)
名前を呼ばれ、振り返るよりも早く相手がタックルをかましてきた。俺はその勢いに逆らうことができず少しヒンヤリとした床に倒される形となった。
「ふふ、抜かったな?ミナトよ!」
「なんだよ、その気持ち悪い口調....てか、いきなりぶつかってくんな」
結構痛かった。不意打ちだったため上手く受け身がとれず肘を床にぶつけた。ジンジンする。
「フフーン」
俺が肘がジンジンすることに気をとっている間もひたすら俺の事をニヤニヤと見つめている。
こいつは、仙崎綾人。小学校から一緒でまぁ、親友みたいなものだ。いい奴ではあるのだが普段はこのように理解しがたい行動を突発的にする奴なので少し困っていたりもするんだが....。
とりあえずは体を起こすことにし、衣服についた汚れをパンパンと軽く払う。
「いいか?綾人?何度でも言うがいきなり人にぶつかってはいけないんだ。」
「それでも!っていい続ける事が大事だってアニメでみたぜ」
俺はそっと微笑み可笑しそうに笑ってる綾人を見て、なんかこれ以上続けると頭痛がしそうなので追及はしないことにした。
「んで、飯行く?行かない?」
「....?あーもうそんな時間か」
「相変わらずよく寝るねぇ」
「いいだろ、歴史の勉強なんてしたところで意味なんてあまりないんだから」
「今さら過去を学んで振り返ってどうする....って言いたいの?」
「別にそういうつもりじゃないんだが。」
「そうですかー」
資源と環境に追い詰められたこの時代。人類が危機感を
抱き行動に移した頃にはもう手遅れだった。
そんな人類は地球の再生は諦め消耗を抑える方向に転換した。だが、資源は必要だ。けれど地球にはない、ここに無いなら外から入れれば良い。人間のエゴは他惑星へと向けられる。そんな中見つけられる《セカンドプラネット》。人間が放っておく訳がなかった。
「........で、話もどすけどどうするの?行くの?行かないの?」
「行くよ。俺、朝寝坊したからなにも食ってないんだ。」
そう言って教室を出ていく俺に綾人はついてくる。
「なぁなぁ、じゃあさお前今朝のニュースも見てないわけ?」
慌てて追いかけてきた綾人が聞いてくる。
「まぁな。ほんとに時間無かったんだよ。」
「なるほどねー」と綾人は財布の中を確認しつつ一人で納得している。ジャラジャラと小銭がなる。
「.......」 「.......」
コツコツと歩く。途中、おいかけっこをしている生徒とぶつかりそうになるが、すんでのところで向こうが避けた。
「........」
チラリと綾人を見れば「うわ、これ足りるか....?」などと心配そうにしているが俺が気になっているのは綾人のお財布事情などでは決してない。
「いや、教えろよ!?」
「へ?」
「だから、今朝のニュースの話!」
「あ~はいはい。そいえば言ってなかったな。」
財布をポケットにしまい綾人は続ける
「セカンドプラネットについてだよ。エリアを拡大したらしい。どうやらそこが当たりだったみたいで資源がたんまり入手できそうなんだってよ。」
《セカンドプラネット》。人は地球の資源を食い潰してしまった。だから、人類は新たな星....第二の地球になるような星を探しもとめた。そして、見つけたのが《セカンドプラネット》と呼ばれる星だ。地球から《惑星間移動高速機》で約3日の所にあるこの星では驚いたことに地球で存在しているエネルギーや資源といったものは大体揃えており、更にはこの星には無かった資源....新たなエネルギーも備えていた。だが、全てが上手くいくなんてのはあり得ない。なにごとにも障害は存在する。
「クリーチャーは大丈夫だったのか?」
《クリーチャー》。セカンドプラネットで確認された生命体の別名。
「なにやら周辺のクリーチャーの数が著しく減ったとかで軍が大隊を組んでのりこんだらしい。」
「....なるほど」
「そんでエリアの拡大に成功して、現在は新エリア保持に尽力中。エリアを奪い返しにきたクリーチャーも数を減らしている傾向にあるってよ。」
「これで人類は更なる繁栄に拍車をかけるわけ....と。」
「なんだい、その含みのある言い方は?」
「そんなに上手くいくのかなって思ってよ。だってセカンドプラネットに人類が降りたってまだ140年だろ?クリーチャーだって全体の2割しか発見できてないだろうって言われてんのに。」
そう。まだたった120年なのだ。セカンドプラネットをみつけ、俺達人類があの星に降り立ったのは。たった120年前、一部のクリーチャーと小競り合いをして守りきっているぐらいで浮かれすぎているのではないかと思う。実際、クリーチャーとの間で今まで大きな戦闘があったのは過去4回だけだ。
「まぁな。明らかにセカンドプラネットについては未知な部分が多い。まぁ、その未知な部分のお陰で俺達の科学技術も躍進したことで国が更に期待しているんだがな。」
「それに....」と綾人は続ける
「もう、この星には時間がない。そりゃ、俺達や俺達から数十世代まではまだ安定した生活が得られるだろうけど、人類の存続という観点から見たときもう時間は限られている。」
「なりふり構ってられませんってか。」
「つまりはそゆこと。私たち人類はギリギリまで追い込まれないと駄目な生き物なんです」
オヨヨ....と泣いて見せる綾人。
綾人のつまらない演技を無視して俺は続ける。映画のエキストラでも勧めてやればいいだろうか。
「でもさ、あっちからしたら良い迷惑だよな」
「........。」
綾人はウソ泣きを止め黙ってこちらを見る。
「自分達の星にいきなり他の惑星の住人がきて住まわせて下さい、資源下さいってんだろ?しかも半ば強引に。」
「それは....仕方のないことだって俺は割りきってる。生存競争ってやつなんだよ、これも。」
そして、少し真面目な雰囲気でこちらを見てくる。
「お前、そんなこと考えてたらここでやってけないぞ?俺達が将来担う仕事は人類の繁栄なんて大義名分があるが、実際のとこは相手の意志なんか無視した略奪だ。」
「略奪ね……」
話していたらいつの間にか学食についていたらしく、券売機で券を購入し列に並ぶ。
「あ、オバチャン俺、カレーのルー多めで!」
オバチャンに「ありがと」とつげ、綾人は近場の椅子に座る。そして俺もカレーをうけとり綾人の前に座る。
「いっただっきまーす!」
「いただきます」
「うめぇ........」
綾人はスプーンを置き今にも召されるような安らかな顔をする。
「いやいや、大げさでしょ....その反応....」
つっこんで欲しかったのか楽しそうに笑う。
「んー、あと二時間!頑張るぞーー!」
「俺は寝るかな....科学とかあまり興味ないし...」
「まだ、寝るのか!?」
驚愕の顔でこちらを見てくる
だって、眠いんだもの。仕方ない。うん、仕方ない。
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ふと机から顔をあげてみればちょうどホームルームが終わったらしく、教室内では部活に行く者、帰宅する者でガヤガヤとしている。
(俺も帰るか)
机にかけてた鞄を取り教室をでていく。
廊下の窓から外を見ればいくつかの部活は既に集まりはじめており活動を開始している。
廊下を進み下駄箱で靴を交換し校門へ向かう。
俺は積極的に人と関わってきたわけではないので友達と呼べる関係はあまり多くはない。綾人は放課後は強化装甲の成績上位者ということもあり基本的にはシミュレーションルームで教師との模擬戦やクリーチャーとの模擬戦を繰り返している。
つまり帰りはボッチなのである。
(なんていうか周りが仲良さそうに帰ってるのを見るとなんかこう........気まずさというか罪悪感みたいなものを感じるというか....)
同じく下校しているグループを横目にそんなことを思う。マフラーを深く巻き、できるだけ何かから隠れようとする
ボッチで帰ることに若干の後ろめたさを感じていると後ろから声をかけられる。
「あ、ミナト」
校門前で声をかけてきたのはオレンジの髪のサイドテールが特長の女の子だ。
「風切?珍しいなお前も帰りか?」
「うん、今日は部活が急遽休みになっちゃって」
「急に休みにされてもね」と、困ったように笑うのは風切 燕。クラスメイトだ。
彼女は普段バスケ部でこの時間練習をしているはずなんだが、どうやら部活がなくなったことで彼女も帰ることにしたみたいだ。
「一緒に帰ってもいいかな?一人じゃ退屈で」
「どうぞ」と返す。
女の子から一緒に帰ろうと言われて悪い気はしない。さっきまで感じていた気まずさを思い出せば、むしろこちらからお願いしたいぐらいだ。
などとちょっとした安心感に心を覆われていると風切は声をかけてくる。
「ところでミナトは明日の総合戦闘演習はどう?緊張とかしてるの?」
「あーそういえば明日だったな。すっかり忘れてた。」
総合戦闘演習。文字通り戦闘の演習だ。シミュレーションルームを使う戦闘訓練。シミュレーターを使いフィールドにダイブすれば、五感や自分の身体能力、自然現象....全てを現実とほぼ同じレベルで感じることができるので広大な土地を用意したり弾薬費などを考えなくていい分かなり便利だったりする。
「今朝も先生言ってたじゃん。ま、どーせまた寝てたんでしょ。」
「まぁな。アレって確かグループは先生側が決めるんだよな?」
「そだよ。強化装甲一機と歩兵が二の小隊規模で。でも基本的に比較的に仲の良い面子で固められるみたいだからミナトと仙崎は一緒の班になるんじゃん?」
「良かったね」と、こちらを見てくる風切。
「まぁ、確かにアイツが同じ班だってのは心強いよ、それで普段の素行さえよければな....」
「高望みしなーい!仙崎と組めるって結構ラッキーなんだよ??分かってる??」
「まぁ、それなりには」
そうなのだ。綾人は念動力の強い人間で強化装甲を操ることができる。しかも、綾人の強化装甲の操縦には才能を感じさせられるものがあり以前行われた機動制御試験では群を抜いたスコアを叩きだし、教師陣からも驚きの声があがったほどだ。そんな綾人が総合戦闘演習....つまりクリーチャーとの模擬戦闘に味方として配属されるというのは非常に頼りになる。
「はぁ....全然わかってないなぁ....この感じは。」
「そんなことねーよ。って待てよ、そうなるとあと1人はお前か??」
「……どうだろうね。私はアヤトみたいに仲が良いようには見えてないだろうし…」
「そりゃ、大丈夫だ。俺他に友達いないからな。ははっ……」
「そ、そうなの…まぁ…頑張って…」
気まずい空気が場を支配する。
「ほら!ところで!ミナトも明日の演習は緊張してたりするの?」
俺が悪くした空気を頑張って元に戻そうとしてくれている姿勢に涙がでそうだ。雀の涙程だが。
「少し....な。なんせここに入学して初めての演習だし....。」
「そっか。そだよね、やっぱミナトでも緊張するんだ....!」
「ほう、良い度胸してる。明日は背後からの誤射には気を付けろよ。」
「あはは、返り討ちにしてあげるよ。」
風切は人差し指と親指をピンと伸ばしこちらへ向け「バン!」と撃つ真似をする。
悪戯っぽく、それでいて楽しそうに銃を撃つ真似をする風切を少しだけ可愛いなどと思ってしまい視線をそらす。....返り討ちにされるのは御免だが。
「そういえばさ、ミナトがここに入った理由ってクリーチャーとかセカンドプラネットを見てみたいんだっけ?」
若干あがった心拍数を気取られないように自然を装いながら返す。
「....まぁな。それだけが理由ってわけじゃないが。」
足元の小石を蹴り飛ばし続ける。
「見てみたいんだよ、この目で。地球以外に人の住める星ってのを。こことは違う進化をした生き物や俺達が想像もしなかった現象....そういったものを見て感じたい。そこには命を懸ける価値があるってそう........感じさせられたんだ。」
言い切ったところで、やってしまったと思った。なにを自分は急に語りはじめているのかと。
ざっざっざっ
雪が踏まれる音だけが聞こえる
「............」
「........ふーん。」
「....んだよ。」
てっきり風切には、からかわれでもするのかと思い警戒した言葉を投げる。
「ううん、なんでも。今、ミナトの素の部分を聞いて驚いただけ。もっと短絡的な返事かと思ったから驚いちゃった。」
「そ、そうか」
自分の考えていた結果と違い、少し戸惑う。
「じゃあ、緊張だけじゃなくてワクワクもしてるんだ?」
「....そうだな。シミュレーションの中では現実とほぼ同じレベルで再現されるって聞いてるから楽しみでもある。」
「そっか。まぁ、その愛しい愛しいクリーチャーに殺されないようにね?」
首を傾けからかうように笑いかけてくる。その仕草は非常に可愛らしく、嫌でも女性を意識させられる。
「別に愛しくなんかねーよ。ただ興味があるだけだ。」
ムッとして言い返すと尚更面白そうに笑われる。
「あははは、はぁ~面白い。それじゃ、あたしこっちだから。」
そう言って彼女は十字路を右に曲がっていく。
「おう、また明日な。」
「うん、バイバイ」
そして、俺は十字路を真っ直ぐに進む。
数歩進んだところで再び声をかけられる。
「あ!ミナト!」
「....?なんだよ?」
「明日の総合戦闘演習って好きな人と最後まで生き残ると結ばれるんだって!」
風切はこちらを見てくる。表情はいつもと変わらないが、雰囲気は違う気がする。訴えかけてくるような....そんな感じだ。
「へー、そうなのか、知らなかったな。ならお前も好きな人と組みたいのか?」
「そこはまず『好きな人がいるのか?』じゃない?」
クスっと上品に笑う彼女
「教えて欲しい?」
「やけに勿体ぶるな」
俺は苦笑する。そして望んでいるであろう言葉を投げ掛ける。
「教えてくれよ、誰だ?」
「教えねーよー、ばーか!」
........ぶん殴っても良いだろうか。
「あっそ、じゃあな。」
俺は額に青筋を浮かべながら歩みを再開する。
「あっははは!ほんとに面白いなぁ、ミナトは。」
後ろから「じゃーねー」と元気な声が聞こえ、ちゃんと返事を返してやるのはなんか癪だったので鞄をもっていない右腕を上げることで返事を返す。
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男は誰もいなくなった校内の廊下を歩く。
ジーパンに黒のTシャツ、その上に緑のジャケットとラフな格好で歩いているこの男は兵士だ。服の下には鍛え上げられた屈強な肉体とハンドガンが隠れている。
廊下を進むとやがて、校長室とかかれた扉の前に立ち、3度ノックをする。
「どうぞ」
部屋の中から入室の許可を得たことを確認し、扉の横に設置されたパネルに手をかざす。
扉が開き、中からこちらを見つめてくる人物がいる。
「おお、待ってたよ。藤原君。」
「ご無沙汰しております。東堂先生。」
かつて自分を指導してくれた恩師と挨拶を交わし、ソファの前まで移動する
「まぁ、なんだ。座ってくれ。君は一流の兵士だ。ましてやもう、私の生徒でもないだろう。遠慮することはない。」
「恐縮です。では、御言葉に甘えて。」
ソファに座ると体が沈んでいく感覚がする。まるで、腰が無くなったかのような座り心地だ。
「最近、調子はどうかね?」
「良好です。今朝のニュースはご覧になりましたか?」
「おお!そういえばエリアの拡大に成功したみたいじゃないか。今は保持してるとか。君の舞台も参加していたのかね?」
「はい、四日前に作戦が発動されある程度安全が保証された段階で私はこちらへ来ました。」
「なるほど。」
先生と呼ばれた男は二人分のお茶をいれ、一つを藤原に渡す。
軽く会釈をし、藤原は一口飲む。
「........セカンドプラネットは面白いとこだったかね?」
多くの兵士が命をかけている場所にそんな発言は不謹慎と言われるかもしれないがこれには勿論理由がある。
「はい....先生。」
東堂は湯飲みに口をつけながらも藤原を見る。
「セカンドプラネットは素晴らしいところです。確かに危険はありますが、ですがそれはこの地球でも同じことです。あそこでは独自に進化した生物や自然環境がいつも私を驚かせてくれます。」
いままで、どこか静かな雰囲気を纏っていた男だが急に明るくなる。
セカンドプラネットの話になったとたん、藤原は少年の頃にもどったかのようだった。
東堂はそんな藤原をみて、良かった と思う。この少年は入学時、まるで旅行でもいくような視点でセカンドプラネットを見ていた。この子は大丈夫なんだろうか、と何度も心配したことだが上手くやっているようで本当に良かったと思う。
「そうか。それは良かったな、藤原。」
藤原が生徒だった時のように声をかける。そして、少し懐かしくあった。
「....はい。」
「君はいつもセカンドプラネットには夢を抱いていた。純粋な好奇心というものを。」
「だが、」と続ける。
「私は心配だった。セカンドプラネットは人類にやさしいところではない。常に命に危険が伴う場所だ。セカンドプラネットに行きたい行きたいと、言っていた君が絶望し、心が壊れてしまわないかと。」
「........。」
「....まぁ、そんな心配も杞憂だったようだがな。こうして立派に成長してくれた。生徒が立派に育ってくれるほど私達教師を嬉しく思わせるものはない。」
「先生のおかげです」
藤原は笑う。
「少し余計な話をしてしまったね。では本題に入ろうか。」
「....分かりました。では、まず、私が軍からここに送られて来たのは二つの理由があります。」
藤原は人差し指を立てる。
「まず、1つは明日の模擬戦闘で学生の現段階のレベルを計ること。まぁ、こちらは毎年軍の人間が来ていると思いますのでご存じかと思います。」
次は中指を立てる。
「そして二つめです。こちらは今回初めての動きですね。....スカウトです。」
「スカウト....?」
黙って話を聞いていた東堂は聞き返す。
「えぇ。簡単に言ってしまえば見込みアリと思われる学生にはここではなく、軍で訓練を受けてもらうという事です。そして護衛付きではありますが早い段階で比較的危険度の少ない実戦に参加してもらうことになります。」
「....軍は焦っているのかね?」
「わかりません。ですがこの計画は確かに即戦力の育成を目的に考えられたものらしいです。実戦を積ませるのが一番はやいと。」
「教師としては、その計画に賛成しかねるな。育成には時間をかけるべきだ。」
確かに実戦を重ねることで成長をしていく人間もいる。しかし、そんな人間は少数派だ。ちゃんと訓練をしていない人間が実戦にいけばPTSDを引き起こす可能性がある。
「私だってそうです。ですが、決まったことなのです。....まぁ、安心して欲しいのは、すぐに連れていくというわけではありませんし、強引に連れていくような真似もしません。あくまで本人の意思を尊重するみたいです。もちろん、出てくれればそれなりの報奨を望めるみたいですが。」
「ふむ........。」
「まぁ、選別の対象になるのはかなりの物をもってるか、才能を感じさせてくれなければ声はかけませんので....基本的にはこの話は無い方向になると思いますが....」
「........いや、それなら一人いるのだよ....。間違いなく彼は天才という類だ。」
「それはそれは。東堂先生にそこまで言わすなんてよっぽどですね。」
藤原は東堂が滅多に人を褒めないことを知っている。だから、なおさらその生徒が気になった。
「どんな子です?」
「才能の塊だよ。強化装甲の操縦に関しては。ハンデ戦とは言え、すでに何人かの教員に勝ち点をあげるようになった。」
「なるほど。」
藤原はにわかに信じがたいと笑い、お茶を飲む。
「そして、名前が少し気になったんで血筋の方をみてみたんだが..」
「名前....?」
「仙崎綾人。麻那君の弟のようだ。」
「麻那の!そうか、もうそんな年に....。」
空いた口が塞がらないとはこの事だ。仙崎 麻耶と言えば自分と同じ小隊だが、彼女は世界から認められている強化装甲の操縦者でその腕は海外から必要とされ、外国に派遣されるのもしょっちゅうという、言ってしまえば全世界トップクラスの操縦者だ。
「これには私も驚いたよ。弟がいるとは聞いていたが。歳までは覚えていなくてね、苗字と成績をみて、もしやと思ったんだ。」
「将来有望ですね....。」
ふと、仙崎 麻那を思い出す。彼女は悪いやつではないんだが、マイペースなのと、すぐに手が出てしまうのが難点だ。それさえ無かったらなかなか良い女だったりするんだが、と内心思う。
「これは、俄然、明日の総合戦闘演習が楽しみになってきましたよ。........他にめぼしい子はいないんですか?」
「他には特に目立った子がいるとは聞いていないな。」
「そうですか....。では、先生。一つお願いがあります。」
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
教室の窓を見ればガラスの外で今日も雪が降っている。生き物の活動を拒むようなその風景に何処と無く寂しさを感じる。
「はい、それでは皆さんお静かに。今日は皆さんが気にしていた総合戦闘演習の日です。以前も話た通り今日は授業はありません。このあとシミュレーションルームに行き、そこでシミュレーターを用いた実戦をしてもらいます。その為の確認を今からしますので、眠いからって寝ないように。」
キラーン
「........!?」
急な寒気が俺の体を覆う。クーラーとやらでもつけているんだろうか?それか暖房でも壊れたか??
「はい、それではナマケモノも目が覚めたようですし確認に入りたいと思います。まず、今日の戦闘演習で出現するクリーチャーの危険度は2です。まぁ、少し訓練した人間....つまり君達のような学生が武器を持てば対抗できるとされてるレベルですね。」
これが1つめ、と教師は伝え更に続ける。
「そして、制限時間は8時間です。8時間の間死亡判定をださないこと。死亡してしまった生徒はモニター室で生き残っている生徒の活動を見てもらいます。....因みに今回の生存時間はそのまま成績に加点されるので手を抜かないように。」
「「「「えーー」」」」
「えー、じゃありません。....全く........将来あなたたちは本物の実戦に向かうというのにそんなことでどうするのですか....。」
「先生ー」
綾人が手を声をあげる
「?どうかしたかな?仙崎君。」
「倒したクリーチャーは加点されないんですか?」
「いい質問ですね、仙崎君。加点はされます。そして、今回の演習で私たち教員から高いスコアをだしたと認められた班には武器や強化装甲といった武器を軍の技術部からかなりの優遇を受けることができます。」
「それは要望した通りに武器をカスタマイズ、または支給してもらえるということですか?」
疑問に思ったことを口にだす。この学校では演習など、実技が成績に大きく関わってくる。となれば、やはり武器は良性能のほうが良い成績はでやすい。
「そうですね、ミナト君。要望した通りにはならないと思いますがある程度は要望したものと近い物になるとみて良いかと思います。」
(なるほど....)
この学校では進路はセカンドプラネットの調査隊に入るしか選択肢はない。だが、調査隊で3年間所属していたものには公務員職への推薦が貰えるのだ。そのときにここでの成績が高ければ高いほど転職は有利なものになるため、生徒は成績を気にしている者が多いらしい。
(まぁ、俺は転職なんかするつもりはないが成績の話をされれば、その気になる生徒はおおいだろうな。)
上手いこと扱われてんなと思う。
「そして今年からはこの演習の成績上位者にはとある特別待遇があるとのことですが……詳しいことはまだ聞いていませんね…。」
(特別待遇……?これ以上学生に出せるものなんかあるか?)
回りの生徒もどうやら同じことを思ったらしくざわざわと騒ぎ始める。
「はいはい、お静かに。色々気になることがあるのは分かりますがまだ終わってませんよ。では班割りを発表します。」
手をパンパンとたたき皆の注目を集めることで教室に静寂をもたらした先生は続けて誰もが気になっていたことを口にする。
「今からあなたたちの自動型補助機器に班割りを送ります。各自で確認次第同じ班のメンバーと集まり総合演習の作戦をたてて下さい。★マークのついている人がその班のリーダーです。」
先生が手を前にだすとオートマシンが肩の位置から
手のところまで動き、空間にパネルを写し出す。先生はそれを手でなにやらタッチして指先を移動し、必要な作業は終わらせたのかパネルを閉じる。
すると頭の中にベルが鳴るような音がする。メッセージが着信したことを知らせるオートマシンの機能だ。
机の上にオートマシンを移動させパネルを空間に展開させる。見るとメッセージの文字が青く光っている。
(さて....話だと俺と綾人は同じ班になれる確率が高いらしいが........)
手紙マークのアイコンをタッチし、新着メッセージを開く。
第9班
★ 加賀 ミナト
仙崎 綾人
風切 燕
「................は?」
声が裏返る。
(いやいやいや、まてまてまて。)
さっき先生はなんと言っていたか。
『今からあなたたちの自動型補助機器に班割りを送ります。各自で確認次第同じ班のメンバーと集まり総合演習の作戦をたてて下さい。★マークのついている人がその班のリーダーです。』
脳内で数分前の記憶が再生される。
「....ってことはだ」
「ミーナート」「みーなーと」
びくっ
おそるおそる後ろを振り返る。そこにはよく知った顔、《風切 燕》と《仙崎 綾人》がこちらを見下ろしている。
「ねぇねぇ、みなと。」「なーなー、ミナト」
「............」
「あ、駄目だよー綾人。みなと隊長って呼ばないと。」
「あー、確かにそうだな。ミナト隊長ー。」
クックッと笑いを堪えられず綾人の後ろで笑う風切。笑いを隠そうとせず目の前で腹を抱えて笑う綾人。
「てめぇら........」
「ひー、ひー........いやぁ、流石みなと!持ってるねぇー。」
「あっはははははは」
「てめぇはいつまで笑ってんだよ!!綾人!!」
「まぁまぁ、そんな怒んないでよ。怒ったって隊長なのは変わらないぞ?」
「そうそう。やつあたり良くないって。」
「くっ........なんだこの腹の底から沸き上がってくる感情は....」
「恋だね」
「違ぇよ。」
綾人の冗談を否定する。何が恋だ。それが本当だったら異性の風切はまだしも同性の綾人にまで恋してる事になる。俺はノーマルだ。両刀なんかじゃない。本当だ。
「演習開始まであとどのくらいだ?」
「確か10時からだったからあと一時間後だね。」
綾人が答える。
「レベル2だよね?今日の演習。レベル2って言ったらオウギュとかなのかな?」
「多分そうだと思う。それがどうかしたのか?」
「あたしオウギュ嫌なんだよね....その、ビジュアル的に....」
「お前....ちゃんと戦えるんだろうな....?」
オウギュが嫌いという女性は多い。見た目が虫のような顔で体の表面に粘液のような物を常に纏っているのが問題のようだ。
「燕ちゃんもオウギュ駄目なのか。まぁ、見てて気持ちいい物じゃないよね。」
「あの顔を最初に見たときはここに来たことを本気で後悔したよ....はぁ、嫌だなー。」
「でも、ヌルヌルってだけ聞くとエロいよね。あれ?もしかして燕ちゃんヌルヌル好....」
「死ね」
風切のボディブローが見事に鳩尾に入り綾人は声もでず苦悶の表情を浮かべ前のめりに倒れていく。
「カッ....ハッ....」
「一生そこで倒れてるといいよ。」
冷たい宣告を告げ、風切は視線を綾人からそらす。
苦笑いをしているとベルが脳内に直接鳴り響く。自動型補助機器がメッセージを受信した報せだ。
「どれどれ、《メッセージ》」
ディスプレイが空間投影される。一番上の未開封の手紙をタッチし、スライドさせる。
「ん?このタイミングだと学校から?」
「そうみたいだな。演習の細かいルールが記載されてる。綾人と燕にも転送しとくよ。」
「ん、ありがと。………うわ、セーブエリア自力で探さないといけないのか…しかも滞在制限時間20分に一度利用した所は利用不可だなんて……消耗品の補充だけで終わりそうだね。」
「マッピングの更新に気をつけないとね。」
いつの間にか立ち直っていた綾人が注意を促す。
「………何か変じゃない?」
「なにが変って言うのよ、綾人?」
「今日の演習はレベル2だろ?セーブエリアで獲得できる装備が豪華すぎる。」
言われて一覧をみてみる。
「んー……そうか?別にふつうじゃないか?」
特に贅沢という感じはしない気がする。これが初めての演習ということも考えればこんなものか…といった印象だが…
「まず発煙筒だ。なんで発煙筒なんだ??遭難したならメッセージでいいだろうに…」
「そりゃ何らかの理由で機器が故障した際にだろ?」
「うんうん」
「たしかにそうだがにしても支給数が一小隊12本だ。普通は一小隊三〜六本だ。…多すぎる。」
それに…と付け加える
「爆裂式鉄線まで支給一覧に記載されてる。これは明らかな過剰火力だ。レベル二を相手にするならこんなのは荷物になるだけだし他の物資を獲得した方が現実的だ」
「大型のクリーチャーを想定してじゃないの??」
「それなんだよ。燕ちゃん。」
綾人がこちらに視線向ける。
「…!そうゆうことか…!じゃあ発煙筒は!?」
「え?え?」と自分だけ会話に追いつけないでいる風切。
「ミナトは気付いたみたいだね。燕ちゃん、思い出してみて。爆裂式鉄線の使用推奨レベルは大型クリーチャーが分類される四からだ。……レベル2には大型はおろか中型のクリーチャーすらいないよ。」
「あ……確かに…」
「それと付け加えて発煙筒。もしかしたらこれは遭難用じゃないかもしれない。レベル四からは電波をジャミングするカタツムリがいたはずだ。」
「待って、つまり…」
「そう。この後の演習…難易度レベルニというのは信じない方がいいかもしれない。」
初投稿です。未熟な部分多々目立つと思います。様々な御指摘、感想....お待ちしております。




