最終話 小さな結婚式
晴れ渡る空。門出にはふさわしい天気になった。
結婚衣装に身を包み、カエと二人で控室で待機していると、ドアが開いた。
「やあ」
ドアの隙間から、浅見が顔を出し、片手を軽く上げて、挨拶をした。
「浅見!来てくれたのか!?」
俺は浅見に駆け寄った。遠いので、来れるかどうか分からないと思っていた。驚く俺の様子を見た浅見は、満足そうにしている。
「もちろん。二人の結婚式なんだから、当然だろう?服、似合っているよ」
浅見は俺の肩を軽く叩き、俺の隣で無表情で立っているカエにも声をかける。
「カエも久しぶりだね。中央の暮らしには馴染めてる?」
浅見の質問に、カエはピクリとも表情を動かさずに答える。
「それなりに」
「問題なさそうだね」
断定的に言う浅見が珍しくて、思わず二度見する。隣でカエもフンと鼻を鳴らしている。こちらも俺以外に不快感を表す態度が珍しくて驚く。
「二人は親しいんだな?」
「ちがう」
俺が思ったままを述べると、やや被せるようにカエが否定した。花嫁姿なのを忘れて、忌々しいと顔をゆがめている。
浅見も予想してたかのように鼻で笑う。
「安心して。俺も君が嫌いだからね」
迫力のある爽やかな笑みをたたえていた。カエも浅見も否定はしているけど、普段感情を表に出さない二人がこうしているのは、やはり仲が良いからのように見えた。
俺が関われなかった時間が、確かにあるのだと実感する。
少し面白くない。
そんな俺の顔を見た浅見は苦笑した。
「ちづ」
「何?」
「結婚、おめでとう。良かったな」
浅見の目には、少し涙が浮かんでいるように見えた。
◇◇◇
「浅見と仲がよかったんだな」
浅見が部屋を出ていったあと、カエに尋ねた。カエは一瞬こちらを見て、ちがう、とため息をついた。
「あの人、いけ好かなくて嫌い。だけど…あの人しか、ちづのこと教えてくれなかったから。仕方なく」
「へぇ?」
にしては、遠慮のない関係のようだったけど。
俺が納得できずにいると、
「…まぁ、恩はあると思ってる」
カエは口元を緩めた。
「私は、あそこから出るのは無理だって思ってた。でも、あの人が、千鶴のために、お前が頑張れって言いに来たの」
「そっか…」
浅見は初めて会ったときから、兄貴のように俺の面倒をみてくれていた。変わらない浅見に、くだらない嫉妬をした自分が恥ずかしい。そしてうれしい。
「これからは、ずっと一緒に過ごせる」
カエはそう言って微笑んだ。
お読みいただき、ありがとうございました!
隔離地区がどうなるか、いつか書けたらいいなと思っています。




