第11話 好きなところ
「ちづはさぁ、結構危ない橋を渡っているってわかってる?」
自室でくつろいでいると、浅見が思い出したようにそう言った。
すぐに何のことか分かった。俺とカエの接触がバレてから、隊長に浅見と巡回経路を交代させられたが、俺だって魔法使いだ。人目を盗んでは彼女に会いに行ってる。時には勤務時間外にも。そうして季節が巡り、カエと出会ってからもう3年が経つ。
カエとは変わらず、二言三言話すだけだ。浅見に注意されてから、今まで以上に気を付けて動いているつもりだったが、結局、バディの浅見にはすぐに気付かれてしまった。
俺はベッドから起き上がり、浅見に顔を向ける。彼は面白くなさそうに尋ねてくる。
「あの子、普通の子だよね。何が琴線に触れたの?」
その質問に、眉間にしわを寄せる。人の想い人を捕まえて、普通ってなんだ。そりゃ、もっときれいな人はいるだろうけど、俺にとってはかわいいところばかりだ。
「規則に触れるのをわかっていて、お礼を言ってくれたんだ」
たぶん、そういう心根を好きになった。それから
「俺を見て、微笑むところもかわいい」
目が合うと、かすかに表情が緩むのだ。よく見ないと見落とすほどだが、仲間内でも表情が乏しいらしいカエが、俺には微笑むのがうれしい。
「あと、肌もすげー白いの」
透き通るくらい白くて、きめ細かい。
「吸血鬼はみんなそうだよ」
そうつっこみが入ったが、俺にはどうでもいいことだ。
きれいだと思うのは、彼女だけなのだから。
「それに、働き者なんだ」
カエはいつも忙しくしている。家事をし、勉強をしている。あまり成績は良くないみたいだが。
「真面目だし、人見知りなところもかわいい」
まだまだ挙げられるな、と思っていたら、
「ベタボレだってことはわかったからもういいかな」
呆れたように浅見に言われた。
浅見は今や、どんなに反対しても、俺がカエとの接触をやめないことを受け入れたらしい。代わりに、グチグチと忠告してくるようになった。
「とにかく、本当に気を付けろよ。ちづは攻撃魔法以外は下手なんだから、もっと慎重に動けよ」
でも、どんなに慎重に動いても、どうにもならないことがあるのだと俺は知るのだった。




