29. 実家への帰省の旅(続き)
次の日は、ニーゲンブルグの町を見て回ることにした。宿を出て、領主の住むニーゲンブルグ城を見たが、これは外から見ただけ。城は町の北側の小高い丘の上にあった。中央の尖塔が目を引く、「あそこから見たら市内が一望できて、さぞかし見晴らしがいいだろうな」と思った。
次に少し南に行くと広場があって、そこに大きな銅像があった。たぶん有名な人なのだろうと思ったがそのまま通り過ぎた。
そこから少し歩くと大きな教会があった。尖塔があまりにも高いので下から見上げると首が痛くなったので、中に入った。中では多くの人々が祈りをささげていた。話し声を聞いていると、最近の魔獣被害のことで話が持ちきりのようだった。あそこで魔獣が出た。ここでも魔獣が出たと言っている、魔獣被害は市民の最重要案件のように思った。
中は落ち着いた雰囲気で、天井が高い。ステングラスにはいろいろな絵が描かれている。尖塔に登れるというので登ってみた。尖塔の上から市内を見ると赤い屋根の家並みが続いている。
私の生まれたジゲンハルト町とは大ちがいだ。ここに一体どれだけの人が住んでいるのだろうと思った。
次の日やっと、故郷のジゲンハルト町に向かう乗合馬車に乗った。と言っても途中までしか行かないが、それですべて歩くわけにもいかないでそれで十分だ。
2日ほど馬車に揺られて、途中の町で下ろされた。馬車はそこまでしか行かない。
後は歩きである。街道を南へ歩く。すれ違う人は南に行くほど少なくなる。最初はすれ違う商隊の馬車もあったが、昼頃には、ほとんど誰にも会わなくなった。
昼過ぎに寄った村で休んでいると、おばちゃんに話しかけられた。
「お嬢ちゃん、あんた1人かい」
「そうですが、何か」
「どこまで行くのかい」
「ここから半日ほど行った川の向こうのジゲンハルト町、そこが私の生まれ故郷なのです」
「そうかい、生まれ故郷に帰るのか。気をつけて行きなさいよ。この先は魔獣も出るからね」
「ご注意感謝します。一応私冒険者の資格もあるので魔獣とも戦えます」
「それでも、最近は魔獣が増えているからね。この前もこの先の森で人が魔獣に襲われた。この1年でこのあたりもずいぶん物騒になった。以前はこんなにひどくなかったのだけどね」
「そうですね。昨年までは私もジゲンハルト町に住んでいたので、この街道で人が魔獣に襲われるようなことはなかったと思います」
「そうだよね、去年まではここも平和だったけどね」
おばちゃんに注意されて道を急ぐことにした。とにかく夕方までに川沿いの村まで行かないといけない。
マリーが森のあたりに差し掛かった時森の奥の方から、獣の臭いが漂ってきた。
「よかった、私が風下にいて、もし私が風上だったら獣の気配に気づかなかったかもしれない」
そうやって、慎重に、音を消して歩いた。しかし、獣はマリーの存在に気付いているようである。獣の臭いが相変わらずしてくる。そしてその臭いは先ほどより強い。もうマリーは覚悟を決めた。
剣を抜いて、一気に街道を走った。すると前方の藪が大きく揺れてそこから黒い大きなものが飛び出してきた。
マリーはその黒いものに向けて魔力強めで氷の矢を10本放った。すると、氷の矢に貫かれたビッグベアがいた。放った10本の氷の矢のうちの1本がビッグベアの頭を貫いたようでビッグベアはそのまま地面に倒れた。
マリーは倒れたビッグベアを異空間に収納した。そしてすぐにマリーは小走りで走った。ゆっくりしていると、血の臭いで狼が集まってくるかもしれない。
その後、しばらくして小走りから早歩きに切り替えた。ばてたら終わりである。そして、夕方にはやっと領地境の川の村まで来た。ここで1泊してあとは川を渡ればあとは両親と兄の住むジゲンハルト町だ。
次の日の朝、マリーは宿を出て昼には家族の住むジゲンハルト町に着いた。




