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20「悪くねぇな」

 「――この大罪人め!!」

 

 体に生えた異常なほどに巨大な口から火炎を吐き散らしながら、リリエルは叫ぶ。

 その火炎による攻撃を躱し、ユダはレイラを庇うようにして前に立つ。

 

 「大罪人だかなんだか知らねぇが、オレはそんなことどうでもいいんだよ! あと、大罪人じゃねぇしオレはユダって名前なんだよ!!」

 「黙れぇぇぇ!!! あたしがどう呼ぼうが勝手だろうが!!」

 

 そんな言い争いを繰り広げながら、ユダはニヤリと笑った。

 しかし、その瞬間に訪れた胸の痛みに歯を食いしばる。

 

 やっぱ、この力は仮初にしかすぎねぇのか。

 

 ユダはそう悟り、大鎌を構える。

 

 「『魔殲斬サジェラー』!!」

 

 大鎌に漆黒の閃光を纏わせ、ユダは意識を集中させて駆けだした。

 深呼吸を繰り返し、未だ尚続いていた出血を軽減する。

 そして巨大な口を更に大きく開いたリリエルの首筋に、大鎌の先端を突き付け――、

 

 「なに――っ!?」

 「おらああああああああ!!!」


 叫喚するユダと、慌てた表情をするリリエル。

 ユダは大鎌で思いきりリリエルの首を刎ねた。

 

 血飛沫が上がり、ユダの制服に返り血が付く。

 

 「そんな……どうして、あたしが大罪人に……」

 

 絶望の感情を両目に宿し、涙を流し始めたリリエル。

 それを見たユダは深く息を吐くと、彼女の頭を大鎌で突き刺した。

 頭蓋を貫いた大鎌の刃先が頭から突き出ており、そこから大量の体液が滴っていた。

 

 「がああっ!!」

 

 しかし、ユダも血を吐いていた。

 

 心臓を破壊されてしまえば、堕天使の力を持っていたとしても長くは生きられない。

 つまり体の限界――生の限界が来たということだ。

 

 「ユダっ!!」

 

 深刻な表情をして、レイラがユダへと駆け寄る。

 それに対し、ユダは力なく笑った。

 

 「心配すんなよ……もうあいつは倒したんだからな」

 「確かに倒したけど……でも、ユダが……!!」

 

 レイラは涙を流しながら、ユダへそう言った。

 すると、ユダがレイラを抱きしめ――、

 

 「そうだよなぁ……オレの体はもう限界だ。でも、最後くらいはレイラに伝えておきたい」

 「なに……?」

 「――オレはレイラが好きだ」

 

 その直後、ユダは再び力なく笑った。

 

 「――アタシも好き……大好き!!!」

 「そうかよ……オレってば、早く告白してりゃ良かったな」

 

 ユダは声を震わせながらそう言った。

 そしてレイラのことを強く抱きしめ――、 

 

 「まだ死にたくねぇよ……まだ生きてたいよ」

 

 涙を流しながら吐露する。

 

 「でも――」 

 

 ユダは重くなっていく瞼を無理矢理抉じ開けながら、

 

 「最期に本当のことをレイラに伝えることができて――」

 

 

 

 

 「悪くねぇな」

どうも、焼き鮭です。

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