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「じゃあ、そろそろ行くか」
「ああ、そうだな」
俺とティーガーⅡは戦車のティーガーⅡに乗り込んだ。
「しかしどうする? ここは島なのだろう?」
「ああ、その通りだが」
「橋などは、あるのか?」
「知らんが、まああるだろ」
ここは無人島などではない。普通に人が住んでいるし、何なら島としてはそこそこでかい。橋の一つや二つ、沿岸を走っていればまず間違いなくあるだろう。
ティーガーⅡは海岸沿いに走り始めた。
「おお、橋だ」
「橋だな」
ちょっと進むと橋はすぐに見えた。それも割合近くに。十分もあれば着きそうである。
しかしその時ティーガーⅡは急に動きを止めた。慣性によって体が少し前のめりになる。
「おい、どうした?」
「敵襲だ」
「は?」
「敵襲だ。周囲に複数の反応、前とは違い歩兵型だ」
これは面倒なことになった。戦車と歩兵では相性が悪かろう。
「作戦はあるのか?」
「ふむ…… 適当に機関銃弾をばらまく、とか」
「ちゃんと考えてくれ……」
確かに戦車には機関銃もついている。主砲の横に付いていて、主砲と同じ方向を狙うものだ。
機関銃は決して弱い訳ではない。とは言え、それだけで敵歩兵を捌ききれるかと言うと、そんなことはない。
こんな時こそ歩兵の出番である。
「降りるぞ」
「降りる?私の中なら安全だぞ」
「敵に取りつかれたら終わるぞ」
「そ、そうなのか?」
そのくらいは分かってくれよ……
「ああ。だから、降車戦闘だ。お前も銃はあるだろう?」
「ああ、ある」
前にフィーアに言われたように、ティーガーⅡは手製の自動小銃を常備している。俺は無論、九九式狙擊銃と五二年式無反動拳銃を常備している。
ティーガーⅡと俺はさっと戦車から降り、海を背にして戦車の後ろに入った。
「で、敵はどこから来るんだ?」
「我々の背後を除く三方向だ」
「囲まれてるじゃないか」
まあそのくらいの方が面白味はある。それに三方となればちょうど数が合う。
「正面をお前の本体の同軸機銃、右を俺、左をお前が担当だ。いいな?」
「分かった」
戦車の横から銃口を出し、敵に備える。ティーガーⅡも同様だ。
しかし、ティーガーⅡってのは大き過ぎる、いや、高過ぎる。車体の上に銃口を付き出して戦うのがほぼ不可能なのである。
まあ近代戦車が逆に低過ぎるという評論家もいるんだが。
「やっぱりでかいよな、お前」
「それは、誉め言葉、か?」
「俺も分からん」
思わず声に出してしまったが、訳が分からん発言である。また素直な感想ではあるんだが、これは果たして誉め言葉なのだろうか?
でかい方がいいのか小型化した方がいいのか、俺には分からん。
「ライ、敵が来るぞ」
「了解だ」
狙撃銃を構える。まあ立って使うもんじゃないんだが。
「見えた……」
アイギスの歩兵型、数は2、ゆっくりと近づいてくる。俺の視界に入るのはそれだけだ。
俺は慎重に狙いを定め、そして引き金を引いた。
まずは命中。流石はAÄ彈(對アイギス彈)。敵の脳天に綺麗な風穴が一つ。
そしてそれが嚆矢となり、ティーガーⅡも攻撃を開始した。
「う、うるせえ……」
機関銃の銃声を全ての音を掻き消すものだ。少なくともティーガーⅡが持ってる自動小銃の銃声はまるで聞こえない。
俺の銃は鎖閂式小銃だ。引き金を引く度に手動で排莢、装填をしなくてはならない。その間はティーガーⅡに隠れる。
すると目の前で敵を打ち付ける甲高い音が連続して響き渡った。アイギスの方が撃ってきたのだろう。
だが、その音を聞くに、ティーガーⅡの装甲に効果はないようである。これなら安心して戦える。
俺は次弾を装填し終えると、身を少しばかり乗り出し、再び狙いを構える。
そして撃った弾はこれまた命中。取り敢えず視界から敵は一掃した。
「ティーガーⅡ、お前の方は?」
「敵は殲滅した。これで終わりだ」
「怪我はないか?」
「怪我?私が傷つくとでも思ったか?」
「俺の取り越し苦労か」
ティーガーⅡが無事で何より。それなら問題はない。
「なあ、ライ、こいつらが本気だと思うか?」
確かに思わなくもない。
アイギスたるティーガーⅡが味方とは言え、アイギスがこんなにも弱いものだろうか?
「本気じゃない公算の方が大きいと思うが」
「ああ。これは恐らく私達の力を調べに来ただけだ」
「やはり俺たちは誰かにストーカーされてると?」
「そうかもしれん」
小手調べの次に来るのは本命。なればやはりここからさっさと離れた方がいい。
「次へ進むぞ」
「ああ、そうした方が良さそうだ」
俺とティーガーⅡは再び九州へと渡る橋に向けて走り出した。




