03 戦いの前(1)
「ウル、街の外で何かあったみたいだ」
「外?」
「うん、よく燃えているよ」
「ゼムが新しい魔具を作っていると言っていたな」
何が起きているのかと火の手の上がった畑の方に行くと、その辺りが燃えて真っ黒になっている。
「セルト!」
大丈夫と言う様に、セルトが片手を上げて合図しているので、延焼して被害が広がる事はない。
「ゼム、今度は何をしたんだ?」
「上手くいくと、思ったんじゃがな」
「なんだ、広い範囲を攻撃する魔具でも作りたいのか?」
「戦争するなら必要じゃろう?」
「人を殺す道具は必要ない」
「戦争なら仕方なかろうて」
「僕は他国の土地を奪うつもりは無いからね、来た奴らが帰ってくれればいいよ」
「帰っても、またやって来るじゃろう」
「痛い思いをすれば、嫌になるさ」
「兵を失った方が、痛い思いをするのでは無いのか?」
「何百、何千失おうと他人の痛みなど、すくに忘れるよ。それより、何千、何百が持つ嫌な記憶の方が、役に立つものだからね」
それに兵を失って諦めるようなら、始めからエルメニアに攻め入る事はない。
「それに、死体が出来たら処理に困る。焼くか埋めるかしないと後が大変だし、そんな面倒な事はしたくないね」
「なら、どうするつもりじゃ」
「鉄だけを熱くしたいね」
「鉄?」
「奴らの武具は鉄で出来ているからね、せっかくここまで持って来てくれるのだから、武具は置いて帰って貰いたい」
ウエストリアを荒すアッタリア人と戦う事は仕方ないが、利益が無くてはこんな争いをする意味がない。
是非、彼等には土産を残して帰って頂きたい。
「それは面白そうじゃの」
「そうだろう? ゼムにはその方法を考えて欲しい」
ぶつぶつ言いながらゼムが街の方に戻って行くと、今度はライオネルが話かけてくる。
「貴方の考えは分かりましたが、この土地はどうするのです?」
「確か前に畑は焼いた方がよく実る。と言っていたのがいただろう?」
「あゝ、そう言えば」
「しばらくソイツにこの土地は任せるよ、同じ広さの焼けてない土地も一緒に使える様にすればいい、ちゃんと結果を残せと伝えておけよ」
「分かりました」
「ライオネル、それより王都の方は大丈夫かい?」
「まだ知られていないようですが、、、本当に知らせないつもりなのですか?」
「面倒な奴らが、来る方が困るね」
「そうかも知れませんが」
「僕は若造だからね、王都の人間は僕の話を聞く事はしないだろう。他人の面倒までみるのはごめんだよ」
「分かりました」
「サウストリアのマティス家の方はどうなっている?」
「動きがあるように見えませんが、、、」
マティス家は、サウストリアの軍事を担当している家で、ウエストリア家とあまり仲が良くない。
同じサウストリアでもティジィスやスーと違い、海軍では無く内陸を守る家なので、ウエストリア家が強い力を持つ事を嫌がる。
今回、ダメルに手を貸してアッタリアを焚きつけたのは、マティス家のようだった。
「つまり無理せず様子見という事か」
「そうなりますね」
貴族は他人の領地に兵を入れる事は出来ないが、救援のためと大義名分が出来ればそれが可能になる。
また領主にしても、勝手に領地の中に入られても、外敵から国を守るためだと言われ、実際に手を借りたとなれば、例え約定が無くても、それなりの報酬を支払う必要が生じる。
だがそれはあくまでこちらが手を借りた場合に過ぎない。
兵を進め、その必要が無かったとなれば、逆に領地を荒らしたと被害を申し立てられても仕方がない。
「王都の連中が、マティスに踊らされないといいんだけどね」
「妙な噂が回らないようにしていますが、アッタリアの方に人手が取られていますので、、、」
「それは仕方がないね、影でも流石に彼らの中に紛れるのは難しい」
アッタリア人とエルメニア人では肌や髪の色が全く違う。
アッタリアにエルメニアの商人が多く入り込んでいるので、それほど違和感が無いが、それも内陸にある水場にいる部族には通じなくなる。
「それに彼らが動く時期だけは間違えたくないからね」
「王都の連中がこちらに来た場合はどうされますか?」
「その相手は、ダリウスにお願いしようかな。商人達が誰を相手にどんな商売をして貰っても、僕には関係ないからね」




