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エルメニア物語 - 黄金の狼は退屈な日常を満喫する -  作者: 小豆こまめ
第七章 アッタリア戦
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03 戦いの前(1)

「ウル、街の外で何かあったみたいだ」

「外?」

「うん、よく燃えているよ」

「ゼムが新しい魔具を作っていると言っていたな」


 何が起きているのかと火の手の上がった畑の方に行くと、その辺りが燃えて真っ黒になっている。


「セルト!」


 大丈夫と言う様に、セルトが片手を上げて合図しているので、延焼して被害が広がる事はない。


「ゼム、今度は何をしたんだ?」

「上手くいくと、思ったんじゃがな」

「なんだ、広い範囲を攻撃する魔具でも作りたいのか?」


「戦争するなら必要じゃろう?」

「人を殺す道具は必要ない」


「戦争なら仕方なかろうて」

「僕は他国の土地を奪うつもりは無いからね、来た奴らが帰ってくれればいいよ」

「帰っても、またやって来るじゃろう」


「痛い思いをすれば、嫌になるさ」

「兵を失った方が、痛い思いをするのでは無いのか?」

「何百、何千失おうと他人の痛みなど、すくに忘れるよ。それより、何千、何百が持つ嫌な記憶の方が、役に立つものだからね」


 それに兵を失って諦めるようなら、始めからエルメニアに攻め入る事はない。


「それに、死体が出来たら処理に困る。焼くか埋めるかしないと後が大変だし、そんな面倒な事はしたくないね」

「なら、どうするつもりじゃ」

「鉄だけを熱くしたいね」


「鉄?」

「奴らの武具は鉄で出来ているからね、せっかくここまで持って来てくれるのだから、武具は置いて帰って貰いたい」


 ウエストリアを荒すアッタリア人と戦う事は仕方ないが、利益が無くてはこんな争いをする意味がない。

 是非、彼等には土産を残して帰って頂きたい。


「それは面白そうじゃの」

「そうだろう? ゼムにはその方法を考えて欲しい」


 ぶつぶつ言いながらゼムが街の方に戻って行くと、今度はライオネルが話かけてくる。


「貴方の考えは分かりましたが、この土地はどうするのです?」

「確か前に畑は焼いた方がよく実る。と言っていたのがいただろう?」

「あゝ、そう言えば」


「しばらくソイツにこの土地は任せるよ、同じ広さの焼けてない土地も一緒に使える様にすればいい、ちゃんと結果を残せと伝えておけよ」

「分かりました」


「ライオネル、それより王都の方は大丈夫かい?」

「まだ知られていないようですが、、、本当に知らせないつもりなのですか?」

「面倒な奴らが、来る方が困るね」


「そうかも知れませんが」

「僕は若造だからね、王都の人間は僕の話を聞く事はしないだろう。他人の面倒までみるのはごめんだよ」

「分かりました」


「サウストリアのマティス家の方はどうなっている?」

「動きがあるように見えませんが、、、」


 マティス家は、サウストリアの軍事を担当している家で、ウエストリア家とあまり仲が良くない。

 同じサウストリアでもティジィスやスーと違い、海軍では無く内陸を守る家なので、ウエストリア家が強い力を持つ事を嫌がる。


 今回、ダメルに手を貸してアッタリアを焚きつけたのは、マティス家のようだった。


「つまり無理せず様子見という事か」

「そうなりますね」


 貴族は他人の領地に兵を入れる事は出来ないが、救援のためと大義名分が出来ればそれが可能になる。


 また領主にしても、勝手に領地の中に入られても、外敵から国を守るためだと言われ、実際に手を借りたとなれば、例え約定が無くても、それなりの報酬を支払う必要が生じる。


 だがそれはあくまでこちらが手を借りた場合に過ぎない。

 兵を進め、その必要が無かったとなれば、逆に領地を荒らしたと被害を申し立てられても仕方がない。


「王都の連中が、マティスに踊らされないといいんだけどね」

「妙な噂が回らないようにしていますが、アッタリアの方に人手が取られていますので、、、」

「それは仕方がないね、影でも流石に彼らの中に紛れるのは難しい」


 アッタリア人とエルメニア人では肌や髪の色が全く違う。

 アッタリアにエルメニアの商人が多く入り込んでいるので、それほど違和感が無いが、それも内陸にある水場にいる部族には通じなくなる。


「それに彼らが動く時期(とき)だけは間違えたくないからね」

「王都の連中がこちらに来た場合はどうされますか?」

「その相手は、ダリウスにお願いしようかな。商人達が誰を相手にどんな商売をして貰っても、僕には関係ないからね」

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