↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルメニア物語 - 黄金の狼は退屈な日常を満喫する -  作者: 小豆こまめ
第四章 ミリオネア
38/73

04 船の上(2)

「なぁ、どうして見えないふりをしているんだ?」


 ウルフレッドが、船の“精霊使い”に後ろから話しかける。


「何の話ですか?」


 “精霊使い”が、声のした方に振り向いて答える。


「やっぱり、お前、見えてるだろ?」

「何を言っているんです?」


「俺の良く知っているヤツが、お前と同じだったんだよなぁ。お前、ソイツと同じなんだよ、見えている者の動きなんだよなぁ」

「それが貴方にとって、何か不都合でも?」


「いや、なぜ見えないふりをしているのかと思ってさ」

「、、、、、、」


 こちらが何も答えないと、それで興味を失ったのか、いきなり声をかけた男は視線を外して隣にいた少年と話始める。


 嫌な相手だった。


 瞳を隠している事にそれほど意味は無い。

 特にミリオネアの中心から外れた島々では、自分を何者なのかと考える者などいないだろう。


 ミリオネアの人々はおおらかで良く働き、人生を楽しむ事を良く知っている。

 他人の容姿を気にかけるより、のんびりとした自分達の時間を楽しむ事を大切にしている。


 瞳が見えない事で困っているならともかく、不自由していないのなら、その理由など気にしない。


 瞳を閉じているのは、ヒューイ自身の問題だった。


 精霊は、強い人の意志に弱い。

 そして人と目を合わせると言う事は、彼らの意志と真っ直ぐに向き合う必要がある。


 ミリオネアの人々にとって、精霊は自分達より上位にいる存在なので、対価を支払い精霊に願いを叶えて貰う。


 確かに気まぐれな精霊達の気を引くには、彼らの好きなものを与える事は間違っていない。

 人々の願いが聞こえ、贈り物が気に入れば精霊達は喜んで手を貸してくれるだろう。


 だが精霊を最も強く動かすのは、贈り物では無く強い意志や想いの力だ。

 ヒューイは、それらに引きずられる事を嫌い、人と目を合わせないために瞳を閉じている。


 それにヒューイは、強い意志を持つ人が嫌いだった。


 あの時もそうだった。

 かつてエルメニアから来た人は、ヒューイの大切な人を奪って行った。


 彼女は、時々こちらの世界に来ては、人に紛れて遊んでいた。


 だがその人は、いきなり彼女の目の前に現れたかと思えば、あっという間に彼女の心を奪い、遠くに連れ去ってしまった。


 彼女が精霊である事も、同じ時を生きられない事も、彼の意志を変える事は無く、彼女も側にいる事を望んだ。

 結局、父の怒りを買い、彼と共に生きる事を選んだ人は、その力を無くし人として生涯を終えてしまった。


 彼女が幸せだった事は分かっているし、その選択を責めるつもりは無いが、、、彼女を奪った人達と関わりを持ちたく無い事を見透かされた気がした。



 本当に嫌な男だ。

 彼の近くにいると、あの男を思い出す。


 自分に興味を無くした人から離れながら、しばらく嫌な思いをすればいいと、周囲の精霊達に彼に力を貸さないよう伝えておく。


 こうしておけば、ミリオネアに着いても彼は精霊の力を使う事が出来ない。

 もちろん自分の魔力は使えるが、ミリオネアに魔道具のような物は無い。


 魔力は単なる力でしかない。

 精霊達の力とは違い、魔石や魔道具を使う事で、始めて外の世界に影響を及ぼす事が出来る。


 それが無ければ、魔力など何の意味も無く、腕力の方がずっと他者に影響を与えるだろう。


 また彼のように強い意思を持っていても、それを表に出さない限り精霊達を惹きつける事は出来ない。

 それには欲や執着のようなものが必要で、彼からはそれが感じられない。


 ミリオネアで精霊達が力を貸さなかったとしても、彼が強い怒りを感じたりするとは思えない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。