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エルメニア物語 - 黄金の狼は退屈な日常を満喫する -  作者: 小豆こまめ
第二章 ライオネル
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02 イリノアの街へ

 川でしばらく遊んでいたかと思えば、取った魚を川岸で焼き、森から果物などを集めて食べ始める。


「お前も食べろ」

「いつもこうして食事をしていたのですか?」

「いつもでは無い」


 教える気は無いらしいが、それでも少しは気を許しているのだろう。


「お前、このまま付いて来るつもりなら、俺の名前を呼ぶなよ」

「どう言う意味です」

「来れば分かる」


 また指笛で馬を呼んで、何処かに向かって走って行く。


 どう言う事だろう? 名前を呼ばなくても、かれの瞳の色を見れば誰であるかなど一目瞭然だ。

 リグの黒い瞳ならともかく緋色の瞳を持つ者は、エルメニア中を探しても一人しかいない。


 そんな事を考えながら馬を走らせるが、ここでも彼らの速さに驚かされる。

 野生馬に馬具が付いている訳もなく、鞍も鐙も無いのに平気で走らせている。


 森の落とし子と呼ばれる者は、フレリア様を始めとても優秀な者が多いが、彼もそれに引けを取らないくらいの速さで馬を駆っている。


 そのままイリノアの街の近くまで来て馬を降りると、街を囲む壁の方に近づいて行く。


「お前は、門から来いよ」


 そう言うと、リグと二人で街の壁を登り街の中に消えていく。

 また巻かれたのかと街門から中に入ると、中央の広場で街の子ども達と話ながら二人が待っていた。


 リグに変化は無かったが、彼の目には布が巻かれていて、瞳の色どころか目も見えなくなっている。


 周りの子ども達が平気な顔をしている所を見ると、何時もの事らしく、彼らがどこにいたのかやっと知る事が出来た。


 屋敷の周りでも彼らの行動には驚かされたが、ここでも彼らは無茶苦茶だった。

 子ども達と遊んでいるかと思えば、商店の下働きから、使いっ走りまでしたかと思えば、賭け場にいる男達と一緒に賭け事までやっている。


 それも手慣れもので、何度も負けているらしい男に話しかけられる。


「お前、どうして負けないんだ」

「勝とうとしてないからさ」

「俺たちが良い手を持っているのが、なんで分かる」


「教えてもいいが、、、本当に良いのか?」

「かまわん、教えろ」


 一番大柄な男がニヤニヤしているのを見ると、聞けば彼に負けないだろうと思っているに違いない。


「まず、お前は良い手を持っていると、サイコロを投げる前に必ず『ヨシ!』と言だろう?

 それから目の前の奴は、声の調子で、だいたいどんな札を持っているか分かるし、右のは、ここぞと言う時に投げるサイコロの音が違う」


「分かるのか?」

「俺は耳だけだからな」

「へぇ〜、そんな事まで分かるもんなのかぁ」


 三人の男達が感心していると、最初に話していた大柄な男が大声でわめき出す。


「おい、ちょっと待て。それだと俺の時だけ誰にでも分かるって事じゃないか」

「だから聞いただろ? いいのかって」


「そりぁない! 今度は俺が負けるだろう、何とかしろよ」

「簡単さ、いつも声をかけてサイコロを投げればいい」


「そうか、ヨシ! これからはお前にも負けないからな」

「一番分かりやすいのを教えただけだ、俺は困らん」


「全く、可愛げのないガキだなぁ。そうだ、今度、ボダムともやってみろよ、お前でも負けるかも知れないぞ」

「アレとはやらん。」

「やっぱり強い奴とは出来ないか」


「ゲームはルールに(のっと)ってするから面白い、ルールを守れないものは嫌いだ」

「えっ、イカサマしてるって事か?」

「何時もじゃない、だが負けそうになるとルールを破る」

「ちぇ、そう言う事かよ」

「腹が立つなぁ」


ぶつぶつ文句を言っている男達に彼が話す。


「喧嘩するなよ、アイツは魔具を持ってる、怪我をするぞ」

「だが気分が悪い」

「相手にしなければいい、それだけの話だ」


 そう言って得た賭け金の中から、大きめの銅貨を三つ取り出す。


「これを貰うから、後は三人で分けろよ」

「それだけでいいのか?」

「これでいい。程々しろよ、元々お前達の金だ、儲けたと思うなよ」


 そうして賭け場から離れる。


 領主の息子が何をしているのかと思うが、ここでは声を荒げる事も出来ない。


 おまけに賭け場や商店で、腹が空いたら声をかけろと言われている所をみると、時にはこの辺りで食事を済ませているらしいと分かる。


 呆れてそのまま付いて歩くと、今度は手に入れた銅貨で買った茶葉を持って、図書館らしき所に入って行く。


 建物に入ると管理人らしき人にその茶葉を渡し、今度はそこで本を読み始める。

 ウエストリアの屋敷にもそれなりに蔵書があるので、なぜわざわざここまで来ているかと思えば、


「家にはもう読みたいものが無い」


 そう平然と言い放たれた。

 屋敷の書庫は、まだ自分でも読めていない様な本があるくらいの物だったが、それを全て読んでしまっていると言う事なのだろうか? 


 体術や剣術にしても、屋敷の執事からは、基本的な形を教えているだけだと聞いていた。


 確かに剣を使った試合であれば、体格差のある自分が有利であろうと思えたが、これが只の喧嘩であれば負けるのでは無いかと彼らを見ていると思う時がある。


 一日中動いていられる体力や筋力。

 おまけに身軽で、ひどく感もいい。


 それが勉学でも敵わないと言う事なんだろうか?


 本当に嫌になる。

 

 "森の落とし子"は、"神様からの贈り物"と言われ、非常に能力が高いと言われている。

 その落とし子と同様かそれ以上の子どもに、自分のような凡人が必要なのだろうか?


「ライ、しばらくここにいるから好きに時間を使え、ここの事ならハゼルが良く知っているし、何でも教えてくれる」


 自分の存在価値に不安を感じてもいたが、彼はこの頃から時々行く先を伝え、問いかけをする様になった。


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