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暗黒卿の魔国譚  作者: ブロンズ
最終章:勇者一行と大陸の夜明け

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最終話:また会う日まで




「うん、角良い感じだよ。はい、じゃあ足もふきふきしようね」

「ギャース」

「まず右足ね。足上げてーー、ぁ……ここ? ここが良いの? アポリオン」

「クルルルッ」

「だよね。自分じゃ掻きづらいだろうし……」



 ………。



「美緒……。犬飼って良いかな、将来」

「住居と私達のお給料次第ですね」

「何なんこの二人」

「美緒ちゃん壊れた……。なに当たり前みたいに素敵な将来設計してんだ、しかも当然のように共働き」

「ってか竜の相手してて犬飼いたいとはならんでしょ、普通」

「ちな春香ちゃん、俺らは何飼う―――」

「おサルさん一人で手一杯」

「……、……? あ、俺か」



 あっちもあっちで人のこと言えないし大分行くところまで行ってる気がするけど。

 多分、僕達四人って全員が「自分が一番まとも」と思い込んでるタイプだ。

 


「今なら分かるんだ、家にいる時は決まってマイカー毎日掃除してた父さんの気持ち。ね?」

「……? ギャース―――ハグッ」

「命いらんの?」

「言語理解してたらまた頭から食われるぞ……食われてるわ」

「流石に車と一緒にするのはかわいそうだと思います」

「まえふぁふぃふぇふぇ」


「春香ちゃん」

「なんて?」

「前が見えねぇだって」


 

 真っ暗で生暖かい視界に浮かぶ、これまでの経緯。

 アポリオンの背に乗って大陸中央まで。

 魔素が薄い西側などでは主に足を使ったりして、各国を巡った。

 

 多くはこれまでのお礼だったり、これからへの釘刺しだったり。

 特に野望が強そうなモルガンさんとかその辺には丁寧に釘を指したりしておいたし、面倒な事にはならない筈だ。

 あとは、各々の武器や装備を然るべき場所に返したり預けたりとか、ね。

 (みそぎ)をしたり身辺整理をしたり……殆ど準備も整ったわけで。



「装備も店売りのものを無造作に買っただけですし、色々新鮮で良いですね、この感じ」

「さいきょーゆーしゃが使えば木の棒でも聖剣ってね! なんか本当に戻ったみたいだよねー、あたしら」

「っけどやっぱ物悲しいってか……、流石に最強装備捨てるって言った時はビビったけどな」

「人聞き悪いな」



 捨てるんじゃなく納めるんだって。

 

 ―――。

 本当に、時間が経つのがあっという間に感じて。

 三年と数か月。

 結果的に僕たちがこの世界で過ごした時間は、数値に表してしまえば本当に大したことのない年月。

 恐らく、これからの人生の長さに比べてしまえばあっという間の期間に違いなくて。

 ……なのに、あまりに大きく大切で、想像ができない、帰った後の事。


 今までずっと生きてきた世界に戻る事への不安、大切な人達ともう二度と会えないかもしれないという不安―――今生の別れになるんじゃないのかという不安。


 そんな、もの悲しさに浸っている中で。



「皆さん」



 歩んでくる、この世界で最もお世話になった人の一人。

 ここ最近の大陸あいさつ回りでも、随分と色々手を回してくれて……そろそろ彼女のお願いなら何でも聞いてあげなくちゃいけなくなってそう……、怖い所だ。



「遅くなってしまい申し訳ありませんでした」

「謝らなきゃいけないのはこっちですよ。すみません、無理言って抜け出してもらっちゃって」

「あのあのっ。でもリザさんには絶対に直接お礼言いたくて」

「私も、です」



 ものすごく忙しい筈なのに、やっぱり彼女の衣服や髪には少しの乱れもなく。

 或いはこの状況にも感情の揺らぎは少ないように見える。



「本来であれば、私があちらへ出向くのが道理だったのですが」

「忙しいのは当然ですよ。歴史上に名を遺す、大陸を真に一つにまとめた最初のギルド総長ですから」

「あたしら勇者達の恩人でもありますし」

「ふふ……。では、これも一つの役得なのでしょうね」



 セキドウにそびえるアルコンの塔、そのバルコニー。

 風を受ける中で、広がる都市風景―――遥か下の路地裏でモクモクと白煙をくもらせるロゼッタさん、こちらに気付き手を振るカレンさんやナッツバルトさんと目が合い、こちらからも手を振る。



「―――ずっと」



 今や完全に復興した街の様子を見やりながら、リザさんが言紡ぐ。



「ずっと、こうなるのではないかと思っていました。皆さんがこうして無事に元の世界へ戻る事、何か私達には想像もできない程に大きな偉業を成してしまうこと―――それを、どうしてか想像していたのです。ずっと、ずっと」

「それって……」

「ギメールで出会った時からです?」

「……、えぇ、最初から」

「聖女だからかな」

「神託でも受けてたんですかね」



 当時の僕たちなんて、自分達に出来ることはあまりに少ないと。

 巨大な陰謀を止めたり、魔族と人間の確執をどうしようとか、まして世界を救うとか……そんなの想像してすらいなかったのに。

 リザさんは、当時からソレをおぼろげながらに想像していたと言い。


 実際、通商連邦で出会ってからずっと彼女は僕たちの味方であり続けてくれた。

 ずっと、いつだって影から助けてくれた。



「戻ってきたら、真っ先に会いに来ますからね?」

「そしたら、何でも言ってください。リザさんの頼みなら何でも力になりますよー!」

「……。そうですね」



 あ、今から色々考えてる顔だ。

 流石に大陸ギルド総長ともなるとスケジュール管理は数年先まで埋まってるのかもしれない。



「皆さんに就いていただきたい仕事であれば、幾らでもあるのですが……」

「内定!?」

「御給金は弾みますよ?」

「わーーい! じゃあ、就職したくなったら……」

「待ってください春香ちゃん。業務内容もちゃんと吟味してからじゃないと……」

「ミオさんも。ギルド総長に興味などは―――」

「「ちょ」」

「飛躍しすぎでは?」

「誘拐され友の直感が告げているのです。ミオさんとハルカさんにはピッタリのお仕事があるな、と」



 まだ概念あったんだされ友。

 確かに美緒も春香も経験者だけど……トラウマ級の記憶を笑いに変えるって本人的にどうなのよ。



「あんのクソガキ許すまじ……」

「再燃してるし」

「や、だって何で許された雰囲気出してん? ダメだろアイツは」

「サーレクトに関しては我々が手綱を握る事を約束します」



 ………。

 思い出話を始め、都市を見下ろしながら話している間にもゆっくりと時間は過ぎて。



「ギャース」


「っと」

「そろそろ退屈だって」

「流石、よく訓練されていますね。魔皇国の調教技術も学べればよいのですが……」

「けど、この子は凄く特殊な部類だってあの人が言ってました」

「二百年個体ですし、結構言葉も理解してるんだろうって」



 ……アポリオンが鳴いたことで、話が区切られ。

 やがて、彼女は僕達一人一人と手を握り合い握手を交わす。



「では―――これから皆さんが歩む道。それは……きっと、私たちでは想像もできない程に長く、そして大変な道のりになるのでしょう」



 ………。



「一つの人生を歩み切り、やがて眠る。誰もがそれを経験します。誰もがやがて成し遂げるものです。全ての終わりに荷を下ろし、最後の冒険へと出ること……。ですが、それを歩み切り、その上で再び新たな人生を歩むとなると……それは、多くの人々、今の私には決して想像もできないこと……。きっと、戻ってきたあなた達は私より余程経験を積んでいるのかもしれませんね」

「リザさん……」



 言葉が詰まった。

 誰もが言わなければならないお礼を言おうとして、名残惜しさに口を閉ざしてしまった。


 けど、それだけは。

 また会う日のために、言うのだ。



「「お世話になりました!!」」

「えぇ。では―――……また、必ず」



 ………。



「あのッ、リザさん!」



 別れは終わった筈なのに、歩き去っていく彼女を呼び止めてしまう。


 けど、それで良かった。

 振り返ったリザさんの顔には僅かな陰があり、完璧超人の彼女ですらこの一時の別れを惜しんでいた事が分かったから。

 だから……。

 


「えっと―――、何だろ。最後に、旅の安全祈願とかお願いできますかね?」

「祈願……ですか?」

「ほら、聖女様の御祈り頂けるのなら凄いご利益望めそうですし」

「おん? ―――確かに?」

「アリだね」

「是非お願いできませんか?」


「……。っふふ。それは、これから迎え入れてくれる皆さんの世界の宗教と対立しませんか?」

「あ、大丈夫ですよ。あたしら日本人なんで」

「宗教欲張りセット民族なんで」

「その辺りは寛容だと思います」


「では……一人の神に仕える者として言紡がせてください」



「これから偉業を成すであろうあなた達に敬意を。これから歩むあなたの人生に―――未来に。溢れんばかりの祝福を」



「―――いってらっしゃい」




    ◇




 神様に曰く、「やろうと思えばどこでも出来る」……らしい。

 それは先生を始めとする脱法転移者……無断転移者がこの世界に来る原理と同じで、世界のひずみ自体は何処にでもできる可能性があるからだと。


 けど、それでもやはり最終的な帰還地点は教国に決まった。

 別れの場に丁度良いというのもありつつ、本質的な話としても、元々そういう力の溜まり場であり門を創造するための場所として長年在り続けた場所の方が神さま的にもやり易い……という事らしく。

 僕たちのはじまりの国であり、全ての因縁に終止符が打たれた国であり、当然に帰る国でもある場所がポイントになる事に反対する者はいなかった。


 惜しむらくは、こっち側に来れない人達との別れが先んじてしまった事だけど。


 ……。

 今日、僕たちは帰る。

 けど公には帰ったかもしれないし、まだこの世界にいるのかもしれない……そういうエンディング風に広めてもらうつもりだ。

 だから、この場にいるのはそれを広めてくれる―――そして、最後に言葉を交わしておかなきゃいけない人たち。

 この世界で生まれた若き勇者もいれば、最初の友達、或いはどうやって来れたのか疑問な程に身分の高い人もちらほら。



「皆様、ご準備は整っておりますかな?」

「あ、フィネアスさん」

「有り難うございます。あとはみんなと挨拶、くらいですね」

「到着してない人がいるらしいんで、あとちょっとだけ待ちたい所ですけど」

「―――そのようですな。ナクラ殿は特に交わすべき言葉が多いでしょうから」

「あの人は まぁ」

「遅刻するのが悪いです」

「いっつもちょっと遅いんだから!」

「ほほっ、最後まで気分屋でありましたな。彼が皆様にとって良き師であったかどうか、今更ながらに―――」

「「……………」」



 彼には話しておこうかなぁ? あの人の正体。

 最悪卒倒するかも。



「では、わたしからは手短に。リクさま。かの神器は貴方の名と共に、永遠に我らがお守りする事、六神さまとユーフォリア教皇聖下の名にかけてお約束いたします」

「お願いします―――っていうのを僕が言うのもおかしな話なんですけどね。僕も預かっただけなんで」



 オラシオンは迷宮に戻すことも考えたけど、どうしてか教国に預けるのが一番なんじゃないかと思ったんだ。

 春香とか康太とかは戻ってきたら愛剣を回収する気満々らしいけど、僕はそのまま奉納するつもり。

 やっぱり人の身には余るものだ。

 


「マ?」

「ま。只人の手に余るよ、やっぱ。外見変わっちゃうし」

「金髪緑眼になってましたよね、最近」

「それね。まぁ、良いや。どうせ向こう行けばただの人間だし。―――フィネアスさん。本当に……有り難うございました。召喚された当時、先生とフィネアスさんが最大限の配慮をしてくれたから、いきなり廃人コースが避けられた面とかはあると思うんで」

「感謝感謝です、本当に」

「どうか、お体には気を付けて」

「―――皆様。まこと……、私こそ。私こそお礼の言葉が見つからぬ程に……」



 感極まったように涙を浮かべる彼は僕達一人一人と固く握手をする。



「帰還した際は、また是非ともお顔を見せていただきたい。個人的にでも、大々的にも―――」

「「個人的になら」」



 会いには行きたいけど面倒に巻き込まれそうな場所にいる人とか多いね、どうも。

 


「個人的には、皆様には神殿教会連盟に席を置くという将来もお勧めしますが?」

「あーー」

「他の所からも内定出てるんで考えておきます」

「ふふふ、是非。……では、私ばかりが皆様を独占する訳にもいきませんので……」



 礼を一つ、やがて歩き去っていく姿。

 ……。

 どうしてか、会うたびに若干身構えてたけど。


 

「結局最後まで只のすごくえらくて凄く良い人で終わるな、フィネアスさん」

「只のはいらないでしょ」

「いやだってファンタジーのお決まり的に……」



 やっぱり黒幕でもなんでもない聖人君子だったね、あの人。

 当然、国を纏めていく以上何かしらのグレーな部分を彼は知っているし、非情な選択を取ったことだって幾たびもあるのだろう。

 けど、それでも彼が人々の幸せのために歩んでいる事を知っているし、誰よりも滅私奉公している事を知っている。


 殆ど冗談みたいなものだろうしね、今の勧誘も。

 結局最後までいつものお茶目顔だったし、浮かべてた涙も瞬間に引いたし。 

 さて。



「………なぁ、お前等」

「おぉ、よしよし!! シンク~~、兄ちゃんと離れ離れは寂しいよなーーー! てか一緒にくるか!?」

「はなせーー!」

「うわむっさ」



 一度抱きしめられたら諦めた方が良い。

 今の康太の剛腕を純粋な身体能力で抜け出せる人間種? は多分ゲオルグさんくらいだ。



「おい、疑問符付けんなリク」

 


 いや、竜人はなぁ……。



「地獄耳……。ってかよくよく口に出すよな、お前も。相手最上位だぞ?」

「ふふっ、シン君に言いたい事は一つ。絶対に無理しないでね」

「ばか。無理の一つしねえで世界救った勇者共の盟友やれるかってんだ。破暁の勇者」

「―――ははっ」



 破暁の勇者。

 または、明けの勇者。

 ここ最近、世界中で浸透しつつあるらしいその名は、歴代勇者たちと同じく僕に付けられた名前。

 伝説の聖剣をもって神たる魔物を切り伏せ、世界に新たな夜明けを齎した勇者……との事で。



「ふこうへいだーー」

「ぶー、ぶー!」

「慌てなくても帰ってくる頃には全員分呼名が決まってんだろ。てかそもそも冒険者としての二つ名あるだろ、お前等」

「別腹です」 

「あのなぁ……」



 やっぱりシン君にはツッコミが似合うよ。

 ギルド職員として、これからもその辣腕を振るって頑張ってほしいね。



「―――任せたよ。あと夜は寝る事。育たないよ」

「任せろや。喧嘩売ってんのか殴るぞ」


 

 軽口を交わし合い、拳を突き合わせる。

 ちょっと強く突き合わされたから、若干痛い……。



「リクお兄さん!!」

「コーディ」

「ボク、待ってますから! ずっと……ずっと待ってますから! 立派な大人の女性に―――わぁ!?」

「っとと」



 一杯一杯に喋ろうとしてふらりと揺れる身体を支える。

 興奮しすぎて立ち眩みしちゃったかな―――ん?



「―――えへへ。やっぱり抱きしめてくれましたね?」

「またしてやられた」



 そういうフリか。

 コーディにこれ以上大人の魅力を覚えられちゃったら、僕はどうなるのかな。 

 どうにかされないように経験積んでおかないと。



「……絶対に戻って来るよ。大好きなコーディと、皆のいる、この世界に」

「です。そうしたら一緒に陸君のお嫁さんになりましょうね? コーディちゃん」

「はいです!」



 ……美緒……、さん?



「コウタさん」

「……っす」

「私、諦めてませんからね?」

「……っす」

「絶対に康太さんを惚れさせて、骨抜きにして、そのまま春香ちゃんと一緒に頂いちゃいますからね?」

「……っす。……ん? は?」

「ずっと待ってますから。パーシュースの家が途絶えるより早く帰って来てくださいね」

「―――え、ちょっとまって……、台本と違……」

「うへへ。一緒にウエディングドレス着ようねー? フィリアちゃん!」

「はいーー! 春香ちゃんのは私が選びます! きっと妖精さんみたいに可愛くて格好良い―――」



「ふーむ、遅れて申し訳ないと思ったが、どうやらもっと遅れた方がよかったらしいな」

「……! 先生ッ」

「助け―――、……ッ!?」


「やぁ……。何だい? その……、っと。憐れむような……、ぅ」



 助けを求め目を向けた先にはゲッソリと明らかに衰弱して変わり果てた師匠の姿。

 今この瞬間にも倒れそうなほどふらふらして……。

 絞られたが比喩じゃなく、全身をぼろ雑巾みたいにねじりまわされてエキス抽出されないとこうならなくない? 凄いね魔人体。



「せ、先生……?」

「助けいります? もしかして」

「……はは。だい、じょうぶ。暫く安静に……栄養のあるもの喰ってぐっすり休んでれば……」

「それが出来なかった結果がその有様なのでは?」

「美緒ちゃん火の玉正論!」



 机上の空論って知ってるかな。

 多分暫く彼が元の元気を取り戻すことはできないだろう。



「眠らせてもらえなかったんやろなぁ……」

「この機に乗じて暫く旅でもどうですか? 先生」

「教国に宿とって湯治とかさ」

「誓約結ばされてるんだ。君たちを見送ったら全力で戻って来い……ってね。困った主様だよ。はははっ」



 本当に枯れ果てそうじゃん。



「おい野郎ども。絶対に戻ってくんだろうな?」

「勿論っス。けど戻ってきても決闘とかしないっす」

「あ?」

「ゲオルグさんも、頑張ってくださいね~~?」

「―――いんだよ、俺ァ」

「あっちの世界って面白そうだよねー、良いなー、僕も行ってみたいなー?」

「当たり前みたいにこの場にいんじゃねえよ。とっとと失せろ。ツラ見せんな」

「いーじゃーーん! 同じ八英雄の仲間だよ? ねー? ハルカおねーちゃん」

「はいはい、言ってなボクちゃん」

「辛辣ぅ! でもそれもいい!」



 未だに納得いってないんだけどね、特にロシェロさんが入ってない辺り。



「まぁまぁ~~。良いじゃないですか~~。わはー、縛るものがないって楽々で素晴らですねぇ~~」

「相も変わらず責任は取らずに美味しい所だけ。一番良い余生の過ごし方ですね、ろくでも姉上」

「セレーネはお堅すぎデース」


「……リク? 私たちはいつでもあなたのことを待っていますよ? ミオさん、ひ孫の顔もはやくみたいですね」

「善処します」

「美緒?」

「でもあっちでの方が先になるかもしれません」

「美緒さん? さっきから飛ばし過ぎじゃない?」


「勿論、同じく歴史のあるロウェナ王家の子孫との架け橋が出来ることも歓迎ですよ。ね? コーディリアさん」

「はい! セレーネ女王。こちらも亜人保護のために頑張ってお兄さんと―――」

「わーー、わーー!!」



 囲い込みが凄いッ。

 まるで主人公だ。



「えっと、セレーネ様。ちゃんと母さんに伝えますから。それで、色々と預かってきますから。ついでに父さん殴ってきますから」

「ついでで殴られるクウタおじさんに悲しき過去ぉ」

「エルフの姫様嫁さんにしてるリア充いたら俺だって殴るからな。だから一緒に殴りたい」

「目的違くないです? お義父さんとはまだ会ったことも―――」


「―――。えぇ。楽しみにしていますよ。五年など、私達にしてみればあっという間のことですから。ね? リディア」

「えぇ。それがなくとも、いつまでも待ち続けるつもりです」

 


『そろそろ開ける。そう長くは開かない』 

「……っと」

「お呼びがかかっちゃいましたね」

「んじゃあ―――次は只今の時にって事で」



 ………だね。

 この場に来れた人、諸々の都合で来れなかった人、或いは辞退した人もいる。

 彼等に会いに行くまでは、ね。


 じゃあ、最後はやっぱり。



「「―――先生!」」

「ん。私からいう事はないさ。あっちで、全力で生きてくると良い。足掻いて足掻いて、血反吐はいて……ふっ、どうせ私の方が年上だ。一生追い付けんよ諸君」

「はーいうざい」

「こーのマウントお爺さん……」


「そして、やるべき事を終えたら戻っておいで。なに、それまでは私達が何とかするさ」

「それまでに腹上死してなきゃいいんですけどね」

「ミイラですね」

「シオンさんに殺されるまでが早いかも」

「先生いなかったら僕たちがお子さんたちの導き手になってあげますからね」

「―――ホントこの勇者ら……。師匠の顔が―――」

「「ん」」



 美緒が高速生成した鏡に映った顔を全員で指す。



「……お願いしますね、先生」

「んで……その お世話になりました!!」 

「元気でいてくださいね? 居なくなってたら許しませんから、私達」

「大好きです! 師匠的な意味で! ―――んじゃぁせーのっ」



「「わーー!!」」

「うぉ!!?」



 全員で彼へ抱き着く。

 明らかに力が抜けていた彼は大きく引き摺られ、ひっくり返りつつもしっかりと抱き返してくる。



「……はは。やっぱ師匠の顔が見てみたいな」



「……っと、なっさけねぇなァ……」

「彼等らしいです」

「今ならやれそうだね。やっちゃおっか」

「あら、あら……」

「元気ですねぇ~~?」

「おじさま良いなぁ……」

「ボクたちも……」



 ………。



 これから、僕たちはあの世界へ帰る。 

 15年以上を過ごし、大切な人たちがいる世界へ。


 僕も、美緒も、康太も春香も……様々な葛藤を持って、時に衝突したり、落ち込んだりした。

 いつだったか、互いの心の奥にあったものを全力で吐露し合ったことも、ぶつけあって殴り合いの大喧嘩をしたこともある。


 だから、わかる。

 ここから始まるのは、決して楽な道のりじゃない。

 異種族や魔術、まして魔物がいないから楽なわけじゃない。

 人生はいつだって過酷なものだ。

 それこそ、この世界で経験したことと同じくらい、大変で、苦しくて……つらい事も沢山あるだろう。

 特別なんかじゃないからこそ、分かる事も分からない事もある。

 困難に直面した時、只人の僕には異能や超人的な身体能力、魔術の力なんて当然ない。


 ―――けど、大丈夫だ。

 だって、僕には命を賭けても護りたいと思い合える仲間がいて、これからも支え合って戦えるんだから。

 折れてさえいなければ、生きてさえいれば何度だって立ち上がれる……、立ち上がれたんだから。


 だから、言うんだ。

 いつも通りに、今まで通り―――旅立ちの言葉を―――大好きな世界へ、大切な人たちへ。




「……ふふっ。皆? それじゃあ―――」





「「「「いってきます!!!!」」」」











 ここまでのお付き合い……。

 ここまでのお付き合い、本当に、本当に、本当にありがとうございます、作者です。


 えぇ、タイトルの通りです。

 以上、今章今話この段階をもちまして、拙作……240万字に及ぶ大長編【暗黒卿の魔国譚】は完結とさせていただきます。

 以下はあとがきとなりますので興味ないという方はいつも通りに―――いや、今回だけは無理にでも見て行ってください、マジで。後生ですから帰らないでお願い。

 語りたい事滅茶苦茶に多くて途轍もなく長いですけど、何なら一つの本編並みに長いですけど、お願いですから。

 ほら、制作秘話とかどうでも良い話とかどうでもよくない部分とか、色々。


 ………。

 ……………。


 正直、いかがでしたか? 

 連載当初から、ずっと変わらぬスタンス……変わらぬハッピーエンドのタグ。

 間違いなく、これは私が考える最高の終わり、その一つとなりますが。

 魔王の騎士として、そして勇者たちの師としてただひたすらに歩み続けた男と、彼によって導かれやがて伝説になった勇者たちの物語……「笑いあり、スベリあり、もしかしたら感動ありの王道物語」


 これも、あらすじに記載して初期から変わらぬキーワード。

 結局魔国譚とは何ぞやというのは作者自身もよく分かってはいませんが、笑い、ありました? スベリは良かった? 感動……もしかして、あったりしました?

 あ、そうそう。

 タイトルの裏設定として、暗黒卿ってやっぱメッチャ格好良い字面ですよね!?

 これに関しては理想郷(ユートピア)の対義語である暗黒郷(ディストピア)から取った―――っていう設定を丁度いま考えたんですけどダメです?

 アルモスっていう名前も鎧……armorsから取ったとか、そういうのも丁度今しがた考えたんですけど……ダメ?

 実際の所、アルモス卿っていう呼び方は昔やってたゲームに出てくる、名前だけなんか格好良い敵モブキャラ(ざぁこ)から取ってたり……これは本当のお話。

 本人の来歴もモブキャラみたいなものなのでその辺は同じですね。


 今でこそ日曜11時の予約投稿になってますけど、この物語の第一話の投稿時間って、月曜の深夜の二時過ぎとかなんですよね、実は。

 これはただ単純に……この話って、本当に見切り発車から始まったんですよ、深夜テンションみたいな。

 子供の時分からずっと考えていたような、憧れていたような王道の物語。

 RPGみたく徐々に強くなった主人公たちが、最終的に師であり最強の存在を超えていく……どうしてか、今日日中々見ないですよね、不思議な事に。

 大いなる宿命を持った勇者と、別に運命なんか持っちゃいないけど流れで頂点に到っちゃった騎士。

 エリュ……選ばれし者

 シオン……心清き者

 

 そういう意味ではラグナとかは心清くもないですし選ばれたわけでもない、偶然も偶然の存在ですが……果たしてこれが誰のことを指していたのかは、ご想像にお任せ。


 ともかく、最初は純粋に読んでみたかっただけでした。

 大人になるにつれて世間の過酷さを知ったことで大変さとか変な悪知恵とかも入り、残酷だけど美しい、ダークなファンタジーを知りたくて、理想を求めてさまよって……。

 色々な小説投稿サイトで物語を読み漁ったりもしましたけど、結局自分が本当に求めてるような物語って中々に転がってたりしないんですよね、これが。

 だから―――じゃあ自分で作るかー、みたいな感じで筆を執っただけなんです、マジで。


 けど、ただ一つ。 

 これも幼い、本当に小さな頃。

 昔からファンタジーが大好きだった子供が、本当に大好きで発売の度に図書館で借り、わくわくと購読していた小説が長い時の果てに完結した時、感動もあったし感謝もあったけど、ほんっっっっとうに胸にぽっかりと穴が出来ちゃったんですよね。

 まだ分別も付かないくらい小さかった時で、母親に「完結しちゃった」って号泣しました。

 

 ですから、この作品が完結したことによって皆さんにはそのぽっかりとした空虚さの僅かな片鱗でも、味わえて頂けていたのであればざまあみろ―――失礼、本当に失礼。

 あの、ぽっかりとした空虚さの片鱗を覚えていただけていれば、本当にこの上ない喜びだったりもします。


 あ、その後ですか?

 何か続編が出てきてたちどころに元気になりました。

 けど、大人になるにつれて図書館、ひいては紙の書籍から離れて行ってからは、追わなくなっちゃったんですよね、これが。

 


 ―――と、いうわけで。

 空虚さを感じた、当時の私と同じ「誰か」へ、続編の告知をば。

 ほら、正直言ってしゃぶりつくせてないんですよ、世界観を。

 結局最強の冒険者って言われてた誰か出て来てないですし、最強の暗殺者って言われた最上位もでてきてねーじゃん! だし、名前だけ出てきてその後音沙汰なしのキャラ、魅力が伝わり切ってないチョイキャラ……あまりに多すぎるじゃないですか。

 まぁ、大半はこのための布石(忘れてる設定・矛盾・設定破綻も当然あり)です。

 正直連載中は勢いで書きますからね、多分、皆。

 基本的な設定は固めても、登場人物の大多数はその時の流れで決まるのは当然。

 魔皇国の貴族家とかも、イザベラやアインハルト姉妹の為に順次増やしたりとかみたいな?

 けど実は「深淵狩り」さんとかは作中に既に出てたりするんですよね、これが(絶対わかんないでしょうけど)


 ……と、話を戻し。

 続編によってその小さな穴が塞がり、当時の私のようにそれを追っている間にもっと楽しい事、人生の生きがいを沢山見つけ、それを全力で追っかけてていくまでのつなぎにしていただければ、それだけで本当に嬉しいです。

 趣味に自作小説を書く事……とかもおススメしますけどね。

 やっぱり自分が一番楽しいと思える作品を書けるのは自分なんで。

 ただ、やっぱり時間はメッチャ消費します。

 週一投稿ですら毎日コツコツやらにゃなのに、毎日投稿してる人とか頭の中どうなってるんですかね? 神なんですかね? 

 

 しかし評価とかブックマーク、感想とかもらえた時……飛びますよ。

 レビューは頭が吹き飛びます、吹き飛びました、過呼吸でした。


 ―――じゃあ、次回作を……の、前に!

 そうです、まだ続きます自分語り。

 私が作品を書くときに大切にしている俺ルールが一つに、続編物の鉄則というものがありまして。


 第一に、「前作主人公は幸せになっている事!」

 間違いないです、譲れません。

 よく小説やらアニメやらゲームやら、続き物の作品において、都合上仕方ない事ではあるのでしょうけど、前作で幸せになった主人公やヒロインが次回作で失意のどん底にいる状態で始まったりしてる事あるじゃないですか。

 私、正直あれ嫌いです。

 彼等には幸せになる権利があります。ストライキものです。

 

 第二に、「前作の主要キャラはあくまでお助け役であらねばならない!」

 これもまぁ個人的に、ですけど。

 まあ、所謂チョイ役ですかね。

 前作主人公、或いは主要キャラが続編で大活躍……勿論好き好き大好きな展開ではあるのですけど、そればっかりだとかなりもたれます、私。

 折角続編ではそこから動き始める主人公、ヒロイン、主要人物がいるんですから。

 主役はあくまで彼等なんですから。

 その手柄とか物語の核を、人気があるからって過去の英雄たちが持っていくのはナンセンス。

 大活躍しても、先達として道を示してもいい。

 けれど、気持ちよく、さっぱりとまた別の道へと歩いていく……そんな感じが好きです。



 とまあ、ゴチャゴチャ色々ほざきましたが。

 結局のところ、言いたいのは感謝の言葉と、続編の宣伝。

 まずは―――四年と九か月という長い間、拙い文章の物語(前半部は本当に酷い)に付き合って頂き誠にありがとうございました。

 感想を送ってくれた方、レビューを書いてくださった方、気持ち悪いですが名前覚えました、震えて眠ってください。

 まだまだ前途ある身、本業やちょっとしたキャリアアップ資格の勉強の傍らに常にあった趣味でしたが、ここまでの長編を完結させることが出来たのはひとえにスマホ、パソコンを手に取り? 作品を見てくださった皆様のお陰です(正直ここまで伸びるとは思ってなかった)


 そして、気になる続編。

 召喚勇者! 異世界転移者! ……と来たのですから、ファンタジーでお決まりの「アレ」がまだありませんよね? 

 そう、現地主人こ―――もとい、「異世界転生者」!!

 

 舞台は人魔決戦、伝説のはじまりから年月が経過したアウァロン世界。

 魔族と人間種、亜人をとりまく戦いが落ち着いた世界に育ち、野望を抱えた主人公―――本作に名前だけ登場した巨大国家「ジルドラード帝国」の貴族として生まれた一人の人間の物語。

 暗黒卿を始めとする六魔、そして勇者ら八英雄が救った世界ではありますが、当然に人の欲、世界の美しさと残酷さは留まる事を知りません! 


 そういうわけなので舞台は人間国家がメイン。

 今まで結構あやふやだった、「固有魔術」とか作中の終盤で魔導士団が作った適合率、魔力純度などの先進技術などが結構メインに食い込んだり食いこまなかったり。

 当然既出のキャラも多数出てきます。

 つまり……、つまり! この物語を履修頂いている皆様は、通常の10倍はお楽しみいただける物語の筈。

 幾らか進んだあたりでまたこっち読み返して頂ければもっともっと楽しい―――筈!

 

 新連載【忘却伯の勿忘草わすれなぐさ】……。

 主人公、やる時やりますしやる事もやります、新属性ヒロインも野郎どもも多数!

 今作で出てきた意外なキャラがメインキャラクターの一人だったり!?(これも絶対当たらないでしょうが)


 ……是非是非お試し。

 

 あ、あと落ち着いてきた辺りで今作の番外編とか外伝もやりたいので「このキャラもっと!」って意見は随時募集です、お気軽に。

 個人的には賢者のやってる「エルイン亭」に個性豊かなお客が訪れて色々語る「○子の部屋」みたいなショートストーリーとか良いですね。


 捲し立てましたが。

 ほら、やっぱり長期連載もしたわけですし、また同じくらい長い連載を始めようってなったら、一旦の休養期間も欲しくなって来るじゃないですか、常識的に。

 というわけなので、次回作は―――そうですね。


 来週の同じ曜日、同じ時間から始めましょー!

 取り敢えず初日で幾つかと、毎日投稿で数日……短めの第一章を駆け抜ける予定なので、読み取ばしなく、世界感と主人公の人物像を浸透させつつお試しいただければ!


 それでは皆様、また会う日まで―――まことにありがとうございました!!

 あとあと宜しければ完結記念に感想とか評価とか【レビュー】とか頂けると本当に嬉し―――。

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完結おめでとうございます。 遅ればせながら、感謝を述べさせていただきます。 今作の完結、最後まで読めた幸せと一抹の寂しさを噛み締めております。 突然の出会い、胸踊る冒険、手に汗握る戦闘、笑える日常のひ…
完結おめでとうございます。やっぱ物語はハッピーエンドじゃないとね! そして続編あるのはほんとに嬉しい。正直ラグナ周りとか帰ってきた後の勇者たちとか、むしろこれからだろみたいな部分ある。 かなりマイペー…
完結おめでとうございます!毎週月曜日の朝の密かな楽しみにさせていただきました!
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