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71/110

71:その言葉、ほんとに便利だなと思っただけですわよ

「こ、こんにちは」


 大手さんが終わり、あと二人というところで来たのは、女の子。

 被瀬ほどではないが小さいその身長は、中学生と言われても違和感を感じない程度だ。


「どうぞ、創路つくりみちさん」

「あ、あの」

「どうしましたか?」

「名字で呼ばれるの苦手で……」

「じゃあ……衣良いらさんで大丈夫ですか?」

「あ、はい……大丈夫です」


 彼女は、最後の三年生。

 創路つくりみち衣良いら

 政治家、創路つくりみち光一こういちの娘。

 同時に超能力の戦闘において名門である、杉崎第一の、しかも生徒会に所属しているという、大人からしたら末恐ろしい人だ。


 小さい身長に、目が少し隠れる程度の前髪。

 しどろもどろな口調も相まって、暗い印象を受ける。


「あと、俺には敬語は大丈夫ですよ」

「あ、えっと、私、これでいつも話しているので……」


 しかし、そんな期待の人物でも、生徒会内での実力は下から数えたほうが早い。


 詳しいことは宵から教えてもらっていないが、彼女は何やらあまりランキング戦に出ていないのに、生徒会に入ったと言うらしい。


 トリオのみに出場していて、そんなにランキングも高いわけでもないのに、生徒会。


 何かが絡んでいてもおかしくない。

 そう考えるのが妥当だろう。


「それなら、わかりました。

 今回は会長、被瀬、堂上の三人にソロで勝つ、ということですが……」


 俺はそこで宵に目配せをする。

 この人に関して、俺は宵から情報を一切もらっていない。


 なぜかは知らないが、俺がその事を宵に尋ねたら、そんなことはどうでもいいので、他の方を考えてください、と言われた。


 宵は、そこでゆっくりと口を開く。


「衣良さん、すいませんが、少しお時間をください。

 ……ムスビ、問題です。

 彼女の能力は何でしょう」


 宵はそこで、俺の方を向き、何故か俺に話しかけてきた。

 衣良さんも俺の方を向いている。


「あの、覆瀬さんは私の能力は……」

「伝えていませんわ」

「そう……ですか」


 衣良さんの言葉に、宵は端的に返す。


 そこで二人の視線が俺の方に向く。

 二人の視線を受けながら、


「多分、空間移動系の能力」

「そう思った根拠は?」

「……そうしないと、あの戦闘は成り立たないから」

「ワタクシとしては、炎を使う能力者だと思いますが?」


 あの戦闘において、初手の炎での攻撃は誰がやったのか、という疑問は残る。


 俺としては予想は大手さんだったのだが、大手さんは純粋な強化系能力者。

 石神兄弟はそれぞれ炎を出現させることはできない。

 美加久市さんの能力でもできるではあるが、それは違う。


 でも、


「炎を使うのは被瀬だと思った。

 被瀬が予めコピーする能力を『炎を出現させる能力』にすれば、あの初手は解決できる」


 もし被瀬が一つしかコピーできないなら、最後に使った転移を説明できない。


 そして同時に、被瀬がもし二つ能力をコピーできるとしても……


「そもそもの話、被瀬の能力には欠点があるだろ?」


 今まで誰も触れなかった話。

 被瀬の最強とも言える『理想の身体能力』。

 あれは、致命的な欠陥を抱えているはずだ。


「……えぇ、もちろん」


 宵は俺の言葉に、当然というように頷く。


「えっと、私は驚いたんですけど……。

 当然なんでしょうか?」


 そこで声を上げたのは、衣良さんだ。

 まぁ、この学園にいる人がわりと使える能力の人たちばかりだから理解できないだろうが、世の中には様々な能力の人がいる。


 それこそ、身体強化の能力だって、それ強化しているのだろうか? というくらいしか強化されない人はいるし、炎を出すにしても、ライターくらいの火しか出せないという人もいる。


 だから、能力それそのものに優劣がある、ということに謎はない。


 ランカーの能力だって、強いものばかりだ。


「うーん、これはランキング戦、って物自体が悪いんですけど……。

 以外に強いと思える能力ってデメリットが多いことがほとんどなんですよ」

「……そう、なんですか?」

「えぇ。

 身体能力の倍率は、強ければ強いほどその人の体に何らかの影響を与えている、という話は珍しくないですわよ」

「例えば、高倍率の身体強化能力者は筋肉が部位ごとに発達が大きく変わるから、極力能力を使わない、とかありますよ」

「でも、そんな話……」

「まぁ、なんか暗黙のルールになっていますよね。

 みんな当然のように能力を使うってこと」


 そこで俺は衣良さんにニッコリと微笑み、


「もちろん、空間転移の能力とかも制限ありますよね?

 空間転移は強い能力ですが、その分人それぞれに制限が存在する」

「……えぇ」

「でも、周りには極力言わないようにしている。

 みんなそうしているだけですよ」


 まぁ能力者が出始めて戦時投入されるときも、情報は極力出し渋る習慣があったし、その名残だとは思うけど。

 そんなことはこの人の前では言えないな、と俺は話を戻す。


「そうだそうだ。

 で、被瀬の能力の欠陥。

 それは『イメージを保ち続けないと行けない』

 あと、『身体強度の上昇率』」

「少し違いますわね。

 『心のチカラの持続力』

 『身体強度の不安定さ』

 ですわよ」

「そういうことか。

 だから被瀬は基本後ろにいたんだな」


 被瀬の能力は強いが、その分心のチカラを高速で失っていく。

 というかそれくらいのデメリットがないと強すぎる。


「俺の身体能力を出すのは……持って1秒?」

「……自分の馬鹿力を想定していっているのであれば、鼻で笑えますね」

「……0.2秒くらいか」

「えぇ」


 被瀬の心のチカラを見ることのできる目でもっと多いだろうとは思っていたが、そんなことはなかったか。


 ちなみに今の数字は、倍率制限のない身体強化能力者、というやつが俺の身体能力(一段階での全開)を再現する限界の秒数だ。


「まぁ、そうだろうとは思っていたけど……。

 で、話を戻しますよ」

「あ、はい」

「被瀬で決めるとなれば、それ以外で用意するのは俺の隙。

 しかも、いくら0.2秒も俺の身体能力を再現できるとは言え、それでできるのはせいぜい俺に必殺の一撃を食らわせること。

 ……まぁ、『俺の必殺技』を使われるとは思っていませんでしたけど」


 そこまで話して、俺は一息置き、


「それで、最初の段階は俺に隙を作ることが目的なのはわかっていましたが、最後の展開がびっくりしました。

 てっきり、衣良さんの能力は火を出す能力だと思っていたので、最後の連続転移に驚かされました」

「あ、ありがとうございます?」

「……なかなか評価しているのですわね」

「いやいや、あの作戦を考えれた時点ですごいだろ」

「……というと?」


 俺は宵の方を見ながら、


「あの戦力で、あの状況でやるとしたら、俺も同様の作戦を立てた。

 まぁ、その分全く同じ作戦に見えたから最初はがっかりしたけど」

「最初は?」


 そこで声を上げたのは、衣良さんだ。


「最初は、炎による揺動から、二年生三人……空汰さん、豪雷さん、大手さんの攻撃、そして間隔を開けずに総力戦からのどさくさに紛れて被瀬で、とも思いました。

 けれど、少しずつ違ってきた。

 位置取りの時点では後ろからが最適なはずの攻撃を、あえて正面から会長で行き、俺の警戒を逆手に取った。

 それに、炎に寄る揺動は、それ自体が揺動ではなく、そこで起こった土煙を利用して、美加久市さんの能力を展開するための作戦。

 それに最後の、炎の能力者がいると思わせての、転移系能力者と被瀬での連続転移。

 もう一回言いますが、すごいと思いましたよ」


 俺だって最強だからと胡座をかいているなんてことはない。

 あのときは死の気配を感じた。

 確かに感じたのだ。

 だから、俺は能力を使った。


 能力を使えばそんなことにはならないのだが、現に能力を使っていない時に死にかけた。


 死んでしまった、からでもやり直せるが、そもそも死ぬような場面になることは避けなければいけない。

 だから、頭の中で何回も勉強した。


「戦略としてもそうですが、しっかりと勉強させてもらいました。

 今度は完璧に対応してみせますよ」


 俺の自信有りげな言葉に、やれやれと宵はため息を付く。


「ムスビはこれだから嫌なのですよ。

 強いのに、努力を怠らない。

 しっかりと勉強と対策を行う。

 だから、強いのですからね」

「……負けたら死ぬ、ってところにいたからそうならざるを得なかったんだよ」


 その言葉に苦笑いで対応する。

 ふと、衣良さんのほうが気になって見てみると、そこには鼻息を荒げた衣良さんの姿があった。


「ちなみに、今回の作戦の殆どは衣良さんが考えたものですのよ」

「え、マジか」

「本当ですのよ。

 大部分だけではなく、細部の至るところまで衣良さんが関わっています」

「す、すごいです!」

「えっ?」


 俺が宵の言葉に素直に感動していると、衣良さんが俺のことを褒めてくれた。


「もしかしたら戦略とか考えない人なのかな、とか考えていたんですけど、そこまで言われるとさすがというほかありません!」

「……なんかキャラ違くないか?」

「彼女、ランキング戦の、それも戦術マニアらしいですのよ」


 耳打ちで知らせてくれた情報に、俺は柊の姿を思い出す。


「ちなみに、柊さんとは直ぐに仲が良くなりましたわね」

「やっぱり」

「そ、それで、一つお聞きしたいことがあるんですけど!」

「え、あ、はい、なんですか?」


 衣良さんは興奮冷めやらぬ様子で、俺に質問をしてくる。


「あの戦い、覆瀬さん的には私達は何点ですか?」

「あー……それは……」

「……どうしましたか?」


 少し言葉が詰まる。

 言いづらい。

 こんなに楽しそうにしている人に、こんなことは言いたくないし、かといって嘘を言うのも気が引けるし……。


「ストレートに話しても大丈夫ですわよ」

「……いいのか?」

「だ、大丈夫ですっ……」


 衣良さんも、俺の雰囲気を見て何かを察したのか、覚悟をした表情になる。


「えっと、もし、ですよ。

 もし、今回のメンツで、あの時の戦闘能力で戦いを組むのだとして、結果を求めるのだとすれば……20点かと」

「……中々厳しい点数をつけますわね」

「……理由を、き、聞いてもいいでしょうか」


 あからさまにテンションが下がっている衣良さんに俺は良心が痛むのを感じる。

 俺は、その言葉に短く済むように、言葉を選びながら話す。


「そもそもとして、被瀬の攻撃で倒せるという確証がない。

 俺の事を考えて、一段階しか使えない状態であれば、確かに可能性としては在りましたが、それでも拙い。

 それに、各々の能力をしっかりと使えていない。

 そして、みんなで時間を使って消耗戦を仕掛けたなら、なんで最後までそうしないのかがちょっと……」

「……痛い話です」

「衣良さん、別に気にしなくてもいいですから。

 無体におけるムスビは、個人最強としての側面と、軍師としての側面がありますの」


 無体では、基本的に戦闘となると俺が指揮を執る。

 それは、俺が強いからとかではなく、俺が一番みんなの力を理解できるからだ。


 普段戦っている俺だからこそ、やれるラインを理解しているし、絶対出せる結果を把握している。


「いつもいつも交渉の場には立たされますが、ムスビが指揮を執り始めると、驚かれますの」

「いつもいつも『荷物持ち風情が何を偉そうに!』とか『こんな小さな子供に何ができると言うんだ!』とか言われますよ」

「……そう、ですか」


 衣良さんは露骨に落ち込んでいる。

 その様子に、俺は一つ言うことを思い出し、


「あ、でも、一つだけ、作戦として最高な部分は押さえていました。

 20点はここで上げてます」

「……なんですか?」

「誰もがこれでできると信じていところです。

 それだけの説得力を持つまで、かなり勉強されたんですね」


 衣良さんは、その言葉に少し微笑んで、


「ありがとうございます」


 そう言ってくれた。


「でもまぁ、よくも能力を使った分際でそんな事を言えますわね」

「うっ」

「被瀬さんの攻撃で倒せる確証って……倒されそうになっていたムスビがそれを言うのですね」

「あぁ……」

「挙句の果てには信じさせることができていたから20点って……あなたはいつも人にできなさそうなことをオーダーするくせによく言いますわね」

「それは違うだろぉ?!

 俺はみんなの能力を鑑みて戦略を組み立てているの!

 別にみんなが気合を入れればできる程度のクソみたいな作戦とか立ててないでしょ?!」


 ふーん、視線を向けられるが、それには屈しない。

 一応無体の作戦成功率はほぼ100%を記録している。


「はぁ……。

 そろそろ本題に戻りますが、衣良さんに関してはおそらく自分で考えられるとは思います。

 なので、ここで少し質問を受け付けるだけです」

「え?

 なんかアドバイスとかないの?」

「衣良さんには、これが一番丁度いいと思っています。

 恐らく、ここにもいくつかの案を持ってきていると思いますし」


 その言葉に、衣良さんは肩を揺らす。

 どうやら図星らしい。


「それでは、教えて頂きますか?」


 衣良さんは先程とは違って、少しおどおどした口調で、


「で、では、私が考えているものを……。

 まず、能力に関してですが、私の能力はデメリットが大きいです」


 空間転移。

 それは前にも転移系能力者は重宝される、と話したが、誰もがそんなに空間転移をできるなら、世の中はかなりの進化を遂げていただろう。


 しかし先ほど話題に上がったように、そうできない。


「私の能力は、手で触れないといけない、というものと、インターバル2分、更には転移重量は私が背負える程度」

「結構軽めですね」


 この程度でも転移のデメリットとしては軽い。

 インターバル二分が少し重いが、距離に関してのデメリットがない……いや、心のチカラの関係で限度はあるが、そこに関しての制限がないのは救いだ。


「でも、これではソロに出るためにはキツイです。

 ソロの戦闘時間は平均2分。

 私の能力で打てるのは、一回のみ。

 しかも一度使ってしまえば、それ以降は純粋な身体能力での戦い」


 ちなみに、古道さんのデメリットは、触れているもの、見えるもの、それと細々とした制限がある。

 だから最強と言われるのだが、彼の最強たる所以はそこではない。


「だから、身体能力を上げるかと言われれば、それでも茜ちゃんと被瀬さんに勝つのは難しい。

 だから、それを考えるとできるのは二つ」


 そこで、衣良さんの方に意識を戻す。

 衣良さんは、俺らのことを見て、


「まずは、能力に寄る攻撃。

 転移の能力で目一杯上空に転移させて、落下死を狙う。

 正直、ミスをするともしかしたら殺しちゃうかも知れないし、あまり喜ばれる方法じゃないと思うけど……」


 それは、俺も考えた。

 すぐに思いつくあたりとしてはそれが一番有効であると考えている。

 というかそれ以外に思いつくのか、と思っていたが、


「次のは、覆瀬さんが使っている、『心のチカラ』による身体能力強化。

 転移はあくまでサブプランにして、これでなるべく戦えるようにする」


 それは答えづらいことを言ってきた。


「きっと、これに関しては覆瀬くんの能力が絡んでいるし、教えてくれないってことはきっと深奥に近いことなのかも知れないけど……。

 これを私が覚えるだけで、ぐんと勝利は近くなる」


 確かに、現実問題心のチカラに寄る強化は、生徒でもできる。

 だけど、


「それに関しては、不可能、としか言いようがありません」

「……なんでですか?」

「心のチカラが、圧倒的に足りないです」

「足りない?」

「はい。

 俺のこの心のチカラによる強化は、いわば超絶力押しです。

 本来なら現実に作用するはずのないものを大量に集めて、なんとか強化にしている。

 俺が、俺の体が、人間離れしているからこそできる芸当です」

「ムスビの体は、人間のものより遥かに進化しています。

 普通の人の心のチカラの送料を1とするなら、ムスビのは……」

「最後に測ったときは、281人分。

 それが俺の保有している心のチカラの総量です」


 衣良さんは、俺の言葉に落ち込み、


「そう……ですか……」

「そんな事しなくても、良いじゃないですか」


 そこで声を出したのは、宵だった。


「そもそも最初の案の時点で十分だったのですよ。

 それをどこまでも突き詰める。

 それで、大丈夫ですよ」

「それで、大丈夫でしょうか」


 俺は、衣良さんの様子に、気づく。

 そうか、この人は、


「それだけは、誰にも負けないように、頑張るんですよ。

 これだけは、負ける人がいたら行けない。

 そう思ってやるんですよ」

「……でも」

「それをやりきったのが、無体、という人たちなんですよ」


 俺の言葉に、衣良さんは少し困惑している。


「ムスビの言いたいことはわかりますが、それでは伝わりませんよ」

「あ、確かに」


 そこまで話して、そこに気づいた。


「えっと、無体の人たちは、もれなく必殺技を持っているんですよ。

 必殺技は、必ず殺す技、ですよね?

 だから、無体ではそれを必ず持つように言っているんですよ」

「現にワタクシも、ありますわよ」

「人によっては、何個も必殺技を持っている人もいますけど、俺の場合は、一つです」

「あれですか?」

「そうです、あれです」


 衣良さんが手刀のマネをしたので、俺もそれをする。


「あれは本当に練習してますよ。

 ほんと、あれで倒せない人がいると思うと、本当に悔しいし、腹が立ちます」

「い、いるんですか?」

「今はもう殆どいませんけど、昔は結構いましたよ」


 衣良さんは、俺の方を見て、


「今からでも、できますかね?」

「逆に今すぐにでも作りましょう!

 つかそんだけ強い能力だし、すぐにでもできますよ!」


 俺の言葉に、衣良さんは少し驚きながらも、


「そう、ですね。

 やってみます」


 ぐっと、拳を握った。



☆☆☆☆☆



「まさかこんなことになるとは思ってもいなかったですわ」

「そうか?

 ああいうタイプこそ必殺技だろ」

「そういう話ではありませんよ」


 衣良さんが出ていって、残った宵は頭を抱えていた。

 俺はその様子に疑問を覚えながらも、


「必殺技、宵は嫌いだよな」

「……ワタクシの技は一番弱いんですもの」

「……別にそんなことはないと思うけど」

「みなさんを殺すことができないのは自信を無くしますよ」

「まぁ……確かにそうだけど……別に俺らを殺すための技ではないだろ?」

「そういうことではありません」


 宵は一人だけ、無体の中でも必殺技が多い。

 そのため、俺も把握していない物があるから、作戦を立てる時に少し面倒だったりする。


「で、良いのですか?」

「良いって?」

「衣良さんのことです」

「何が?」

「必殺技、できない可能性もありますわよ」

「それはないかな」

「……どうしてですの?」


 俺は宵の質問に、自信をもって、


「勘」

「はぁ?」

「衣良さんは、作れる人だよ」

「……そうですか」

「なんだよ、信じてないのかよ」

「いや、その言葉、ほんとに便利だなと思っただけですわよ」


 宵のため息は、いつもの聞き慣れたため息だった。

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