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49:流石に気づくだろ、あの不自然な間は

『どういうことですの?』

「……なんか言ったか?」


 お見舞いがてらにみんなと会ったその日の夜。


 解散した俺は自宅に帰ると、宵から連絡があった。

 家に帰って寝転がった状態で電話に出る。


 宵の一言目に、なんとなく嫌な予感がして聞いてみるが、


『別に何も話してないですわ』

「というかなんて言われたんだ?」

『大体今日の話は聞きましたわ』


 連絡をしたのは被瀬ではなく、柊らしい。

 その事に驚きながらも、


「宵的には、どう思う?」

『ワタクシ的にはって……過去を話すことを言っているんですの?』

「そうだよ。

 仮にも俺は、普通からかけ離れているから、話すだけでも今後の人生に関わっちゃうかもしれない」


 これでもいろいろ考えてはいるのだ。

 正直、『ウィクトゥス』に関しても話すのは嫌だった。

 あれを知ることは『無体』に少なからず近づいてしまう。


『まぁ、わからなくはないですわ。

 仮にもワタクシたちの存在は公にしていいものではない。

 それに『ランキング戦』でうまく隠している日本だからこそ、知っては行けない部分というものもあるのは、理解していますわ』

「そうか……」


 俺もそうは思っている。

 だけど、


『何も知らないことは、辛い』

「そうだよ」

『前までの状態だったらムスビの話で終わりましたのに、現状だともうどっぷり関わっていますものね』


 そうなのだ。

 ここまで来て何も説明しないのは、それはもはや優しさではない。

 知らない、ということは辛いのだ。

 それも知らないのに戦うということは、本当に辛いのだ。


「現に今回手伝ってもらった奴らがいなければどうしようもなかった場面は少なからずあった」

『そうですわね。

 結果としては引き入れたことによって、今回の事件は大きくなってしまったのは否めませんが……』

「それはあくまで結果論だろ?

 解決したから後からくよくよ話すのは禁止だよ」

『……ワタクシのほうが立場としては上になったはずなのに『無体』の頃と同じように慰められてますわ……』

「なんでそんなに不服なんだよ」

『不服に決まっていますわ。

 だってムスビですもの』


 俺は一体何だと思われてるんだよ。

 そう思いながら、寝転がっている状態から起き上がり、


「俺、話すわ」

『そうですか』

「なんだよ。

 人がせっかく悩んでるのにその反応は」

『いつものムスビを真似ただけですわ』

「俺いつもそんなに興味なさそうなのかよ……」

『えっ』

「えっ?」


 続く静寂。

 そんな状況におそらくこれ以上この話をするのはまずい。


「そ、そういえば柊は俺の過去を聞く以外になんか話ししてたか?」

『どういうことですの?』

「いや、それだけの用事で宵に話しかける、ってなら電話せずに学校で合えばいいわけだろ?

 なのに電話で話をしたってことは、何か急ぎの用事でも会ったのかなって」

『あー…………。

 それなら、本当に今回の事件のシナリオを作ったのはムスビなのか聞きたがってましたわね』

「おいそれなんて答えた」

『当然あんなのワタクシが考えるわけありませんわね、と』


 電話越しの声に肩を落とし、


「あぁ、わかった。

 それを言ってしまうってことはつまり俺は今度アイツラにあったときに小学生程度の作り話を作るやつとして見られる、ということだな」

『確かにあのシナリオ自体は小学生でも思いつきそうなものですけど、いつものことじゃないですの』

「まさかここでも馬鹿にされるとは思っていなかったよ……ってかお前今回の話に関して何も言わなかったじゃないかよ」

『内容を見てる暇がありませんでしたし、別にもう根回し自体は終わっているのでどんな話でも構わないのですわ』


 できるやつ仕事をするのはいいことだけど、ここまでしてくれると複雑な気持ちだな。

 そろそろ電話も終わったほうがいいという時間に差し掛かり、


「ま、今回はありがとな。

 宵の最後の手助けのおかげでなんとかなったよ」

『御礼の言葉を言えるのはいいことですけれど、今回の最後の手助けは本当に偶然間に合ったんですわよ……』

「こ、今回もなんとかなったからいいじゃ……」

『そう言って『能力』を使ったじゃないですの!

 今回は能力なしでもなんとかなると思ったからムスビも一緒にしましたのに……』


 これは宵が来る前にすでに能力を使っていることは言えない感じだな。


「まぁまぁ、解決したから一件落着ということでいいんじゃないのか?」

『……はぁ。

 まぁワタクシが悩んでいても結果として解決できたのならば良しと……しましょうか』


 宵の言葉に俺は反応できない。

 割と自業自得で『能力』を使用してしまった以上、これ以上は墓穴を掘ってしまう。

 なるべく穏やかな声で、


「ま、とりあえず今回は一件落着ということで」

『そうですわね。

 あ、そういえば、ワタクシまだこの学校にいることになりましたわ』

「は?

 今回ので事件は終わったしいる理由ないだろ?」

『『無体』の方の仕事は今は比較的に落ち着いていますし、メールで届いたのですよ』

「メール?」

『もしかしたらムスビがいるとそこでトラブルが起きるんじゃない? と』


 その文面から誰からのメールなのか分かる。

 反論の言葉を口に出そうとするが、


「……今の所反論できないんだけど」

『……本人にも自覚症状ありとか笑えませんわね』


 電話越しでため息がシンクロする。


『とりあえず、夏休みまでは確実に学校に残って、夏休みの動向と『無体』の忙しさによってその後は決めますわ』

「……なるべく保健室に近寄らないようにしとこう」

『……残念ですわね。

 ワタクシ、次の先生が入るまで体育の先生も兼任することになりましたので』

「……は?」

『最弱とはいえそれはあくまでも『無体』の中。

 ワタクシ程度でも務まるのですわよ』


 その言葉にまたもや否定できない。

 『生徒会』の連中や被瀬たちを見すぎていたせいで狂っているが、個々の生徒が全員そんなスペックをしているわけではない。

 そのため、できると言われても、確かにできる、としか返せない。


『ま、せいぜい授業中にこき使ってやりますわよ』

「……俺は目立ちたくないから、そこらへんよろしくな」

『さぁ?

 どうでしょうかね』

「よ、ろ、し、く、な」


 そこで俺は電話を切る。

 再度寝転がり、自室の部屋の天井を見ながら、


「めんどい」


 それは宵の体育の授業にでもあるし、被瀬たちに過去を話すことでもあるし、


 宵が隠している何かに対してだ。


「流石に気づくだろ、あの不自然な間は」



☆☆☆☆☆



 その少し幼い体に似合うファンシーな部屋着に身を包み、肌の手入れが終わったのか、ベッドに座り込む。

 その少女が見ていたのは、先程まで通話していた携帯。


「バレましたかね?」


 独り言を話すくらいには不自然な魔の開け方だったなと反省する。

 いつもは鈍感なあの男が今回に限ってはなぜか鋭いところにツッコミを入れられて、反応が遅れた。

 とっさに出た嘘としてはいいほうだと思う。

 だが、いつもスラスラと話す自分からは考えられないくらいの間を開けて話した。


「まぁ、気づいたとしても答えにたどり着くのは無理ですわね」


 少女はベッドの中に潜り込み、『能力』を使い、部屋の電気を消す。


「……そういえば『腕輪』はしている設定でしたわね」


 自身の伸ばした腕に装着されている『腕輪』を見て、今更なことを思い出す。


 だが、家でまで気にすることはないだろうと目を瞑る。


 意識が溶けていく直前、考えていたのは、


 自身の『掴み』損ねた、二人の兄妹のことだった。

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