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改『リディアの魔法学講座』~あなたたちを魔法が使えるようにしてみせる~  作者: 高瀬さくら
3.実習編

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128.魔力波ネットワーク

 そこは暗闇だった。

 ウィルは呆然として立ちすくむ。

 自分はボウを引いていたはずだ。

 

 いや、確かに今、自分はストリングを最大限にまで引き絞っている、巨大化した魔獣を遠目に見ている。

 

 目を閉じてもいない、寝てもいない、なのに別の世界が目の前に広がっているのだ。

 

 ウィルは仰天する。

 

 暗闇の中にいる自分が、別の自分を見つめている。そしてこの空間にはたくさんの光が蠢いている。

 

 チカチカと瞬く光は輝き消え、また周囲を流れ星のように光が流れる。行ったこともないが、宇宙の中にいるようだ。そう感じてウィルは気がついた。

 

 ――ここは、魔法師団の魔力波ネットワークだ。静謐でいながら、濃厚な霧の中にいるように、動きにくい。

 

 個々の光は、それぞれ団員の持つ魔力だ。あまりにも強い光のそれらが行き交い、鳥肌が止まらない。高い魔力の持ち主が広場を行き交っているのに、そこを支える場は安定し強固な土台だ。

 

 その空間に、安心よりも恐れを覚える。

 なんだこれ。


 ゾクゾクとして、ウィルは深呼吸を繰り返す。


(飲まれるな――自分の魔力を高めて――ガードしろ)


 動きにくいのは――自分の魔力が低いからだ。

 違う、自分の魔力の制御ができずに、漏れて流れていくからだ。

 

 ウィルは自分の肩を抱く。

 体の周囲を硬い鎧で覆うようなイメージを浮かべると、わずかに呼吸が楽になった。


「――リディア」


 不意に誰かの声が響く。なぜか姿は見えない、でも強烈な存在感がある。

 呼びかけられて、少し離れたところにある温かいものが身動きした。


 淡い光がパッと瞬き、ゆっくりと消える。

 

 ――ああリディアだ。

 柔らかく温かい存在。


 引き寄せられるように、ふらりとウィルの意識がそちらに歩もうとすると、まるで襟首を掴まれたかのように、いきなり引き戻される。


「リディア。こいつの魔力をスキャンしろ」


 見上げたらディアンがいた。

 こいつと言われたウィルが苦情を発する前に、リディアの存在が揺れ動くのが感じ取れた。


「……だめ」


 姿は見せないものの、弱々しく消え入りそうな声が微かに答える。

 リディアが震えている。無理だとふるふると首を振っている。


「……できない」

「リディア」


「セレクトできない!」

「お前の全感覚を送れ、魔力波だけセレクトしなくていい」

「……できない、嫌!」


「共有してやる。俺が全部」


 リディアが黙る。

 まるで、呆然としてディアンを凝視しているかのよう。


 ウィルはそのやり取りを聞き、息をのむ。

 悔しさでもどかしく感じ、声を発しようとして入り込めない雰囲気にただ拳を握りしめる。

 気が狂いそうだ、けれどただ傍観者でいるしかない。


「――リディ」


 ディアンのその声。言い聞かせるような、穏やかで、宥める落ち着いた声。


「できるな?」

 

 リディアの存在が逡巡しているかのように揺らぎ、そして、――頷いた。


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