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それ、ほんまに回るんかいね?……わし、なん?σ (°ロ°)?!!  作者: AZtoM183
1.それ、ほんまに回るんかいね?……わし、 なん? σ (°ロ°)?!!
9/9

9.勝ったはずなのに、終わらんのじゃが


 翌日。


 “試し”は、すぐに始まった。


 同じ条件。

 同じ目的。


 ただ――


 やり方だけが違う。


(わかりやすい)


 山縣は、少しだけ冷静に見とった。


 一方は、従来のやり方。

 武士中心で、身分を意識した動き。


 もう一方は、組単位。

 役割で動く、いまのやり方。


(さて、どうなるか)


 最初に動いたのは、組の方じゃった。


「こっち、先に動くぞ!」


「了解!」


 声が、迷いなく通る。


 人が、止まらん。


(……速い)


 伝達が、無駄なく流れる。


 指示が一本で、ブレん。


 対して――


「おい、誰が先じゃ!」


「待て、順番があるじゃろ!」


 武士側は、少し詰まる。


 確認が入る。

 遠慮が入る。


 その分、遅れる。


(まあ、そうなるよね)


 山縣は、内心で頷いた。


(仕組みで動いとるか、空気で動いとるかの違い)


 時間が経つ。


 差は、はっきりと出た。


「完了しました!」


 先に終わったのは、組の方。


 遅れて、武士側も終わる。


 でも――


(差は、明確)


 山縣は、ゆっくりと息を吐いた。


(これで、決まりじゃろ)


 そのとき。


「ほう!」


 楽しそうな声。


 ――高杉晋作じゃ。


「ええじゃないか!」


 大きく笑う。


「はっきり出たのう!」


(まあ、そうなるようにしたしね)


 心の中で小さく返す。


 高杉は、くるりと振り返る。


「見たか!」


 声が響く。


「どっちが速いか、わかったじゃろ!」


 場が、ざわつく。


 誰の目にも明らかじゃった。


 だが――


「……」


 武士の一人が、黙っとる。


 視線は、落ちたまま。


(……終わらんか)


 山縣は、小さく息を吐いた。


(結果は出た)


(でも、納得は別)


「……速いのは、認める」


 低い声。


 やっと、出た。


「だが」


 顔を上げる。


「それで、いいとは思わん」


(やっぱりね)


 周りも、静かに聞いとる。


「武士が、百姓に従う」


「それが、当たり前になるのか」


 一拍。


「それで、いいのか」


 場が、また少し張り詰める。


(問題はそこだよね)


 速さじゃない。

 効率でもない。


(“納得”の問題)


 山縣は、少しだけ考えた。


(どうする)


 論で押すか。

 結果で押すか。


(……どっちも足りん)


 そのとき。


「ええじゃろ」


 軽い声。


 高杉じゃ。


 空気が、一瞬で動く。


「強いもんが上」


 にやりと笑う。


「それでええ」


(いや、それ言い方)


(雑すぎん?)


 案の定、顔が歪む。


「そんな単純な話では――」


「単純じゃ」


 遮る。


 高杉の目が、少し鋭くなる。


「戦えるか、動けるか」


「それだけじゃろ」


 一瞬の沈黙。


(……ああ)


 山縣は、内心で思った。


(この人、こういうとこ強いな)


 理屈じゃない。

 でも、芯がある。


 だから、場が揺れる。


 武士は、言葉を失う。


 完全には納得してない。

 でも、反論もできん。


(押し切った)


 そういう形じゃ。


 山縣は、小さく息を吐いた。


(……これで、一応決まり)


 組のやり方が、残る。


 それは確定した。


 でも。


(終わってない)


 視線を巡らせる。


 納得した顔。

 してない顔。


 混ざっとる。


(火は消えてない)


 そのとき。


「ほれ」


 高杉が、また肩を叩く。


 ――近い。


(だから近いって)


「ええ感じじゃろ?」


 満足そうじゃ。


(まあ、結果はね)


「……はい」


 短く答える。


 確かに、勝った。


 形としては、完成に近づいとる。


 でも。


(このままじゃ、どこかでまた噛み合わん)


 その予感は、消えん。


 山縣は、静かに目を細めた。


(……次は)


(納得、か)


 仕組みだけでは、足りん。


 人が動くには、もう一つ必要じゃ。


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