表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それ、ほんまに回るんかいね?……わし、なん?σ (°ロ°)?!!  作者: AZtoM183
2.回し続けられるんかいね?Σ(´д`;)?
31/55

16.全員は連れていけん――それ、わしが決めるん?

 三日。


 そう言われてから、


 時間の流れが、おかしくなった。


 朝が早い。


 夜が短い。


 飯の味も、よう分からん。


(……三日って)


(文化祭でも、もうちょい準備あったよ)


 山縣は、小さく息を吐いた。


(いや)


(比べるもんじゃない)


 こっちは。


(クーデターだ)


 言葉にすると、余計に怖い。



「集めたぞ」


 声。


 振り向く。


 ――高杉晋作。


 相変わらず、笑っとる。


(……なんで笑えるの)


 その後ろ。


 武士。

 足軽。

 百姓。

 町人。


 ざっと見ても、かなりおる。


(……多い)


 山縣は、自然と人数を数え始める。


(四十……いや、五十)


 でも。


(多すぎる)


 道。


 食糧。


 移動。


 合図。


 隠密性。


 全部、頭の中で重なる。


(……無理だ)


 ほぼ反射で、そう思った。


「減らします」


 気づけば、口に出とった。


 場が、しんと静まる。


(……あ)


(早かった?)


 でも。


 もう、戻れん。


「全員は、連れていけません」


 一拍。


「多すぎます」


 静かに言う。


 ざわ、と空気が揺れる。


「なんじゃと」


 武士の一人が、眉を上げる。


「人が多い方が、強いじゃろ」


(……来るよね)


 山縣は、小さく息を吐いた。


 でも。


(ここ、ぶれたら終わる)


「隠れて動くなら」


 一拍。


「多い方が、弱いです」


 場が、また静まる。


「見つかります」


「遅れます」


「命令が、届きません」


 一つずつ、言葉にする。


「回りません」


 短く。


 でも、はっきり。


 沈黙。


(……言った)


 胃が痛い。


 でも。


(嘘じゃない)



「ほう」


 高杉が、にやりと笑う。


「じゃあ、誰を切る」


(……来た)


 山縣の喉が、小さく動く。


(そこまで、わしなん?)


 一瞬。


 本気で逃げたくなる。


(……無理)


(これ)


(文化祭で、“ごめん、人数足りてるから”って言うのと違う)


 頭の中に、


 放課後の教室が浮かぶ。


 やりたいって言ってくれた子。


 でも、枠がない。


 言えなくて、


 結局、みんな中途半端になった。


(……あれ、嫌だった)


 でも。


(今回は)


(もっと重い)


 山縣は、ゆっくり息を吸った。


(……見るしかない)


 顔じゃない。


 身分でもない。


(見えてるか)


(任せられるか)


 今まで、やってきたこと。


 それだけじゃ。



「伊助」


 最初に、呼ぶ。


 百姓の男が、一歩出る。


 迷わん。


(よし)


「お前は行く」


「はい」


 短い。


 揺れん。



「佐平」


 足軽。


 報せが速い。


「行く」


「はっ」



「吉蔵」


 町人。


 地図が頭に入っとる。


「行く」



 一人ずつ。


 呼ぶ。


 武士も。


 百姓も。


 関係なく。


(見えてるやつ)


(任せられるやつ)


 ただ、それだけ。



 そのとき。


「待て」


 低い声。


 さっきの武士じゃ。


「……わしは」


 一拍。


「呼ばんのか」


 空気が、止まる。


(……来た)


 山縣は、静かにその顔を見る。


 腕は立つ。


 度胸もある。


 でも。


(止まれん)


 前に出すぎる。


 周りが、見えん。


(……今は)


(違う)


 山縣は、ゆっくり息を吸った。


「今回は」


 一拍。


「置いていきます」


 場が、凍る。


(……言った)


 でも。


 目は逸らさん。


「なぜじゃ」


 低い声。


 怒っとる。


 当然じゃ。


 でも。


 山縣は、逃げんかった。


「強いです」


 一拍。


「でも」


 まっすぐ言う。


「戻れません」


 完全に、静かになる。


(……っ)


 胃が、きゅっとなる。


 でも。


(これが、任せるってこと)



 そのとき。


「ええ」


 後ろから声。


 大村益次郎。


「軍とは」


 一拍。


「強い者を集めるものではない」


 静かに続ける。


「勝てる者を集めるものじゃ」


 短い。


 でも。


 重い。


(……助かるなあ、この人)



 そのとき。


「おもろいのう」


 高杉が、にやりと笑う。


「お前」


 一歩、近づく。


(だから近いって)


「ちゃんと、切れるんじゃな」


 山縣は、少しだけ黙って。


 小さく息を吐いた。


(……切りたいわけじゃない)


 でも。


(回すって)


(そういうことなんだよね)


 山縣は、静かに頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ