首都フィリーでお買い物
アリスにとって着なれない衣服であったが、特に手間取ることなく着用完了。
……うーん。改めて思うが、やはりアリスは私と同等以上の美人系美少女(ちなみに私は可愛い系美少女)であり、もし早期に魔女化していなければ、世界が驚くような美人に成長していたと自信を持って言える。
当時、若くしての魔女化は才能と評価されていたが、身体の成長を犠牲にするのはデメリットだよな。
さて、アリスの準備も整ったので、いざ出発だ。
「ところで、これからどこに向かうんですか?」
アリスは服を汚さないように気をつけているのか、若干足元がおぼつかない様子。
おそらく人生のほとんどを野外で過ごしたため、もうちょっと野性味のある、服などは気にしない性格なのかと思っていたが、ちゃんと乙女心が宿っているようで安心した。
まぁ野生児なら服は着用せず、葉っぱで過ごしていそうなイメージだけど。
「次の目的地はモンド・ラーズだが、一度フィリーでバスを乗り換える必要があるから、ついでにフィリーで買い物をする」
「……モンド……行ったことがあるような、やっぱりないような……」
アリスは思い出そうとして、首をかしげる。
「ブロレスト村のことはよく覚えているのに、他は記憶にないのか?」
「強く印象に残るような出来事があれば覚えているのですが、基本的には日陰で生きてきたので」
目立たないよう森などを移動していれば、あまり人と関わることもないし、今自分がどこにいるかもわからないか。
「モンド・ラーズは首都フィリーからやや北東に位置するシャインニーバ地方の町で、この国でも有名な農業地域の1つだ」
「ということは、おいしい食べ物がある町ですか?」
食べ物ばかりに興味があるのか。餌としては簡単そうだな。
「それはついてのお楽しみだが、まぁ間違ってはいない、と言っておこう」
「それは楽しみです」
その楽しみを得るためには、しっかりとがんばってもらわないとな。
報酬2倍報酬2倍。
食堂は残念ながら閉まっていたので、フィリー行きのバスの中、非常食が朝食となるが、様々な種類を用意しているので飽きることもない。
昔の非常食と比べれば天と地だし、研究中なんかは栄養補助食品しか口にしないこともしばしばなので、非常食が連続しても不満に思うこともない。
アリスは今まで食物魔法ばかりだったからか、今のところ不満を見せる様子はないが、色々食べるうちにどう考えが変わるか。
さて、魔導研究のこととなれば3日ぐらいの徹夜は余裕だが、バスに揺られると流石に眠気に襲われ、まぶたが閉じる。
このバスはフィリーが終点だから乗り過ごすことはないので、まぁいいか。
そう思って、少しの間眠ることにした。
「ルシアさん。到着しましたよ」
「……んむ……」
アリスに揺り起こされ、目を覚ます。
これが逆だったら、絶対アリスの口にシュシュを詰め込んでいただろうに……
バスから降りると、そこはさすが首都。人が多いこと多いこと。
正直、人通りの多い町はあまり好きではないが、人が多い町ほど最新の魔術が使われていたりするので、そこは大好き。
特に発表されたばかりの魔術を見つけた時などは、1時間でも2時間でも隅から隅まで見たり触ったりし、時には怒られたりすることもある。
一方のアリスは、特に周囲をキョロキョロと見回すような、都会や人ごみに驚く様子はない。
「アリスは人ごみが苦手ではないのか?」
「服を拾ったりするときはこういう大きい町の方が手に入りやすいので、実は意外と慣れたものなんです」
「なるほど」
私にビビって命乞いをした姿からは想像できないくらい肝が座っているというか、意外と逞しいというか。
まぁあのときは魔銃を持っていたから、仕方ないか。私だって急に目の前に魔女狩りが現れたらチビるわ。
「それで、ここでは何を買うんですか? う……」
その言葉を聞いて、私はアリスの額に右人差し指を押し付ける。
「アリスの服だ。
今着ている服は私に合わせたものだからな。約束通り、アリスに合わせた服を買う」
「あまり変わらないように思えるので、私は特に困ってはいないのですが……」
……胸元がきつい、とか言わなくてよかったな。味付けしたシュシュを口に詰め込むところだった。
「これから困ることになる。
二人分の服は持っていないからな。毎日同じ服を着るわけではないが、それでもローテーションが少ないのは好ましくない」
「そういうものでしょうか?」
「そういうものだ。さ、行くぞ」
「は、はい」
これでファッションに目覚めてお金がかかりすぎる子になっても困るが、お金をかけないのもよろしくない。
自分で稼げるようになれば自由に金を使えばいいが、それまではその辺のバランスをちゃんと教育していかなければならないな。




