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勝手に魔王認定された魔女は勇者に魔力を奪われたので取り戻すために旅をする~なお500年経っても魔力は戻っていない~  作者: 山岡桃一


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『魂食いの魔女』アリゼイル・クロシアス(アリス)

「それで君のことが他人事だと思えなくなってな。

 だが、お互いに魔女だと確信のない状態でそれを指摘するのは、あまり得策ではないから遠回しに誘っていたんだ。

 君も魔女なら、自身を魔女だと告白する意味がわかるだろう?

 だが私はあえてその事実を伝えたんだ。

 だから私を信じてはくれないだろうか?」

 最終手段。魔女という同族として寄り添う。

 これなら効果覿面のはず。

 これに加えて魔王戦争には参加していないとされている『穏健派魔女』だと付け加えてもいいが、証明するものがない。

 それに、あまり強調しすぎると逆に怪しいかもしれない。

 まぁ私が『穏健派』なのは嘘ではない。ただ魔導実験で度々爆破をしただけのことだ。

 大した問題じゃない。

 そう私は『過激派魔女』に巻き込まれただけで、本来は魔導研究に勤しむだけの美少女穏健魔導研究者なのだ。

 それを強制的に……

 と、それはさておき。

 これでも拒否するようであれば、先ほど使用した飴玉魔術を活用するしかない。

 実はあれには強力な毒が仕込まれており、侵食魔力なので吐き出しても無駄。

 解除するには私のいうことを聞け、と脅すしかない。

 もちろん毒なんてものは仕込んでいないが。

 それに相手は上位魔女。

 そもそも魔力毒が効かないし、あまり恐怖で縛りつけると、不満が爆発した時に何が起きるかわからないので、極力避けたいところではあるが……

「……わかりました。

 あなたのその気持ち、受け入れさせてください」

 よっしゃ。少女のその言葉に、私は心の中で強く拳を握る。

「さっきも言いましたが、今まで運良く襲われたこともなければ、隠れている場所が見つかることもなかったんです。

 でももしかすると、今回あなたに見つかったことで運の流れが変わって、今後酷い目に合うかもしれません。

 それなら、魔女だと告白してくれたあなたについて行ったほうが、まだ安心できるかもしれません。

 あ、でも……実は騙していた、なんてことがあれば一思いにやっちゃって欲しいのですが……痛いのは嫌なので……」

 少女は覚悟を決めたかのように、両手を合わせてにこりと笑う。

 しかしその小さな体は細かく震え、笑顔も引きつっていた。

 流れが悪い、というのはよくわかる。

 なんと言っても数時間前『セイヴィアーク』を手に入れ損なった結果、危うくバラバラにされかけたのだ。

 それをただ逃げるだけではなく、全力で争ったことで、なんとか打開できた。

 別の流れに乗るのは、魔導研究でもよくあること。

 燃やしてダメなら凍らせてみろ、的な。

「今はまだ出会ったばかりでお互いのことはよくわからないが、騙そうとなんて思っていないさ」

 魔力を借りるだけさ。

「では改めて。

 私の名前はルシア・ガルブレイ。ルシアと呼んでくれて構わない。

 これからよろしく頼む」

 と、自己紹介と共に右手を差し出すと、

「私はアリゼイル・クロシアスです。

 村の人たちからは『アリス』と呼ばれていました。

 こちらこそ、よろしくお願いします」

 アリスはそう言って、私の右手を握り返す。

 ……複数ある『魂喰い魔女』に関する文献の一つに載っていた名前は『アリーズ・クロス』だったな。

 似ている……というか、本人確定でしょ、これ。

 ここまでくると喜びの雄叫びをあげたくなる一方、この『アリス』の態度が演技である可能性も考えておかなければならない。

 もしこの『賭け』に負けると、酷い目に合うのは私である。

 しかし勝てば魔導研究やりたい放題という、至高の環境を手に入れられる。

 頼むぞぉ、私の運。

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