『魂食いの魔女』アリゼイル・クロシアス(アリス)
「それで君のことが他人事だと思えなくなってな。
だが、お互いに魔女だと確信のない状態でそれを指摘するのは、あまり得策ではないから遠回しに誘っていたんだ。
君も魔女なら、自身を魔女だと告白する意味がわかるだろう?
だが私はあえてその事実を伝えたんだ。
だから私を信じてはくれないだろうか?」
最終手段。魔女という同族として寄り添う。
これなら効果覿面のはず。
これに加えて魔王戦争には参加していないとされている『穏健派魔女』だと付け加えてもいいが、証明するものがない。
それに、あまり強調しすぎると逆に怪しいかもしれない。
まぁ私が『穏健派』なのは嘘ではない。ただ魔導実験で度々爆破をしただけのことだ。
大した問題じゃない。
そう私は『過激派魔女』に巻き込まれただけで、本来は魔導研究に勤しむだけの美少女穏健魔導研究者なのだ。
それを強制的に……
と、それはさておき。
これでも拒否するようであれば、先ほど使用した飴玉魔術を活用するしかない。
実はあれには強力な毒が仕込まれており、侵食魔力なので吐き出しても無駄。
解除するには私のいうことを聞け、と脅すしかない。
もちろん毒なんてものは仕込んでいないが。
それに相手は上位魔女。
そもそも魔力毒が効かないし、あまり恐怖で縛りつけると、不満が爆発した時に何が起きるかわからないので、極力避けたいところではあるが……
「……わかりました。
あなたのその気持ち、受け入れさせてください」
よっしゃ。少女のその言葉に、私は心の中で強く拳を握る。
「さっきも言いましたが、今まで運良く襲われたこともなければ、隠れている場所が見つかることもなかったんです。
でももしかすると、今回あなたに見つかったことで運の流れが変わって、今後酷い目に合うかもしれません。
それなら、魔女だと告白してくれたあなたについて行ったほうが、まだ安心できるかもしれません。
あ、でも……実は騙していた、なんてことがあれば一思いにやっちゃって欲しいのですが……痛いのは嫌なので……」
少女は覚悟を決めたかのように、両手を合わせてにこりと笑う。
しかしその小さな体は細かく震え、笑顔も引きつっていた。
流れが悪い、というのはよくわかる。
なんと言っても数時間前『セイヴィアーク』を手に入れ損なった結果、危うくバラバラにされかけたのだ。
それをただ逃げるだけではなく、全力で争ったことで、なんとか打開できた。
別の流れに乗るのは、魔導研究でもよくあること。
燃やしてダメなら凍らせてみろ、的な。
「今はまだ出会ったばかりでお互いのことはよくわからないが、騙そうとなんて思っていないさ」
魔力を借りるだけさ。
「では改めて。
私の名前はルシア・ガルブレイ。ルシアと呼んでくれて構わない。
これからよろしく頼む」
と、自己紹介と共に右手を差し出すと、
「私はアリゼイル・クロシアスです。
村の人たちからは『アリス』と呼ばれていました。
こちらこそ、よろしくお願いします」
アリスはそう言って、私の右手を握り返す。
……複数ある『魂喰い魔女』に関する文献の一つに載っていた名前は『アリーズ・クロス』だったな。
似ている……というか、本人確定でしょ、これ。
ここまでくると喜びの雄叫びをあげたくなる一方、この『アリス』の態度が演技である可能性も考えておかなければならない。
もしこの『賭け』に負けると、酷い目に合うのは私である。
しかし勝てば魔導研究やりたい放題という、至高の環境を手に入れられる。
頼むぞぉ、私の運。




