とにかく必死に
「ライセルの家系は代々『魔女狩り』だそうだが、それは色々な意味で危険だ」
「そ、それは一体どういうことでしょうか?」
とにかく私は、自分が標的にならないために、必死に、しかし冷静に『魔女』の説明を行う。
「知っているかもしれないが、昔『魔女狩り』を利用した一般人への冤罪行為が横行してしまった。
そもそも魔王の残党が暴れていたのは、魔王討伐後数十年だけであり、それ以降は魔女の姿が確認されることはなかったそうだ。
それにもかかわらず、今から200年前まで『魔女狩り』が禁止されなかったのはなぜか?」
「つまり……悪い人が『魔女狩り』を利用した、ということでしょうか?」
「その通りだ。わかってるじゃないか」
「ありがとうございます!」
本当に私に一途なんだな。
『魔女狩り』の家系なら、もうちょっと疑問を持っても良さそうなのに。
それはそれで、魔導研究者目線として、嘘の仮説を展開する用意はある。
「いくら『魔女狩り』が『あいつは魔女だった』と主張しても、それを証明できなければただの殺人でしかない。
そして『人』と『魔女』の姿は変わりないという」
まぁ実際の『魔女狩り』はそんなこと気にしないんだけどな。
『魔女』だと疑いをかけられたら、まず問答無用の捕縛だ。
しかもその際、無傷で、という条件が含まれていないことが多い。
腕の一本や足の一本なくなろうが、とりあえず捕縛さえしてしまえばいいのだ。
酷いものになれば、有無を言わさず攻撃してくる。
夜道や背後はもちろん、町中でさえ、例えば建築中の落下事故を装った手段なんかもある。
しかしその『冤罪』が立証されたケースは皆無。
つまり『魔女狩り』や『その周辺』の人間は上手く『人を消す』ことができるのだ。
「そして、仮に目の前に魔女が現れたとしても、先ほどの私の仮説から、高威力魔導兵器は通用しない。
なので、無駄に使用して隙を作ることで、逆にやられてしまう危険性の方が高い。
だから魔女を見かけたら即座に逃げることが大事だ。
これが魔導研究者としての私の見解だな」
と、目の前の魔女の私から必死の嘘仮説。
実際には『魔女狩り禁止令』を信じて暴れていた魔女がいたらしいが、きっちり『魔女狩り』にやられたそうだ。
この魔導兵器を扱えなさそうなヒョロガキライセルが、現当主とは考えづらい。
それでも私に惚れるあまり『ルシアさんが言うんだから間違いない!』と、他の魔女狩りに主張してくれるとありがたいんだが。
しかしどう見ても発言力がなさそうで、期待感は薄い。
もうちょっと権力のあるやつに惚れられたほうが、まだ抑止力があったかもしれない。
その反面、怒らせた時が面倒になるが……
正直なところ、とっとと退散したい気持ちになってるんだよなぁ。
でもライセルが持つ『飴玉魔術』は非常に気になる。
ライセルが言っていた効果が本当なら、勇者が持っていた『王家の秘宝』という魔術と酷似している。
それは私の魔力を奪い取った魔術。
わずかにでも可能性があるのなら、なんとしてでも手に入れたいところ。
しかし相手は『魔女狩り』である以上、そう簡単にはいかないだろう。
だがせめて何かしらの情報だけは聞き出したい。
そうすれば、念願の『私の魔力』を取り戻すきっかけになるかもしれない。
「ところで、珍しい魔術があればもっと話を聞きたいのだが、そう、あの『飴玉魔術』のような。
私のために、私のために、詳しく教えてくれる、よ、な?」
私は胸の前で手を合わせ、少し体をくねらせる。
そして普段出せないような甘い声を無理して出し、上目遣いで近づきつつ要求……おねがぁいする。
「喜んで!」
これに対するライセルの顔は、なんともまぁ緩みきっていた。
横に並ぶと、おそらく身長170センチちょっとで、私との差が15センチほど。
一般的に、カップルの理想の身長差、と言われているが、今時こんな手に乗ってくるやつが本当にいるんだな。
この態度を見て再認識するが、こいつ、女性に対する免疫がほぼないな、これ。
このまま無理して可愛子ぶりっ子を押し通していけば、無事にこの家から出られる。
その上、貴重な魔術も手に入るかもしれない。
がんばれ、私。




