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アリとキリギリス
夏の ひねもす 夜も すがら
歌い くらした キリギリス、
秋の 来たのも 知らぬ 間に、
「つめたい 風が。」と おどろけば、
いつか 悲しい 冬の空。
やぶれた ひとえ 一まいで、
寒さは さむし、はらはすく、
なきながら 立つ アリのかど。
雨に しめった こくもつを
アリは せっつせと ほしていた。
「どうぞ アリさん、わたしにも
分けて ください、おがみます。
今度の 夏の 来るまでに
利息を つけて 返します。」
言われて アリは けげん顔、
夏の 日ながに 大あせを
流して ためた 食べ物を
分けて くれとは ずうずうしい。
暑い 間に 働いて、
寒い したくを しておくに、
あなたは 何していたのです。」
「一日青い葉のかげで、
歌を うたって おりました。」
「はてさて それは けっこうね、
歌が すんだら この 冬は
おどりを おどる 番でしょう。」
ーーイソップものがたり 最新版
楠山正雄 編
アリ と キリギリス より




