表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
39/104

道場訓 三十九   将来の三拳姫の入門式

【神の武道場】。


 それは俺が師匠であった祖父から継承されたスキルであり、一般的なスキルとは違って生物(せいぶつ)収納系(しゅうのうけい)と呼ばれる希少(レア)なスキルだ。


 何が希少(レア)かと言うと、まずスキルの中に入れることだろうか。


 気力(アニマ)を一定まで練り上げた状態で、かつ特定の所作(しょさ)をすることでスキルの中へと入れる次元の扉が開かれ、発動した本人と本人が許可(きょか)した者たちと一緒にスキルの中へと入ることができる。


 そして【神の武道場】と呼ばれていることもあって、次元の扉を抜けた先に現れる最初の場所は武道を稽古(けいこ)する武道場だ。


 成人した大人が100人以上は入れるほど広い畳敷(たたみじ)きの床。


 正面の壁の前にはヤマト国の神棚(かみだな)が置かれ、その神棚(かみだな)の右隣の壁には「闘神流空手(とうしんりゅうからて)指南所(しなんじょ) 拳心館(けんしんかん)」とヤマト語で書かれた看板が掛かっている。


「こ、ここがスキルの中なのか……」


 そんな道場の中を見渡しながら、驚いた声を上げたのはキキョウだった。


「あのときは動揺(どうよう)していてよく見ていませんでしたが、こうして見ると本当にスキルの中とは思えないほどですね」


 二度目の来訪(らいほう)だったエミリアも初めて見たように目を輝かせる。


「ホンマでんな。お祖父(じい)さまから話は聞いてましたが、こうして中に入らせてもらうとその凄さが(あらた)めて分かります。けれどケンシンさま、この【神の武道場】というスキル……()れるのは()()()()だけやないですやろ?」


「分かるのか?」


 こくり、とリゼッタは(うなず)く。


「何かしらの条件を満たせば、こことは()()()()()も行けるんとちゃいますか?」


 さすがは大教皇(だいきょうこう)の孫娘であるリゼッタだった。


 スキルの中にいるというのに、他の2人と違ってまったく動揺(どうよう)していない。


 それはなぜか?


 俺の祖父から聞いた話によると、リゼッタの祖父である大教皇(だいきょうこう)――エディス・ハミルトンも生物(せいぶつ)収納系(しゅうのうけい)の継承スキルを持っているという。


 俺はまだ一度も入ったことはないが、孫娘であるリゼッタならば一度や二度くらい自分の祖父の継承スキルの中に入ったことがあるはずだ。


 それゆえの余裕なのだろう。


 しかもリゼッタは道場以外の場所へ行くための条件も的確(てきかく)に言い当てた。


 これはおそらく、エディス・ハミルトンの継承スキルの中にも同じような条件があったからに違いない。

 

 などと俺が思っていると、3人の中で心身の異常を(うった)えた者が現れた。


 キキョウだ。


 がっくりと片膝をつくと、右手で頭を押さえて苦悶(くもん)の表情を浮かべる。


「おい、大丈夫か?」


 俺はキキョウへ()け寄って声をかけた。


「へ、平気です……ちょっと目眩(めまい)がしただけですから」


 キキョウは笑いながらそう答えたが、どう見ても我慢(がまん)誤魔化(ごまか)すための笑みにしか見えなかった。


 これはキキョウの魔力(マナ)に【神の武道場】が反応しているからであり、このまま悪戯(いたずら)に時間が過ぎればキキョウの身体にもっと悪影響が出てくるはずだ。


 それに何もせずに時間を浪費(ろうひ)すればキキョウだけではなく、他の2人も【神の武道場】からの強制排除の対象になってしまう。


 さっさと済ませたほうがよさそうだな。


 俺はとりあえずキキョウの身体を優しく起こすと、他の2人にも神棚(かみだな)の前に移動するように言った。


 そして神棚(かみだな)の前に移動したあと、上座(かみざ)である神棚(かみだな)を背にするように俺が立ち、その俺の数メートル前に3人を横一列に並ぶように立たせる。


「よし、まずは3人とも俺と同じように正座してくれ」


 俺の言うことに素直に(したが)う3人。


 そんな3人に俺はこれから行う入門式の手順をざっくりと説明した。


 神棚(かみだな)への一礼、道場長である俺への一礼、弟子になる者同士の一礼、そして道場訓(どうじょうくん)唱和(しょうわ)などだ。


 ちなみに道場訓(どうじょうくん)筆記(ひっき)された木版は、神棚(かみだな)の左隣の壁に掛けられている。


 その後、神棚(かみだな)への一礼から弟子同士の一礼までを済ませると、一番重要な道場訓(どうじょうくん)唱和(しょうわ)に移った。


「いいか? 道場訓(どうじょうくん)唱和(しょうわ)のさいには滑舌(かつぜつ)よく、心の底から闘神流空手(とうしんりゅうからて)を学びたいという気概(きがい)を胸に唱和(しょうわ)してくれ。分かったか?」


「はい、分かりました」とエミリア。


 うん、いい返事だ。


「はっ、委細(いさい)承知(しょうち)しました」とキキョウ。


 おお、良い目をしているぞ。


「もちろんですわ。何ならケンシンさまへの愛も言いましょうか?」とリゼッタ。


 それはいらん。


 俺は居住(いず)まいを正すと、一つだけ大きな咳払(せきばら)いをして(のど)の調子を整える。


 そして――。


「一つ、我々は――」


 俺が道場訓(どうじょうくん)唱和(しょうわ)を始めると、他の3人も同じように続く。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 一つ、我々は空手(からて)によって心身を錬磨(れんま)し 、信実(しんじつ)の精神を(やしな)うこと。

 (空手(からて)を真剣に修行することによって心と身体を鍛え抜き、打算(ださん)がなく誠実(せいじつ)な人間になる)


 一つ、我々は空手(からて)真髄(しんずい)を極め 、人格形成に(つと)めること。

 (空手(からて)の道を深く追求することで、人間性の向上発展に努力する)


 一つ、我々は質実剛健(しつじつごうけん)(もっ)て 、空手(からて)の道を突き進むこと。

 ((かざ)ることなく真面目に(たくま)しく空手(からて)の修行をする)


 一つ、我々は空手(からて)の修行によって礼節(れいせつ)(みが)き 、血気(けっき)(ゆう)(いまし)めること。

 (空手(からて)の修行によって礼儀(れいぎ)を身につけ、些細(ささい)なことで(いか)らず空手家(からてか)の名に()じぬようにする)


 一つ、我々は生涯(しょうがい)の修行を空手(からて)の道に(ささ)げ 、人としての道も(まっと)うすること。

 (生涯(しょうがい)において空手(からて)の修行を続けていくことで、人間としても完成するような生き方をする)


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 これらの道場訓(どうじょうくん)をすべて唱和(しょうわ)した直後、神棚(かみだな)(まつ)られていた円形の鏡から(まばゆ)い光球が現れた。


 やがてその光球は3つに分かれてエミリア、キキョウ、リゼッタの目の前の床に飛んでいく。


 3人はあまりの驚きに息を()む。


 なぜなら、自分たちの目の前に飛んできた光球が〝純白の空手着(からてぎ)と真っ白な一本の(おび)〟になったからだ。


「ケンシン師匠……こ、これは?」


 エミリアの質問に俺はありのまま答えた。


空手着(からてぎ)(おび)だ。それ以外に何に見える?」


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

読んでみて面白いと思われた方、是非とも広告の下にある☆☆☆☆☆を★★★★★にさせる評価ボタンがありますので、ブックマークの登録とともにこの作品への応援などをよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ