第四十三話 最期の末裔
施設を出たあと、私達3人は一緒に歩いていた。
そこで、ふと疑問に思った。
「なぁジェイト。施設の子達はどの位の時間で里親が見つかるもんなんだ?」
「ん?んー。そうだな〜‥‥。早い子で半年。遅い子で数年かなぁ‥‥まぁ結局里親が見つからず15になったら街に出て仕事をしたりしだすかな!」
「そうなのか!なら、ナディアは本当に早く決まったんだな!」
「お嬢ちゃんの場合は人間ってのもあったからなぁ。保母さんが積極的にさがしてくれたんだろーな〜」
なるほど‥‥。確かにナディアが大きくなったとして働くとなると‥‥。
やっぱり人間の村の方がいいのかもしれない。
「それよりジェイトは何処までついてくる気だ‥‥。俺達はもう帰るぞ、仕事も残ってるし」
ルークはジェイトの事を少し邪険に扱う。
それでもジェイトはそんな事何でもないと言いたげにニカッと笑ってみせた。
「いいじゃねーかよー。俺、今日は非番なんだ!
‥‥おっ、折角だしシロナの稽古つけてやるよ!まだ動きにムラがあるし、精霊術ってのも目の前でちゃんと見ときたいしな」
「えっ?!いいのか!」
「おう!どうせルークは作業場に籠るんだろ?シロナ放ったらかしするなら俺に任せとけよっ」
バシッとルークの背中を叩くと、少しよろけてため息をつくルーク。
結局、ジェイトはそのまま家まで着いてきた。
ルークは家に着くなりさっさと作業場へ向かってしまった。
納期がかなり近づいているのか、急いでる様子だ。
私も手伝えたらいいんだろうけど、ルークいわく、今回の薬はかなり難易度が高いらしく、私にはまだ無理らしい。
まぁ、あくまで私は助手!
薬師になる訳じゃないし、そこまで極めなくてもいい。
それよりも、私は一刻も早くロギの力を上手く使いこなせるようにならないと‥‥また暴走しても困る。
そこで、私とジェイトは裏庭へ移動した。
コハクは木の上であくびをしながら寛いでいる。
あぁ〜コハクが羨ましい‥‥。
そんな事を心の中でボソッと呟くと、喝の声が頭に響いた。
「《馬鹿な事言ってねぇで、さっさとやる事やりやがれ》」
うおっ?!
ろ、ロギ?!
今朝からずっと無言だったくせに!突然ビックリするだろ?!
「《うっせぇ、精霊術の練習するんだろが。テメェ1人じゃ話にならねぇしな‥‥仕方なく出てきてやったんだよ。有難く思いやがれ》」
ロギだって私がいないと困るくせに‥‥。
上から目線で素直じゃないな。
「《あぁ?んな事テメェに言われたくねーつーのっ!》」
何だとーっ!
心の中で会話をしていると、ジェイトは不思議がりながら木剣を構えた。
「おいおいおーい。何ボケーッとしてんだ〜?早く打ち込んで来いよ」
「えっ、あ、うん!いくぞ!」
私も渡されていた木短剣を構え、ジェイトに向かって行った。
木と木がぶつかり合う音が庭中に響く。
「違う違う。ここはこうだ!」
「こう構えて、くるっと回って懐に入る」
「そうそう!その調子!」
という感じでジェイトから指導を受ける。
ジェイトの教え方は凄くわかりやすいんだけど、調子に乗ってくると少しスパルタ気味になってくる‥‥。
しかもジェイトはタフ過ぎて疲れを見せない。
私はこんなにヘトヘトだっていうのに。
やっぱり、もっと体力つけないと‥‥。
「よーし!剣術はこの辺で休憩な〜」
ジェイトの声とともに、私は大の字になって芝生に転がった。
額からは汗が流れ落ちる。
「ハァハァ‥‥つ‥‥疲れた‥‥」
「回転軸もズレないようになってきてるし、今回は上出来かな〜。後はそれを実戦でもこなせる様になれば問題ないだろう」
チラッと視線をジェイトの顔をへ向ける。
汗ひとつかいていない‥‥。
あんなに動いたのに息も上がってないし、本当に凄いな。
流石‥‥お姉さんの血を感じる‥‥。
この強さはそういう血統なんだろうか。
ジェイトにさえ一太刀入れられないのに、よくあの戦いに勝てたな私。
10分程休憩をした後。
私は木剣を片付けて、的の前に立った。
次は精霊術の練習。
まずは私のできる範囲で精霊術を使ってみろと言われたので、精神を集中させる。
ロギの力は借りずに‥‥私だけの力でロギの魔力を引き出しコントロールする‥‥。
口で言うのは簡単だ。
でも、いざこれを実行させようとすると中々上手くいかない。
何か‥‥コツがある筈なんだろうけど‥‥。
とにかく、今は私の限界に挑戦するのみ!
右手で胸元を掴み、自分の中にある闇魔力を引き出す。
集中だ‥‥。
集中‥‥集中‥‥。
すると、シロナの足元から黒い靄が湧きだした。
その靄は徐々に広がりシロナの周りを包んでいき、靄は固まり凝縮し始め、影が具現化し、影の刃が完成した。
ジェイトはその様子を真剣な眼差しで黙って見つめる。
「《へぇ、やるじゃねぇか》」
突然話しかけるロギに少しイラッとした。
今凄く集中してるのにっ!
気が散るだろ‥‥っ!バカ!
案の定、気が散った事で影の刃が少し崩れだした。
マズいと思った私は、すぐさま右手を前に突きだし影を操り、刃を的目がけて放つ。
刃は的へ真っ直ぐ放たれたが、強度が落ちた事で的に当たる瞬間影はまた靄となって分散してしまった。
「あーーっ!!あと少しだったのに!!ロギのせいだからなっ!!」
「《何だとぉっ?!俺は何もしてねーだろうが!》」
「ロギが喋りかけてきたせいで気が散ったんだ!!練習の邪魔するな」
「《俺はただ褒めてやっただけだろうが!!》」
「それが邪魔だって言ってるんだ!」
思わず声に出して話してしまったため、ジェイトはちょっと驚きながらも、ルークからロギの事情は聞かされていたためすぐ理解した。
「ふ〜ん、精霊術か‥‥。改めて間近で見るとおっもしれーな!魔法は自分の魔力と微精霊の力を借りて使うもんだが‥‥。精霊術は大気中のマナと体内の自分の魔力と精霊の魔力を混ぜて使うのか‥‥。
これは、中々むずけーコントロールになりそうだな〜」
えっ。
今の一瞬で?
まさか、理解したって言うのか?
本当に‥‥何者なんだろこのヒト‥‥。
「そんなに難しいのか?精霊術って‥‥」
「俺も初めて見たからな〜。こりゃぁ手探りでって感じになりそうだ‥‥俺にはわっかんねー感覚だろうし、シロナの直感次第かなぁ」
どうやら、自分で何とかするしか無いみたいだ。
でも何とかって‥‥。
「《‥‥レイナは最初っから俺の力を引き出せてた‥‥俺が手を貸すことはまず無かったからな。悪ぃが俺からのアドバイスはねェぞ》」
「‥‥‥‥」
どうするか困り果てた頃、庭の入口扉から声が飛び込んできた。
「お困りのようですね!ここは、僕の出番でしょうか」
振り返ると、用事を終えたモノンがニコニコして立っていた。
そういえば手紙で今日出先から帰ってくるとか言っていたような‥‥。
まさかこんなグッドタイミングに来てくれるなんて!
けど‥‥
「モノじぃ!帰ってくるの早くね?」
「可愛い孫の為ですよ、これくらい余裕です」
モノンはこちらに近づき、私の肩に手を置いて笑いかけてきた。
「‥‥僕の出番って、モノンは精霊術の事分かるのか?」
精霊術師は大昔に光精霊と闇精霊と共に滅んだ。
精霊術を理解している人など、今の時代にいるのか‥‥。
教わるなんて事が‥‥可能なんだろうか。
それがずっと引っかかっている。
しかし、その心配をよそに彼は微笑みながら言った。
「問題ないですよ?‥‥だって僕は最後の生き残りですから」
「最後の‥‥生き残り?」
え?
どういう‥‥?
モノンは、先程の稽古で出来た私の頬の擦り傷に手を当てた。
すると手から眩い光を放ち始め、たちまちその傷が塞がりだした。
「モノじぃ‥‥これは、治癒魔法か?」
治癒魔法は光魔法。
つまりもう存在することの無い魔法だ。
それをモノンが使えるという事は‥‥。
モノンの言う生き残りとは‥‥
「僕は最古の光精霊術師。‥‥君と同じ最期の末裔ですよシロナ‥‥」




