第二十七話 俺が
な‥‥
なんて言った‥‥?
シロナが闇精霊術師の末裔?
封印が解かれた‥‥だと?
ったく‥‥。
次から次へと‥‥。
頭が痛くなってくるな。
俺は現状を理解するのに必死だった。
しかし、隣にいたモノンは何故か確信を掴んだ様な顔だ。
「なるほど‥‥やはり彼女は精霊術師でしたか」
やはり‥‥だと?
「先生、この事をご存知だったのですか」
「いや、封印が掛けられていた時点でおかしいと思ってたんですよ。ただ、まさか闇精霊とは思いませんでしたけどね‥‥」
「うるっせぇなそこの緑頭‥‥。言っとくが、こうなったのは全部テメェのせいだからなっ!テメェが封印さえ解かなければ、俺は目覚めることは無かった‥‥!貴様が!またあの呪いの連鎖の歯車を回しやがったんだ!」
????
呪い??
「それにだ‥‥テメェの面に覚えはねぇが、テメェの中から嫌〜な気がプンプン臭ってきやがる。そんなクセェ野郎がシロナにウロウロ付きまとうんじゃねぇぞ!!」
小さい体のコハクからとんでもない言葉が連発で発せられる。
しかも、先生が徹底的にディスられている‥‥。
「うーん。人の事あまり臭い臭いって言わないで欲しいですね〜。それを言うなら君の方が陰気臭くないですか?」
「あああ??」
子ドラゴンと先生の間に火花が走っているように見えた。
って、それより!
「お前、ロギアンって言ったか?シロナは大丈夫何だろうな?」
そう。
俺にとっての第一優先。
あの暴走具合から見て、シロナの身に何かリスクがあるんじゃないか‥‥と、俺は考えていた。
「‥‥‥‥小僧。テメェに頼みがある」
?
「何だ」
「覚醒しちまったもんはしょうがねぇ。‥‥が、まだ望みはある。‥‥小僧、シロナの母親を探せ」
母親?
いや、待て。
「シロナの母親は生まれてすぐ亡くなったと聞いたが?」
コハクはシロナの近くに歩み寄りながら話し出した。
それは、シロナも知らない過去のこと。
「それは、シロナの父親がついた嘘だ。‥‥最初に封印したのは母親で、父親の致命傷のショックで暴走したシロナに再封印したのは父親だ。‥‥それも命懸けでな」
「じゃぁ‥‥母親はどこに行った」
「シロナの母親は連れ去られた。俺達をどん底に陥れた糞王国にな」
王国‥‥。
何故王国がそんな人攫いのような事を。
コハクは続いて、驚かないで聞いて欲しいと繋いだ。
そして、その口からとんでもない真実が告げられた。
「シロナの母親はただの女じゃねぇ。俺の前契約者レイナ‥‥‥‥‥‥
元始の魔女だ」
なん‥‥‥‥だ‥‥と?
元始の魔女?
あの言い伝えの‥‥?
まさかそんな‥‥。
驚いていたのはその場で俺だけで、モノンは静かに目を細めていた。
すると突然背後から聞き覚えのある声が間を指す。
「なるほど。ならば先程の黒い魔力に説明がつくな」
振り返るとそこに立っていたのは、赤髪のポニーテールに白く丈の長い軍服。
久しく会っていなかったが、ジェイトの姉。
スカーレットが仁王立ちで立っていた。
「モノン。君のあとをつけてて正解だったよ」
モノンはわざとらしく額に手を当て落ち込む仕草をする。
「あちゃ〜。尾行されてましたか。僕とした事が‥‥」
‥‥まずいな。
スカーレットは人間嫌いで有名。
見つけ次第すぐ抹殺は当たり前。
ここで会いたくは無かった。
「ただの人間ならすぐここで剣を振るっていたが‥‥。元始の魔女が関わってるなら話は別だ。‥‥‥‥‥‥ルーク悪く思わないでくれ」
俺は腕の中のシロナを離すまいと、更に強く抱きしめる。
ここで離れてしまえば‥‥シロナが‥‥っ!
俺はもう‥‥なにも失いたくない。
悔しいが、力ずくでこの人を倒すのは無理だ。
なら魔法で目くらましして逃げるか‥‥。
いや、逃げたとしてその後はどうする。
俺は、どこに行くっていうんだ。
眼光をスカーレットに飛ばし、シロナを抱きかかえてジリジリと後退りをする。
すると何故かモノンが俺の前に立ち塞がり、突然
「ごめんよルーク」
と言って何か魔法をかけられた。
完全に油断した‥‥。
‥‥まさか‥‥
せ‥‥んせ‥‥が‥‥
くっ‥‥‥‥
俺の意識は、そこで途絶えた。
「小僧!どうした?!しっかりしやがれ!」
コハク【ロギアン】が必死に呼びかけるが、シロナと同じ眠魔法をかけたのだろう。
全く反応が無かった。
「すみませんけど、君も大人しく眠っといて頂けます?じゃないと‥‥‥‥皆死にますよ‥‥」
トンっとコハクのおでこに指を当てると、たちまち眠りについてしまった。
「ふ〜。スカーレット、これで問題ないですよね」
笑顔を振りまくモノン。
「モノン。何故ルークを助けてやらなかった?」
私は先程まで、モノンの尾行をしてここまで来た。
断じてモノンにあーしろ、こーしろと指示した覚えはない。
「何故ってよく言いますよ全く。その軍服に隠れている手‥‥‥‥剣‥‥抜くつもりでしたよね?君」
‥‥この男‥‥見切っていたか。
流石副騎士団長ってところか‥‥。
昔からだが、掴みどころの分からない男だ‥‥。
「フッ‥‥面白いな‥‥。貴様等!2人と1匹を拘束しろ!後、この化け物も連れて行け」
後ろに率いていた魔軍兵に、シロナとルークを本拠点へ運ぶよう命じ。
地下牢獄へ拘束されてしまった。
そばに居たナディアは、モノンが上手くスカーレットから隠し施設に帰してくれたのだが‥‥。
ナディアはこの一連の騒ぎを全く覚えていなかった。
頭がガンガンする。
強制的に眠らされたおかげで、意識が安定しない‥‥。
ここは‥‥どこだ‥‥?
ルークは手や足を動かそうとしたが、それはかなわなかった。
天井から鎖が垂らされていて、俺の腕はそこに繋がれ。
足は鉄球玉付きの鎖に加え、地面から伸びた鎖に縛られていた。
俺が目を覚ました時、暴れて逃げ出さないためだろう‥‥。
オマケに、この鎖‥‥魔力無効効果までついている。
これじゃぁ逃げ出すのは不可能だな‥‥。
頭の中でゴチャゴチャと考えていると、次第に目も見えるようになってきた。
そして顔を上げると、向かいの牢獄にシロナの姿が写った。
!!
「シロナっ!!」
声をかけたがシロナは眠ったまま。
かなり強めに魔法をかけられたらしい。
隣にはコハクも鉄球玉で繋がれている。
「クソっ。この鎖さえ無ければ‥‥」
呟くと石螺旋階段から火の明かりが見えて、こちらに近づいてくるのが分かった。
2人の魔軍兵が鍵を持って俺の前で止まる。
「出ろルーク。騎士団長様がお呼びだ。くれぐれも粗相の無いようにな」
「スカーレットが‥‥」
俺と天井を繋げていた鎖を解き、手錠をされたまま俺は騎士団長の執務室へ連れていかれた。
今は我慢だ‥‥。
機会を伺い必ず
あいつを助ける。
そう心に誓い、俺はその部屋に足を踏み入れた。
てっきり俺はスカーレットとだけ話すのだと思っていた。
しかし、俺の目に飛び込んできたのは、まさかのジェイトの姿だった。
「よぅ、ルーク」
「‥‥ジェイト。何故お前がここに」
ジェイトは目を伏せ申し訳なさそうな顔をしていた。
それで何となく察した。
「私が呼んだんだ。ルーク」
椅子に座り腕を組むスカーレットが、俺の代わりに察した内容を言った。
「だろうな‥‥」
ジェイトも十分シロナと接してきている。
そして凶暴魔物の件と関係があった事も知っているジェイトを、ここに呼ばない訳はない。
きっとシロナの事について色々聞きたいのだろう。
俺もシロナの全部を知ってるわけじゃない。
でも、今まで接してきたシロナの事は全部知ってる。
ここでしくじれば‥‥‥‥
確実にシロナの命は
無い。
それだけは、絶対阻止しなければならない。
俺が助手になれと傍に置いたんだ。
これは、俺の失態。
俺が必ず‥‥守る。
その場にモノンも入室し、それを確認するとスカーレットは立ち上がった。
「これで全員揃ったな。さぁ貴様等‥‥話を‥‥聞かせてもらおうか」




