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灰色ノ魔女  作者: マメ電9
第一章 灰色から虹色世界へ
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第二十五話 嫌な予感

人間だから‥‥か‥‥。


私もずっと引っ掛かっていた。


確かに昔は私も、魔物は人間の敵。

放っておいたら私達が殺される。


だから、殺される前に殺せ。

って思ってた。


そう、周りの大人達から教えられていたから。




‥‥‥‥‥‥でも。


それは間違ってるんじゃないかと思い始めた。


この魔物の街に来て、触れて、感じて、話してみて‥‥。


魔物もそう大して、人間と変わらないんじゃないか?


確かに見た目は大きく違うけど‥‥。

中身は‥‥同じじゃないのか?


人間が変わらないから、魔物達も人間を敵対視するんじゃないのか?






‥‥‥‥‥‥この私の考えは‥‥。





間違っているのだろうか‥‥‥‥。





私は怯えきっているナディアの頭に優しく手を置いた。


「でも‥‥少なくとも、私はあんたに会えて嬉しいよ‥‥この街で、人間のあんたに」


多分、彼女にとって予想外の返しだったのだろう。

驚きを隠せずフードを被った私の顔をじっと見つめてきた。


「お姉ちゃん‥‥もしかして‥‥」


周りに魔物が居ないことを確認し、少女にしか顔が見えないように、私はフードをゆっくりと脱ぐ。



「あぁ‥‥。私はシロナ。魔物と一緒に暮らしてる‥‥‥‥‥‥人間だ」



人間である事を打ち明けた。


するとたちまち彼女の心が開き、自分に何があったかをゆっくり話してくれた。


私が住んでいた村とは違う反対方向の村に魔物が襲ってきたこと。


それも聞けば聞くほど、それは凶暴化した魔物ではないかと私は思った。


そして、両親が必死でナディアを守り森に隠し、そのまま魔物の保母さんに発見され保護されたこと。




村が魔物に襲われるのは珍しい話ではない。


だからそれなりの戦力を高めなければならない。

若者に剣術や魔法を教える為の学校がある程。


きっと‥‥


タイミングが悪かったんだ。


最近じゃ守りより、攻めに行くのが主流になってきてて、戦力がある者が外に出てたんだ。


そこへ魔物達が‥‥。





話を終えたナディアはギューッとぬいぐるみを抱きしめていた。


「そのぬいぐるみ可愛いな」


可愛い


の言うワードに、ナディアは嬉しそうだ。


「へへ。これは私の誕生日の時にパパとママから貰ったの。あたしの‥‥大事な宝物なんだよ」


そうか‥‥それであんな必死に‥‥。


「でもかなり汚れちゃってるな」


元々クリーム色っぽい生地なんだろうけど、汚れて茶色くなってしまっている。

それは、ナディアも気にしていた。


「うん‥‥。でも洗い方が分かんなくて‥‥」


「‥‥‥‥」


正直に言おう。


私は‥‥


ぶ、き、よ、う、だ!!!


料理、裁縫類は全く出来ない!!!


何故かって?

それは、見本となる父さんが全く出来ない人だったからだ!


‥‥しかし、幸いな事に‥‥。


父さんも私も‥‥。


洗濯は完璧だったのだ!


自信はある!


「ナディア。この辺に水場あるか?あと洗剤も」


「え?えっと、すぐそこに井戸があるけど」


多分納品の手続きも暫くかかるだろうし、私が居ても居なくても困らないだろうから、洗う時間くらいはあるはず‥‥。


よしっ!


私は立ち上がり再びフードを被った。


「ナディア。その子、私が綺麗にしてあげる」


「え!本当??!!」


「あぁ!私に任せろ!」


ナディアは嬉しそうに、こっち!と私の手を引き案内した。


物陰に隠れている、気に食わない表情をした子供たちの存在に気付かずに‥‥。





ルークは納品の手続きを済ませ、帰る用意をしている所だった。

なかなか帰ってこないシロナを心配しつつ、保母さんに挨拶を済ます。


「コハク‥‥シロナの居場所分かるか?」

「クゥ〜‥‥。‥‥!。クゥクゥ!」


コハクとシロナは魔具のおかげで魔力が繋がっている。

それでなのか、大体のシロナの居場所が分かるようで、コハクが飛んでいく先をルークが後を付いて歩く。


「はぁ、全く。トイレに何分時間がかかるんだか‥‥」


「クゥ〜!」


コハクは中庭へ続く扉の前で止まり、ここ!と言いたげにクルクルと回っている。

すると、外からシロナの声が飛び込んできた。


「でーきたー!」


中庭の屋根だけしかない井戸小屋で、しゃがみ込んで何かをしている小さな背中が2つ。


すぐにシロナだと気付いた‥‥だが、

もう1人は誰だ?


耳をピクっと動かし近づく。


「わぁ〜〜っ!お姉ちゃん凄いね!ウサギさん茶色くなくなった!」


汚れは案外簡単に落ちた。

後は日陰で干すだけなんだが‥‥。

干す所ってあるんだろうか?


う〜ん、と悩んでいると背後から声をかけられた。


「シロナ。トイレに行ってると思ったら‥‥何してるんだ」


「うおっ!な、何だルークか‥‥驚かすなよ‥‥」


ルークの視線は私からぬいぐるみ、ぬいぐるみからナディアに移りそれで大体のことを察したようで‥‥。


「貸してみろ」


と私からぬいぐるみを取り上げた。


「あっ!ちょっと!」


ナディアも大事なぬいぐるみを、まだ慣れていない魔物のルークに取られたと思い、不安げな顔をしている。


しかし、ルークはそれをお構い無しに手に魔力を集め出す。


「心配するな‥‥。最後の仕上げをするだけだ」


ルークの手はぬいぐるみに当てられ。

静かにこう唱えた。




「セックヴァルム」




途端に暖かい風が吹き、ぬいぐるみに集まっていく。





それは一瞬の出来事。




風は止み終わると、さっきまでびしょ濡れだったぬいぐるみの毛並みが、フワッフワに仕上がっていた。


「ほら、出来たぞ」


ルークの手から直接、ナディアへ渡される。

恐る恐る受け取るナディア。


しかし、そのぬいぐるみのフワフワな肌触りに一気に目を輝かせた。


「ウサギさん!フワフワで気持ちぃ〜!」


その様子に、私達は思わず微笑む。


数分前の彼女とは思えない表情に。


私は‥‥嬉しくなった。



「乾燥魔法をかけた。また汚したら言え、お姉さんが洗いに来るから」


えーっ

ちょっと、ルーク??

また勝手にそんな‥‥。


「また‥‥会いに来てくれるの?」


上目遣い‥‥。


私に妹がいたらこんな感じだったのかな。

だとしたら、私はとても甘い姉になってただろうな‥‥。


なーんてな。


「当たり前だ。また遊びに来るぞ!それまで待てるか?」


「‥‥うん。頑張る‥‥!あたしにはこの子がいるから‥‥大丈夫!」


この子の人生はこれから‥‥。


きっと試練の連続になると思う。

でもそれは、私も同じだ。


だから、なのかな‥‥。


こんなにも昔の自分と重ねてしまうのは‥‥。




頭をポンポンと撫でて私達は玄関に向かった。


その途中で保母さんを見かけた私は駆け寄る。


保母さんにナディアの怪我事を言っておかないと。

また喧嘩で怪我するかもしれない。

少しでも保母さんの目が届く範囲に居れば、そんな事も無くなるかもしれない。


そう考え声をかけた。


「あのっ、ちょっといいですか?」

「あら‥‥貴女は‥‥」


ナディアの怪我のこと。

ぬいぐるみのこと。

これからちょくちょく顔を出してもいいか。

そんな事を話した。


やはり保母さんは喧嘩のことを知らなかった様で。


「教えてくれてありがとう」

と言ってくれた。


「よろしく頼みます」


玄関前で待つルークとコハクの元に駆け寄り外に出ようとした。

保母さんも見送りに一緒についてきて帰りの挨拶を済ます時忠告を受けた。


「あ、ルーク君。帰り気をつけてね」


「?」


「今外から帰ってきた違う保母から聞いたんだけどね、近くに変な魔物が出たらしいのよ。だから寄り道せずに帰るのよ?」


「またか、変な魔物‥‥ね。分かった。ご忠告どうも」


変な魔物。

きっとアレだ。

凶暴化した魔物。


また出たのか‥‥。もうあんなのに会いたくないんだけどな‥‥。


ルークは早く帰ろうと、アイコンタクトを私にとってきた。

私もそれに頷く。



すると、ナディアを虐めていた子供たちがギャーギャーと笑いながら外から帰ってきた。


あいつらは確か‥‥

ナディアを


とか思って子供達の会話に耳を傾けていると、とんでもない言葉が耳に飛び込んだ。


「やーっと邪魔者を追い出せたな〜!」

「なー?あんなぬいぐるみに必死になりやがって、人間って案外簡単に追っ払えるもんだな〜!」






‥‥‥‥‥‥は?





何て?






「ちょっと坊や達!施設の外に勝手に出てどこ行ってたの?!出てったら危ないでしょ」


保母さんは子供達に叱りつけた。

でも、子供達はそんなの気にしてない様子。


「おばちゃんごめんって!ちょっとヒーロー活動してたんだよ!ねぇー?」

「ねぇー!♪」




嫌な予感がよぎった。




「シロナ?」


ルークが私の血相変えた顔を見て心配そうにするが‥‥。


私は‥‥


もう既に


走り出していた。


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