第二十話 謎の声
あの声は‥‥
一体誰だったんだ。
そんな疑問を持ちながら、私はいつもより早く目を覚ました。
何時もはまだ寝ている時間‥‥
もう一度寝てしまおうかな。
でもあの夢が気になって寝付けない。
しょうがない‥‥少し早いけど、もう起きよう。
私は、そのまま起きて洗面所へ向かった。
悶々と考え込みながら顔を洗い、タオルで顔を拭いて溜息をついた。
すると。
「《魔法を使うな》」
突然声が。
私は勢いよく顔を上げ、鏡を見る。
一瞬背後に角が2本生えた黒髪の男が立っているように見えた。
「?!」
驚いた私はバッと振り返る。
しかしそこに居たのは、角が生えた男ではなく、獣耳の生えた男だった。
あ‥‥れ‥‥?
今確かに‥‥角が‥‥。
「シロナ、随分と早いな。‥‥どうした?俺の顔に何かついてるか?」
話しかけられて我に返る。
見間違い??
「?。寝ぼけてないでさっさと飯食いに来い。もう出来てるから‥‥あと、寝癖も直せよ」
「ちょっ!ヤメロォ!」
寝癖の着いた頭をグシャグシャってして、ルークは居間へ行った。
私もササッと寝癖を直して向かう。
きっと疲れてるんだ。
気のせい気のせい‥‥。
そう自分に言い聞かせた。
居間に入ると既にコハクはご飯を食べていて、ルークは調理器具を直しているところだった。
私も席につきフォークを持つ。
今日する事。
それは施設へ納品する為の、傷薬を作ること!
この薬が1番失敗しにくいらしい。
そして、その後は魔法の練習。
ここまで順調に行くのかは‥‥分からない。
あの大爆発を2回もしてしまっている私は、自信をなくしていたから。
でも、このまま終わらせたくない!
こう見えて、私は負けず嫌いなのだ。
そして、私達は離れの仕事場へ移動した。
いつもは通り過ぎてしまう作業室。
でも、今日は違う。
棒立ちしているとルークが‥‥
「こっちに来て座れ」
と言うので、言われた通りに二つ並んでいる作業机の右側に座った。
ルークも隣に席に着く。
「それじゃぁ、まず蝋燭とフラスコを用意して‥‥」
隣で手順のお手本を見せるルーク。
私もそれを見様見真似でこなしていく。
乾燥させた薬草をフラスコに入れ、成分を抽出し、それを別の容器に入れての繰り返し。
繰り返す事に色味が透明からだんだん水色へ変色していく。
思わず綺麗と呟くと、ルークは隣で微笑んでいた。
最後に複数の薬品を入れ、蝋燭の火で温める。
何とかここまでは順調に出来た!
「出来たぞ!これで完成か??」
「いや、まだだ。最後のひと手間がある」
「ひと手間?」
「フラスコに、手で覆う感じで近づけて‥‥シロナの魔力を注ぐんだ」
「私のを‥‥こ、こんな感じか?」
直接触れてしまうと火傷をしてしまうので、少しフラスコから離して両手で覆う。
もう魔力調整は完璧‥‥のはず。
言われた通り魔力を少しづつフラスコへ送り出す。
すると水色だった液体は青っぽい色に変わり、液中でキラキラと光出した。
まるで、ラメでも入れたように。
「へ〜。上手いなお前‥‥」
ル、ルークが褒めた!!?
あの皮肉ばかり言うルークが!
「え?!そうかのか?!」
「あぁ、俺が初めて作った傷薬より上等品だ。シロナこれが初めてだよな?薬作るの」
初めて‥‥。
まぁそうだな‥‥。
作るのは初めてかも。
でも‥‥。
「父さんがさ、研究で薬を作っててそれをずっと傍で見てたな‥‥。こんな傷薬って感じのものではなかったけど‥‥」
「‥‥そうか。父親が‥‥ならシロナにその器用さが遺伝したのかもな」
「はは、器用だったのはそこだけだけどなぁ。後はもう、家事洗濯なんて全然ダメだったし手のかかる親だったぞ」
明らかに気を使わせてしまった。
私はこの暗い空気を払う様に、作り笑いを浮かべた。
まぁ、それもきっとルークには分かってしまっているんだろうけど‥‥。
「よし、ならこの調子で納品する分全部作るぞ」
「分かった」
そこからは二人とも無言だった。
作り終わる頃には太陽が真上に来ていた。
「そろそろ昼休みにしよう。食後は庭で魔法練習だからな」
「お、おぉ。任せろ!」
「フッ。お手並み拝見だな」
こ、この野郎‥‥。
絶対一泡吹かせてやる‥‥。
一旦作業場を離れ家に戻ることにした。
そういえばコハクの姿が見当たらないな‥‥どこいった?
家に戻る途中キョロキョロとあたりを見渡していると、庭の木の上で昼寝をしていた。
あ、いたいた。
「コハクー!昼飯だぞー、降りておいで!」
私の声に反応し、肩の上に乗ってくるなり大きなあくびをした。
子供はよく寝て育つっていうもんな‥‥。
私がこの子を守らないと‥‥。
小さな頭を撫でて私達は家の中へ入った。
昼食をとった後、私は動きやすいいつもの赤い服に袖を通して、ベルトを巻き庭へ出た。
コハクは隅の方に座って見ている。
軽く準備運動を済ませ、ルークと向かい合わせになるような立ち位置についた。
「準備はいいか?」
「うん、一応」
さっきの傷薬の時は上手くいったんだ‥‥。
魔法だって上手くいくはず‥‥。
私の鼓動が早くなるのがわかった。
「それじゃ、まず魔法の基本から始める。基本魔法は、炎、氷、水、雷、風、土の6つだ。応用魔法でいろいろ出来るようにもなるが、この6つを使いこなせるようにならないと難しいだろう。」
「6つもあるのか‥‥多いな」
「まぁ魔法はオリジナルに創り出すことも可能だから、ほぼ無限に等しいかもな。ただ2つだけ操ることの出来ない魔法がある」
「え?そんな魔法があるのか」
「あぁ、大昔にはその精霊を我が身に宿し、魔法を使う一族が居たらしいが、分裂し戦争になって破滅したそうだ‥‥。その魔法は‥‥‥‥‥‥光魔法と闇魔法」
「光と闇‥‥それは精霊もその一族と共に滅びたってことか」
「あくまで、言い伝えだ。さっ、まず炎からいくぞ」
一通りの説明を受け、ルークは布を巻き付けた木の棒を地面に刺した。
そして、その棒に耐久魔法をかけた。
これに当てろってことか。
よし‥‥やってやるぞ‥‥私は‥‥!
ルークは数歩下がり腕を組んで見ている。
私は魔具を取り付けている右手を前に突きだし、左手で添えて構える。
集中し魔力を練る。
すると、調節しにくかった魔力が思うように流れるのがわかった。
きっと、モノンの魔法のおかげだろう。
瞼を閉じて心の中で精霊に呼びかける。
そしてカッと目を開き唱えた!
「ファイア!!!」
今までの2回、この時点で大爆発を起こした。
しかし、今回は違った。
見事火の玉を生成し、その炎は一直線に棒に向かって放たれた。
耐久値が格段に上がっている棒は火の玉を弾いて散り散りになり消えていった。
魔法は成功したのだ!
「嘘‥‥やった、成功した‥‥成功したんだ!!やったー!」
ついに!ついに!
まともな魔法を初めて‥‥生まれて初めて使えた!
「よし、問題ないな‥‥。シロナ!次は氷だ。炎と要領は同じだから」
コクリと頷きまた右手を構える。
なんということでしょう。
あんなに魔法音痴だった私が!
炎、氷、水、雷、風、土を問題なく使えた!
だが、この中で最も威力もあり、制御も確実な得意魔法があった。
それは‥‥‥‥。
「サンダーッ!」
呪文とともに雷鳴が轟く。
他の魔法とは桁違いの威力で、木の棒はボロボロに黒焦げになっていた。
ルークもこの威力には驚いている様子で、口をポカーンと開けてしまっている。
それは私も同じ。
何だこの威力‥‥本当に私がやったのか‥‥?!
「《魔法を使うな》」
突然聞こえた声。
この声朝聞いたのと同じ。
一瞬ルークが言ったのかと思ったが、ルークは木の棒を取り替えている最中だった。
だから違う‥‥。
なんなんだ一体‥‥夢といい、幻聴といい‥‥
私に‥‥何が起きてる‥‥?
俯いていると背後からガシャガシャと音を立てながら誰かが近づいてきた。
「おっ?やってるなー!調子はどうだ?」
たくさんの武器を担いでやってきたのは、ジェイトだった。




