第六十二夜 ドラえもん 対決ひみつ道具!!
一つ、ゲームの話でもしようか。
世間的には知らない人はいなくても、ゲーム界ではいまいちマイナーという作品があります。「ドラえもん」も、その中の一つです。
この作品については今更説明は不要でしょうが、一応解説しておきます。「ドラえもん」とは故藤子・F・不二雄氏原作のギャグアニメで、二十二世紀の未来からやって来たネコ型ロボットドラえもんとそんなドラえもんと一緒に住む事になった小学生の少年のび太が繰り広げるドタバタ劇を描いた内容となっています。
ドラえもんが四次元ポケットから出す様々な『ひみつ道具』には、誰でも一度は憧れを持ったものと思います。そのぐらい知名度の高い作品ですが、ゲームとしての知名度はいまいちと言わざるを得ません。
その理由の一つに、「ドラえもん」のゲームの販売権を持つ会社の知名度の低さがあります。「ドラえもん」のゲームは一度だけハドソンが出しているものの、その他のゲームは全てエポック社という会社が販売しているのです。
エポック社は玩具会社としては老舗で、野球盤など様々なヒット商品を生み出してきましたがゲーム会社としてはマイナーどころです。それ故に「ドラえもん」のゲームを出しても、ゲーム業界における大手に押されてあまり目立つ事はありませんでした。
しかしながら実際にそれらのゲームを遊んだユーザーからの評価は高めで、「ドラえもん」ゲーを隠れた名作と評するユーザーもいるくらいです。知名度が低い=面白くない訳ではない、という好例ですね。
「ドラえもん」ゲーで最も知名度が高いソフトと言えば、やはりファミコンのRPGである「ドラえもん ギガゾンビの逆襲」でしょう。数々の「大長編ドラえもん」シリーズの後日談という位置付けであるこの作品はゲームバランスこそ多少粗が目立つものの「ドラえもん」への愛に溢れており、これ自体が一本の「大長編ドラえもん」と言ってもおかしくないストーリーの完成度によって今なお名作として当作品を遊んだユーザーから愛されております。筆者は残念ながら、一度も現物を拝んだ事がないのですが。
随分前置きが長くなってしまいました。今回ご紹介するのはそんな「ドラえもん」ゲーの一つ、「ドラえもん 対決ひみつ道具!!」です。
本作はゲームボーイ初期、エポック社よりゲームボーイにて発売されたアクションゲームです。マップ探索、縦スクロール、横スクロールの全てが一本に収録されたアクションゲームとしては豪華ラインナップとなっております。
ストーリーはタイムマシンを使ったゲームで遊んでいたドラえもん、のび太、しずか、ジャイアン、スネ夫のいつもの面々。しかし突然謎の煙に包まれ、気が付いた時には不思議な世界でドラえもん一人になっていた。ポケットに入れておいたひみつ道具もなくなっており、あったのはチャンピオングローブとミチビキエンゼルのみ。ドラえもんは困った人を導いてくれるひみつ道具、ミチビキエンゼルの力を借りてはぐれた皆を探しに出発するが……というものとなっています。
本作のひみつ道具には二種類あり、武器やアイテムとして道中に落ちていてアクションの手助けをしてくれるものとストーリー進行のキーアイテムになるものに分かれています。ひみつ道具には「大長編ドラえもん」でお馴染みのものもあれば原作やアニメに一回しか出て来なかったようなマイナーなものまであり、全部のひみつ道具の効果が初見で解った人はかなりの「ドラえもん」マニアと言っても過言ではないでしょう。
まずドラえもんの捜索の基本となるのがマップエリアです。ここでは無限にスクロールする見下ろし型のエリア内を探索し、あちこちに点在しているドアの中に入る事になります。
ドアはアクションエリアに通じているもの、アイテムがランダムで二個手に入るもの、攻略のヒントが得られるもの、特定のドア同士で繋がっているワープゾーン、ボスエリアに通じているものの五種に分かれており、どのドアがどこに通じているかはあらかじめ決まっています。プレイ毎に若干ドアの配置パターンは変わるものの、そのパターンが完全に崩れる事はありません。
このマップエリアには弱い武器が時々落ちている他一定時間移動速度が上がる、一定時間の移動速度増加に加えて敵の攻撃でダメージを受けなくなるなどのアイテムも落ちていますが武器以外のアイテムは一度ドアを潜ると効果がなくなってしまいます。なるべく沢山のひみつ道具を出したかったからなんでしょうが、正直武器以外のアイテムはいらなかったかなと思わなくもないです。特に速度だけ上がって無敵にならない方。
アクションエリアに通じるドアを潜ると縦スクロール、または横スクロールのステージが始まります。一面の時点では穴や障害物をジャンプでかわしていきながら敵を倒して最奥に向かう事になるのですが、二面からはタケコプターが手に入り空を飛んでいくのが基本になるので穴や障害物に意味はなくなり、若干シューティングっぽくなります。
道中には数々の武器や敵の攻撃を一定回数防いだり一定時間敵が弾を出さなくなるなどの補助アイテム、それから1upアイテムであるどら焼きがあり、特にどら焼きは逃さず回収といきたいところです。武器は威力、攻撃範囲などがそれぞれ違いますので、自分が一番使いやすいと思った武器をキープしておくのをお勧めします。
筆者のお勧めは連射が効き、一発の威力も高い衝撃波ピストル……なのですが、これを使うと性能が良すぎてガチでヌルゲーになる危険性が高くなるという両刃の剣でもあるのでもっと苦労がしてみたいという求道者タイプの方にはお勧めしません。同様の理由で連射は効かないものの、最高威力の貫通弾が撃てるシャボン玉ピストルも。
キーアイテムを全て集めてボスエリアに通じるドアに入るといよいよボス戦です。ボスとはスクロールなしの一画面での戦いとなり、補助アイテムの類の一切ないガチンコ勝負をする事になります。
ボスの攻撃は激しく、前述のチート武器で挑むのでない場合はかなりの苦戦を強いられる事になるでしょう。見事ボスを倒すとその面はクリアとなり、仲間を一人救出出来ると同時に次の面のパスワードも表示されます。
本作のパスワードは大変簡潔で、メモを取らなくても余裕で覚える事が出来るでしょう。それもその筈、記録されるのは再開する面がどこかのみでそれ以外の情報は完全に初期化された状態での再開となるのです。
もっとも普通にクリアして次の面に行っても武器だけは『戦いの影響で壊れた』という設定で強制的にチャンピオングローブに戻されるので、あくまで引き継げるのはスコアと残機のみとなります。本作のスコアはミスの時にしか表示されない上完全に趣味の領域なので、残機が初期値を割っているような状態であれば潔くパスワードで再開してしまった方がいいかもしれません。
最後に、本作の最終面のBGMは最終決戦に相応しいメロディアスなもので筆者は大変気に入っております。そう思ったのは筆者だけではなかったのか後の「ドラえもん」ゲーにもこの曲はアレンジされ、使われていたりします。
そしてこれは完全に余談ですが「ドラえもん ギガゾンビの逆襲」も良いBGMが多く、人気が高いです。これは、当時のエポック社の作曲担当が優秀だったという事なのかもしれませんね。
とりあえず、今回はこれにて。