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 お昼を食べて、ちょこっと休憩したら、騎士(エクエス)様たちと訓練の時間。

 やっぱ、騎士様たちも体が資本だし、あたしに足りない力とか体力をつける訓練が多いんだよね。

 その辺、一緒に訓練してると助かるよ。一人だったら、黙々と走るとか、腕立てするとか、絶対耐えられないもん。

 休憩時間は、相変わらず雑談ばっかだし。

 だいたい、休憩って言われてあたしが隅っこで転がると、真っ先に来るのがおしゃべりな騎士様。名前はわかんない。

「ユノちゃん、ユノちゃん」

「んー? なぁに?」

 そういえば、この騎士様、いっつもちゃんづけで呼ぶよね。リアムみたいに。丁寧な人は誰にでもさんづけするけど、たいていの騎士様は、あたしのこと呼び捨てなのに。

「寒いからギュッてして温めてー」

「ヤダ」

 動いたばっかであっついし。くっつくのもくっつかれるのも、今はすっごい嫌だよ。

 ってか、何でよく知らない騎士様に、あっついの我慢してくっつかないといけないわけ?

「じゃあ、ギューッてしていい?」

「ヤダ」

 ちょこっと汗かいてるくらいだし、くっつかれたら単に暑苦しいだけじゃん。

「冗談言うならさぁ、タイミング選ぼうよ。動いたばっかであっついのに、もっと汗かく真似、したいわけないっしょ」

「えっ……汗かくほど暑いの?」

「暑いよ? セイライ国だと、この時期はもっと寒くなってるからね。このくらいだと、まだ夏の終わりって感じの暑さかなぁ」

 セイライ国はうんと北にあるからね。こんなもんだと、まだ全然寒くもないっていうか、どっちかっていうと暑いくらい。そもそも、こっちだと、雪自体あんまり降らないっぽいし。

 あたし、寒さには強くっても、暑いのは苦手なんだよね。特に、蒸し蒸しベタベタしてる暑さって、ホントダメ。だから、メアンラーエはあんまり行きたくない。

「だいたいさぁ、あたし、くっつかれるのはともかく、くっつくのってあんま好きじゃないんだよね。グレースだったらベタベタくっついてもいいけど、他は嫌。……あ、美人さんもオッケーだよ」

 グレースと美人さんだったら、あたしからくっついても平気。リディには、くっつく気になれない。ってか、絶対リディが嫌がるし。

「美人さんって……エレン様とか?」

 他の騎士様が参戦してきた。

 うーん、中身はあれだけど、エレンさんって確かに美人なんだよね。でもさぁ。

「エレンさんに抱きついたら、逆に危険っしょ?」

 そんなことしちゃったら、何されるかわかんない恐怖と戦いながら、うっかりな自分を呪っちゃうよ。

「ああ……」

 危険な存在だって、みんなから納得されるエレンさんってどうなんろうって、ちょっと思うけどね。

 まあ、あたしにとっては、ある意味危険極まりない人だし。

 だって、エレンさんが何かすると、将軍が張り合うんだよ? 同じような人二人に挟まれると、かなりきっついんだもん。

「それに、美人さんって、騎竜の里にいる人だよ」

「……ジリアンの名前、覚えてないの?」

 おしゃべり騎士様が聞いてきたから、思いっきり、しっかり頷いとく。

 何回か、エレンさんや将軍が名前呼んでたけど……やっぱ覚えてないんだよね。今、騎士様が言った名前、バッチリ素通りしたし!

「じゃあ、俺の名前も?」

「覚えてないよ」

 がっくり肩を落としたおしゃべり騎士様を、他の騎士様たちが慰めてる。

 ……ひょっとして、すっごく短い名前だったりする? もしそうなら、今だったら覚えられるかも。

 ほら、騎士様たちが名前教えてくれた時は、みんな一緒くただったから。おしゃべり騎士様がこういう名前って覚えられるし、今なら大丈夫だと思うんだけど。

「兄さん、俺の話、したことないの?」

「……へ? おしゃべり騎士様って、お兄さん、いるの?」

「そっから!?」

 メッチャ驚かれたけど……知らないし。

 んー? でも、あたしの知ってる人の中で、リディくらいの弟がいそうな人なんて……あっ!

「お兄さんって、ひょっとして将軍?」

 ベネットだと、ちょっと年が近い気がするし。将軍だったら、全然おかしくない年齢差だと思うんだよね。

 ただ、顔とか性格とか、すっごいおしゃべりなとことか、将軍とはちっとも似てないけど。

「ひょっとして、だし……」

 多分、当たったみたいだけど……騎士様が落ち込んでるのは、これっぽっちも変わんない。

「だって、将軍と似てないじゃん? そりゃあ、お兄ちゃんやお姉ちゃんたちと全然似てないあたしが言うのもあれだけど、似てないじゃん? 顔も性格も、どっちかっていうと正反対、みたいな」

 うっかり、ホントうっかりなんだけど。思いついたこと、全部言っちゃった。

「似てなくて当然だよ。だって、兄さんに似てると、比較されて嫌な思いするでしょ? 全然似てない方が、俺も兄さんも生きやすいんだよ」

「お貴族様ってさぁ、やっぱメッチャ面倒くさいんだね……」

 あたしだって、お姉ちゃんたちと、ちょっとは比べられたよ? あと、いつになったら恋人連れてくるの? って母さんにしつこく聞かれたり。

 そういうのって、似てても似てなくても当たり前だと思ってたんだけど……違うのかな?

 それとも、お貴族様だと、もっと凶悪な比較のされ方するのかな? それこそ、自分の性格から何から、全否定されちゃうような。

 だったら、すっごく嫌だよね。

「面倒だよね。俺もそう思うよ」

「兄弟多いともっと面倒だよな。それも、下のが優秀だった時なんて、目も当てられないし」

 うっわ……聞いてるだけで、本気で面倒くさいって思っちゃうんだけど。

「ユノちゃんはさ、そういう面倒な世界に嫁入りってなったらどうする?」

「へっ?」

 おしゃべり騎士様も、時々妙なこと聞くよね。

 できたら、そんな面倒な人と結婚ってのは嫌だけど……んでも。

「結婚したいと思った人がそういう人なら、しょうがないよね。覚悟決めて飛び込むしかないじゃん?」

「そっか……」

 何か考え込んでるみたいだけど……おしゃべり騎士様、何でそんなこと聞いたんだろ?

 あ、結婚って言えばさぁ。

「そういえば、王女様の結婚相手って、結局アルヴィン様に決まったの?」

 何となく、おしゃべり騎士様に聞いてみる。

 エレンさんから将軍に、そっから騎士様に伝わる……ってことは、なさそうだけどね。んでも、お貴族様にはお貴族様の情報網とか、ありそうじゃん?

「さぁ……まだ反対されてるんじゃないかな? 実質的に、ごく一部の貴族にしか関係ないことだから、噂になるのに時間かかるし」

「そうなんだ……」

 やっぱお貴族様って面倒だよ。

 特に問題なくって、本人たちがそうしたいって言ってるんだし、ちゃちゃっと認めちゃえばいいのに。

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