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朝一番に、エレンさんが呼びに来た。やっぱりゴチャゴチャお城の中を通って、地下を抜けて外に出て。で、そこには真っ白な建物。お城ほどおっきくないけど、一人で暮らすんだと大きすぎるくらいの。
離宮って、きっとこれのことだよね? 近くの木に、ドナがつないであるし。……ってか、あの木だと、ドナが全力で羽ばたいたら抜けちゃいそうだよね? 大丈夫なのかな?
「竜の食事はどんなものか、知ってる?」
「んーん。何食べてんの?」
「生肉よ」
……へ、へぇ……まあ、あたしを餌だと思ったくらいだもんね……そういうの、食べるよね、うん……。
「という冗談はさておいて、実際には果物や野菜が好きなの。肉をあげるにしても、加熱しないとお腹を壊すのよ」
「そうなんだ? あ、ってことは、前にベネットの竜がお腹壊したのって……」
その辺に落ちてた動物の死骸、そのまま食べちゃった、ってこと? それは確かに、かなり意地汚いかも。
ベネットの竜って、そんな竜には見えないんだけど……あ、でも、ドナも神経質には見えないから、そういうもんなのかな?
うぅ……ヘザーってどんな子だろ? 何か、ちょっと心配になってきちゃった。
昨日の感じだと、あたしの言うことはちゃんと聞いてくれるっぽいし、正義感が強そうな子かな、って思うけど。
「クレメンタインは、しょっちゅう拾い食いをしてお腹を壊すから、ベネットには気をつけるよう、再三注意をしているのだけど……まあ、意地汚いのは生まれつきだもの。ロイドも、主になる子にはしっかり言っておかないと、今から心配だわ」
あー、うん。ロイドは大食漢って言うし、あたしを見てよだれ垂らしそうだったし。乗る子は大変だろうなぁ……。
「で、一食はだいたい……洗濯カゴ、わかるかしら? あれで二杯くらいよ」
「意外と少ないんだね」
洗濯カゴなら知ってるよ。散歩してると、お城の使用人たちがカゴに洗濯物いっぱい入れて歩いてるから。濡れた服がいっぱいだと、二人か三人で抱えてるけど、乾いてるのなら、一人でもヨロヨロだけど持って歩けるくらいの大きさ。
試したことはないけど、あたしだったら、あの中に隠れられるかも。
「それで、一日五回、朝と昼、夕方と夜と寝る前にあげるの。よく食べる子だと、それに焼いた肉を追加するのよ」
ってことは、ロイドは絶対、お肉を追加される子だよね?
「ヘザーが来てすぐは、様子を見ながら量を増減するといいわ。そのうち、体調を見てこのくらいって調節が、ユノ嬢にもできるようになるから」
「ん、頑張るね!」
「あと、明るいうちに、竜を洗うんだけど……これは、好きな子嫌いな子で回数が違ってくるわ。普通は一日一回。嫌いな子だと二、三日に一回、好きな子は毎日二、三回が多いかしら」
「へぇ……竜もやっぱ、性格でいろいろ違うんだね」
んでも、さすがに毎日二、三回は大変そう……。
ご飯が好きな子に、お風呂が好きな子。きっと、散歩が好きな子もいるだろうし……ヘザーがどんな子なのかな?
乗れるようになるのは、まだずっと先だけど、今から楽しみ!
‡
餌のやり方を教えてもらって、洗うのはまた今度って約束で。あたしは離宮からお城の外まで、エレンさんに連れていってもらった。
迷うんだよね、お城って。ホント迷う。今通った道も、あたし、覚えてないもん。
とりあえず外に出て、宿舎に戻ろうかな、って歩いてたら、前からイハル兄が歩いてきた。
あ、そういえば、グレースとのなれそめ、まだ聞いてないじゃん!
「イハル兄!」
呼びかけたら、すっごい嫌そうな顔されたんだけど……いいじゃん、別に。どうやってイハル兄がグレース口説いたか、聞くだけだし。
「ユノ……今度はどんな厄介ごとを持ち込む気だ」
「そんなんじゃなくってさぁ。イハル兄、どうやってグレース口説いたの?」
変な声が出るとか、息を呑むとか、そういう前に、いきなりゲンコツ降ってきたんだけど……ひどくない?
まあ、ちゃんと手加減してくれてるから、そんなに痛くはないんだけどさぁ。
「お前というやつは……」
「だって、この間、グレースの膝に頭乗っけたらさぁ、あたしの頭が小さいって言うんだもん。比較する相手なんて、イハル兄くらいじゃん?」
「リディもいるだろうが」
イハル兄、わかってないなぁ。
「リディとだったら、小さいなんて出てこないよ。あれでリディも、頭ちっさい方だもん」
頭小さくて、スラッとしてて、出るとこ出てて、引っ込むとこは引っ込んで……何か、リディって、体型は恵まれてるよね。
そういえば、グレースも頭ちっちゃくて、出るとこ出てて、羨ましいけど。
「うんと違うから、あたしは小さいって言葉が出てくるんじゃん」
メッチャ渋面のイハル兄は、スッと目をすがめて、チッて舌打ちした。よりによって舌打ち!
「ちなみに、グレースになれそめ聞いたら真っ赤になっちゃったから、イハル兄に聞くことにしたんだよ?」
「何をやってるんだ、お前は……」
おでこにギュッて手を当てて、イハル兄ががっくりしながらため息をついた。なーんか忙しいね、イハル兄って。
「以前言ったことを、隊長としてでなく、俺が個人的にそう考えているんだと、伝え直しただけだ。わかったらもう聞くなよ?」
「その言ったことが気になるじゃん」
「教えてやってもいいが、代わりにお前の弱点をヴァージルに教えるぞ」
……へ?
「ヤダ」
考える前に、言っちゃった。
ってか、イハル兄は将軍と仲いいんだっけ……すっかり忘れてたけど。
「わかったらその辺で遊んでこい」
うっわ、何、その、ちっちゃい子扱い!
どっかに歩いてくイハル兄の背中に、ベーって思いっきり舌を出しといた。
それにしても、イハル兄って、ホント動じないよね。いろいろズバッと聞いたつもりだけど、顔に何も出てなかったよ。
んでも、あれで、グレースのことはホント大事にしてるもんね。




